■はい、お久しぶりです。
怒涛の仕事が少々楽になってきましたので、生活に余裕が出てきました。
が、精神的にはまだちょっと余裕ないです。むしろどんどん欝っぽく。

とはいえ、とりあえず、久しぶりに1回分かけたのでアップします。
短いですけど。

一ヶ月ぶりくらいなのですね。
すみませんなー。

■前回(約一ヶ月前)のおさらい
ジパングから北へ行ったところにある小さな村ムオルで、ポカパマズと呼ばれていた父。その足跡を知りつつ、形見ともいえるかぶとを手に入れた。
そんな感じ。

■氷の島の老人
船はムオルを後にして、北東に進む。
地図の右側、つまり世界の東側には、南北に伸びた大きな大陸がある。北側は中央から東側に向けてたくさんの川が入り組むように流れている。形は、大体丸。南側はスライムをさかさまにしたような形で、北に行くほど東西に広く、南側は尖った岬になっている。その北側と南側の大陸は、細い陸地でどうにかこうにか繋がっている。けど、多分北と南ではそれほど行き来はなさそうに思えた。
何せ南側の大陸は、その大半を岩山がぐるりと囲んでいて、内陸には進めないようになっているからだ。地図では、その内陸の部分も描かれてはいるけど、どうやってそこへたどり着いたのか、想像がつかない。
とりあえずの目的は、その南北に伸びる大陸の、北側にある小さな村だった。
川をさかのぼったところに、素朴な村があるらしい。
北の海はとても冷たい風が吹いて寒い上に、時折どこからともなく氷の塊が流れてきていたりしてかなり危ない。しかも、大陸の東側に向かうために通った、大陸の北側(何だかややこしい説明になってしまってるけど、陸地の名前も分からないから仕方がない)は、大小さまざまの島が点在していて、船で通るのはなかなか大変だったそうだ。
私は乗ってるだけでよく分からなかったけど。

大陸の北側には氷で覆われた大きな島があった。
最初は何もなさそうだから放っておくことにしていたんだけど、通るときに何気なく見ていたら、煙が上がっているのが見えて、私たちは船を停める。何かが居るのは間違いなさそうだった。
「どうする?」
リーダーは首をかしげて私を見る。その表情は困惑しきっていて、かなり迷っているようだ。
「俺が思うに、遭難者じゃねぇと思うんだ。付近に船の残骸とかねぇし。もし船の残骸がなくなるくらい昔の遭難者だったら、普通生きてねぇし」
「アレが幻とかいう可能性はないかな?」
チッタが首をかしげる。
「そういうのは、アンタの専門分野だろ?」
カッツェがため息をつくと、チッタは苦笑して見せた。
「んー、これだけ遠いと流石に魔力がどうのとかは分からないよ」
「気になるなら、見に行くのが一番だよね?」
私は皆を見る。別に反対意見はないみたいだった。もちろん、賛成意見もなかったけど。
「じゃあ、ちょっと見に行ってみるか」
とめても無駄かな、みたいな言い方でカッツェが言ったのが結論になって、私たちは北の大きめな氷の島に上陸した。

寒い、というより痛いといったほうがよさそうな冷たい風のなか、私たちは煙を頼りに島の中央を目指す。
幸いにも、煙は途切れることなく昇っていて、しかもあまり海から離れていない場所だった。暫らく歩いていくと、小さな家が見えてくる。そこから煙は上がっていた。つまり、煙突から。暖炉か何かの煙だろう。
「近くでよかったねえ」
「まあ、肉眼で見えるほどですし」
そんなことを口々に言いながら、小屋に到着する。周囲を簡素な木の柵で囲った、木造の小ぢんまりとした家からは、物音はしない。家の規模からいって、一家族住んでいるとは思えない。もっと少数の、せいぜい1人か2人といった感じだろう。
「ごめんくださーい」
ノックとともに声をかけると、意外にも中からは元気な声で返事がかえってくる。中へ入れてもらうと、予想通り暖炉には火が入っていて、とても暖かかった。
「こんな辺境へ海賊以外の人間が来るとはなあ」
中に一人で住んでいたお爺さんは私たちを見て苦笑する。
「しかも若い女子が大勢。不思議な世の中になったもんだ」
お爺さんは遠慮もなく私たちをじろじろと見た後、大きく息を吐いた。
「で、お前さんがたは、何の用事があってこのグリンラッドに来たのじゃ?」
私たちは、ここから南にある内陸の村を目指していることだとか、本来の目的はバラモスを倒すことであるとか、この島がグリンラッドという名前なのは初めて知ったことであるとか、色々な話をした。
お爺さんはその一つ一つにいちいち頷いたり驚いたりして、話を楽しそうに聞いてくれた。聞き上手というひとは、こういう人のことを言うんだろう。
「そうじゃなあ、そんな風に世界中を旅するのであれば、一つ頼まれてくれんか?」
「何を?」
「世界には『変化の杖』とかいう、姿を変えられる杖があるそうだ。それを持ってきてくれんか。代わりになりそうな変わったものを用意しておくから」
「その杖で何をするの?」
「遊ぶ」
多分姿を変えるほどの杖だから、大きな魔法の力が封印されているんだろうけど、それを使ってすることは何もなく、ただ純粋に「遊ぶ」と言い切ったお爺さんは実のところ大物なのかもしれない、と思いながら私は頷く。
「分かった。何処かで見かけることがあって、しかも手に入りそうだったら、もって来るね。無理だったらごめんなさい」
「そのくらいの心構えでちょうどいいと思う。では、頼んだ」
お爺さんは豪快に笑って、私たちを海岸線まで見送りに来てくれた。
「そうそう、この島よりも南で、大陸よりは北に、小さな島が点在しとるだろう? その中の一つに、旅の扉の設置された小さな祠がある島がある。もし世界中を回ってしまったら、それを使ってみるのもおもしろいと思うぞ。どこへ通じとるか全然知らんが」
お爺さんは南のほうを指差してそんなことを教えてくれた。
「わかった。見つけたら入ってみる」
「では変化の杖のことは頼んだからの」
「忘れないようにするよ」

船に乗って、内陸の村を今度こそ目指す。
「それにしても変わったお爺さんだったね」
「きっと名だたる賢者なのでしょうね。いろんなことをご存知でした」
リュッセはとっても名残惜しそうな顔をして、小さくなるグリンラッドをずっと見つめていた。


■また、ぼちぼち書いていこうと思います。
次はスーに行きますよ。
■台風きてますねー。
うちは直撃ルートから外れましたが、雨と風はすごいです。
首都圏の方々、お気をつけくださいね。
はっきり言って、テレビを見ている限り、気を抜きすぎ!
もっと警戒して!
警戒して!

■ムオル
ムオルは小さな村だった。
大陸でも北の果てにあって、あたりには他に村や町はなく、重要な施設があるわけでもない。おかげで、あまり旅人が訪れるわけでもないらしい。村の人は自分たちの村のことを「最果ての村」と呼んでいた。
だからといって寂しい村というわけではなくて、村人同士の市場は活発だった。教会も小さいながらちゃんと存在していて、その周りは花畑になっていて綺麗なものだったし、北の果てに近い割りには寒すぎることもなくすごしやすそうなところだった。
ただ、すこしおかしなことがある。
それは村の人たちが、私を見ると一度は必ず驚くこと。そしてその時必ず、私のことを「ポカパマズさん!」と呼ぶこと。

……ポカパマズって。

どういう意味かは知らないけど、少なくとも私の感覚では、その呼び名はかなりなんだか間が抜けているというか可愛くないというかどうにもこうにも好きになれないというか、つまりは何なんだその呼び方は!ということなんだけど初対面の人に怒鳴るわけにもいかなくて、結局「いえ、違います」なんて答える羽目になる。
そうすると、たいていは「え? 違うの? 似てるんだけどなあ」と、村の人たちが今度は首を傾げて困惑することになる。
どうやら、私は昔ここに尋ねてきた旅人の(私達以外にも物好きな人はいたということなんだろうけど、その辺は黙っておくことにして)ポカパマズさんに似ているってことなんだろう。
一体どんな人だったのかは分からないけど、皆が必ず嬉しそうな顔をして私を「ポカパマズ」と呼ぶことや、誰もが忘れてないってことから、きっといい人だったんだろう、とは思う。
嫌な人だったら、こんなに嬉しそうに迎えてもらえないだろうし。
だからこそ、「違います」ってうのはちょっと心苦しいところもあるけれど、まあ、仕方ない。
「でもさ」
宿についてチッタは首をかくん、とかしげた。
「そのポカパマズって人は何をしにここへ来たのかな? 村の人たちが言うとおり、最果ての村だし、何にもないし。いいところだけど」
チッタは窓の外を見る。
天気が良くて、やわらかな午後の黄色っぽい光が地面を照らしていて、何だかそれだけ見ていると、この世に魔王がいて、世界をどうこうしようって考えてるなんていうのが嘘みたいに思えてくる。
「単に世界を見て回って、制覇するのが夢や目的だったのかもしれないさ。冒険者って言うより、探検家だな」
カッツェが肩をすくめて見せた。「アタシに分かるわけないだろ」という意味の意思表示のジェスチャーに見える。
「けど、ポカパマズっていう人間は、アレだけ記憶に残って愛されてるんだ。何か魅力があったんだろう。残念ながらココにはオーブも見るべきものもなさそうだ。船の準備ができたら出発になるだろうし、ポカパマズの伝説でも聞いて時間をつぶそう。もしかしたら他の村や町の話をしてて、お宝のいい話なんかをおいていってるかもしれない」
「それもそうだね」
カッツェの提案に私たちは頷くと、隣の部屋に居るリュッセを誘って村に出てみることにした。


とはいえ、最初に見て回った時から分かっていた通り、小さな村には見るべき場所はほとんどなかった。ただ、小さな村にしては市場はやっぱり活発で、出会う人で会う人が私を見て一様にポカパマズさんと呼ぶ。
で、聞いてみたらポカパマズさんはなんと男の人だったらしい。
「私ってそんなに男の人みたいな顔なの?」
「ポカパマズさんが女顔だったかもしれないよ」
思わず天井を見つめて遠い目をする私に、チッタが困ったような顔をして首を傾げて見せた。
「大丈夫だよ、アンタは可愛い顔してる」
カッツェが私の肩にぽん、と手をおいた。
「……うぅ、ポカパマズさんって何者だよ……」
そんな話をしながら、市場を回る。
市場にはお店のほかに、おじいさんたちがのんびり話をしているベンチがあったり、花壇があったり、なかなか手入れも行き届いていて、市場以外にも村の人たちの交流の場として機能しているみたいだった。
事実、市場の端には子どもたちが集まる教室のような場所があって、私たちがお邪魔した日には、皆で歌を歌いながら輪を描いて踊っていた。どうやら、村の祭りの練習らしい。口々に歌いながら踊る姿は、ちょっと可愛らしかった。
暫らく見学していると、練習は休み時間になって、子どもたちは好き好きな場所に座り込むと、友達とじゃれあいながら話を始めた。その間を通り抜けて、踊りを教えていたまだ若い男の人が私達のほうへ歩いてきた。
「あなた達はもしやアリアハンの御方では?」
「そうですけど?」
男の人は私の顔をじっと見つめた後、納得したように頷いた。
「やはりそうでしたか。ポカパマズ様もそこから来たとおっしゃっていました」
「……」
また、その人ですか。
「私、そんなにその人に似てるんですか?」
「ええ、面影が。ですからちょっと尋ねてみたのです」
「面影? でも私、そういう名前の人を知らないです」
自分でも答えが冷たくなってるのは分かるけど、こうも連続でその知らない人と間違われると流石に気分が悪い。
男の人は苦笑いした後、続けた。
「確かアリアハンでの名前はオルテガ……。まだ赤ん坊の娘を残してきたのが心残りだ、とおっしゃっていました。貴女があまりに似ていらっしゃるので、もしや、と思いまして」
私はぽかんとして男の人を見上げる。
後ろでチッタが「うわー、すごい偶然」とか小声で言っていて、それに対してリュッセが「ええ全く」なんて答えているのが聞こえる。
「オルテガは、父です」
答えると、男の人は納得したように頷いた。
「やはりそうでしたか。で、ポカ……オルテガ様はお元気ですか?」
「……父は、なくなりました」
「そうでしたか」
男の人が沈痛な面持ちになる。
「父はココで何を?」
「旅の途中なのだとおっしゃっていました。暫らく滞在して、村のことを色々助けてくださいました。子どもたちにはおもちゃなども作ってくださいましてね、皆ポカパマズ様のことが大好きでした」
「ありがとうございます」
そうか、ポカパマズさん、お父さんだったのか。
だったら似てても仕方ない。
ちょっと嬉しいような、でも男顔に似てるのかと思うと嬉しくないような、複雑な気分。
「父のこと、色々教えていただけて嬉しかったです」
挨拶をして教室を後にしようとすると、男の子が一人走りよってきた。
「おねえちゃん!」
「何?」
「ボクね、ポポタって言うの。ポカパマズさんには一杯遊んでもらったんだ」
「そうなんだ」
私は遊んでもらったこともないよ。
何か変な感じ。
「お姉ちゃんに、あげなきゃ」
「ん? 何を?」
ポポタと名乗った男の子は、私の手を引くと教室の下にあるお店に連れて行く。
「おじちゃん、話は聞こえてた?」
「ああ、もちろん」
どうやら雑貨店らしい店の主は、大きく頷くと店の奥からかぶとを持ってきた。
結構頑丈そうな、こののどかな村には似合わないものだ。
「コレはポカパマズさんが村に置いていってくれたものです。娘さんになら、お渡しできます。ポカパマズさんはいつも娘さんのことを気にかけてましたから」
受け取ると、かなりずしりとした重量感のある、しっかりとしたつくりのかぶとだというのが分かる。
「ポカパマズさん、強かった。このかぶとはずっとポカパマズさんと戦ってたんだもん、ここで埃をかぶってるより、お姉ちゃんが使ったほうがいいと思うんだ」
「そっか。ありがとう」
私はポポタの頭をぐりぐりなでてから、店のおじさんにお礼を言う。
「大事に使います」


「一体いつごろ、オルテガおじ様はココにいたのかな? あの子10歳くらいに見えたでしょ? おじ様が居て、一緒に遊んだって記憶が鮮明みたいだったから、3つとか4つには確実になってた頃だよね? 割と最近まで、おじ様は生きていたってこと?」
「リッシュに似ているということでしたから、騙りの別人ってこともなさそうですしね」
「お父さんはココに来たことがあって、みんなに好かれてた、それだけでいいよ」
不思議そうな顔をしているチッタとリュッセに、そう答えると私は笑う。
「何か、もしかしたらまだ生きてるのかもね」
そうだったらいいな、って何度も思っていたことを口にする。リュッセが私を覗き込んだ。
「もし、オルテガさんが生きていたら、どうします?」
「その時にならないとわかんないなあ。だって、私お父さんの顔知らないし。会っても気付かない可能性はあるし、偽者をお父さんだって誤認する可能性もあるし。何とも言えないなあ」
「とりあえず、リッシュに似てるんだよ」
チッタが笑う。
「リッシュが似てるんじゃないですか?」
「どっちも同じだよ」
「違うとおもいますけど」
チッタとリュッセの会話に、私はため息をつく。
「私はそんなに男顔? それとも女顔なお父さん?」
「どっちも中性的だってことにしとけば、安全側」
チッタの言葉に私はもう一度深々とため息をつくと、宿屋への道を歩き出した。


■分けられなかったので一回にしたら長すぎました。
反省。反省。反省。
■お久しぶりに更新です。
なかなか書きづらい箇所が続いておりまして、微妙にテンション下がり気味です。
ここを乗り切れば、また、書きやすい場所にでるでしょう。
そうしたら、まあ、また次々書き続けると思います。

あくまで、予想。

■初めて手に入れるオーブ
オロチの尻尾から出てきたその剣は、結局私たちがもらえることになった。
一応、オロチを退治した私達への感謝の気持ちをこめて、ということだったけど、ジパングの人たちに言わせれば、自分たちを苦しめた魔物から出てきたものなんて、いくら切れ味の良い剣でも気味が悪いというのが本音だろう。
だから、ありがたく頂いておくことにした。

本物のヒミコは、きっとオロチに食われてしまったのだろう、というのがジパングの人たちの認識になったようだった。
私の知っているヒミコは、オロチにイケニエを差し出すことを決めた王だけど、きっと「本物」のヒミコは、国の人たちから愛される、ちゃんとした王様だったんだろう。だからこそ、こんな風に慕ってもらってる。
「もうこの国は大丈夫だよね?」
「ええ、多分」
「割と人間って、強いし」
館に残ったオロチの死骸を片付けたり、館の掃除なんかを手伝って、結局数日ジパングに滞在しているうちに、私も色々と気持ちの整理をつけることができた。
その間に、リーダーシップを取っている女の子がいたから、きっとその子が今度は国の王になっていくんだろうと思う。
すこしだけでも滞在できて、良かった。
「さて、次はどこに行こうか」
「当てがなくなっちゃったね」
旅立つ準備をしながら、そんな話をしていると、お社から呼び出しがかかった。
何かと思いながら尋ねていくと、ヒミコが使っていた部屋に通された。
中にはヒミコ付だった人たちが数人並んでいて、その部屋の中央には木でできた箱が置かれていた。
「ああ、お待ちしていました」
「先日はヤマタノオロチを退治していただきありがとうございました」
口々に彼らは言うと、私たちを部屋の中央へ案内してくれる。
「実は、ヒミコ様のお部屋を片付けておりましたら、このようなものが出てまいりまして」
そういって、代表格の女の子が、その木の箱を開けた。
中に入っていたのは、不思議な飾りだった。
台座に龍が座っている。
その龍が拳よりちょっと大きいくらいの、丸い珠を守るように抱えている。
色は紫。
珠はつややかな表面をしていて、まんまるだった。
それを抱える龍は小さな羽や鱗まで、とても細かい装飾がされていて、ものすごく精密に作られている。爪は鋭くて攻撃したら強そうだし、今にも動き出しそうだ。
鳴き出さないのが嘘みたい。
台座の下のほうに、小さく文字が彫りこまれていた。
「何か書いてある。えーっと、パープル……オーブ。……オーブ!」
私たちは顔を見合わせる。
南の果てにあった氷の島の、神殿で聞いたものが唐突に目の前に現れた。
思ってた以上に、綺麗で小さい。
もっと大きなものを想像していた。
「オーブって、神殿の巫女さんたちが言ってたやつだよね? 何か、不死鳥が甦るとか」
チッタは興奮したような顔で、何度もオーブを見つめる。
「わたしたちにはよく分からないのですが、偽ヒミコはその飾りを見つめては、『これさえ持っていれば』とかなんとか言っていました。きっと、あの偽者は、あなたたちのような強い人間にコレを渡したくなかったのだと思います。それを思い出して探してみたのですが……こういうモノをお探しでしたか」
代表格の女の子の質問に、私たちは大きく頷く。
「わたしたちは寡聞にして、世界のことはよくわかりませんが、それでも日々何かとてつもなく大きな良くない事が世界に広がっていっているような気がしてなりません。あなた方は、その何かを振り払ってくださるような気がいたします。ですから、その剣も、その飾りもお持ちください。きっと何かのお役にたつと思います」
「でも、いいの?」
私が首をかしげると、彼女は大きく頷いた。
「わたしたちジパングのものが世界に役立つのであれば、これ以上の幸せは無いと思います」


お社を後にして、船に戻る。
「今度はこのまま北上してみるか。行ったことねえ所に行くのが目的だったよな?」
リーダーが私たちを待ち構えていてそんなことを言った。
「何か当てでも?」
尋ねると、リーダーがその質問を待っていた、といわんばかりの勢いで地図を広げた。
「まず、ココ」
指差したのは、ダーマから遠く北東に離れた広い草原の、海沿いの辺り。
かなり大陸の北に位置している。すこし北に行くと、もう大陸が終わる、そんな位置だった。
「ココにムオルとか言う名前の、小さな村があったはずだ。取り立てて目立ったモンは無いと思うが、行ってないところへ行くのが目当てだったら、行ってみてもいいだろう」
「行ってないところへ行くだけが目標じゃないよ」
チッタが呆れたように言う。が、リーダーはあまり気にせず、そのまま地図上の指を東側に滑らせて行く。
「で、この村から北東へ進んで、それから南下」
地図の東側に、南北に大きく伸びる大陸がある。北と南で分けて考えてもよさそうな、つくりの大陸だ。北側は何本も川が入り組むように流れていて、 どちらかというと、東西に広い。南側は南北に長くて、北側は太くて南側が極端に細い。ちょうどスライムをさかさまにしたような形をしている。北側と南側はごく細い陸地で繋がっている。とても心細いくらいに細い陸地。
リーダーの指は、その北側の大陸の川をさかのぼったところでとまった。
「この辺にも村がある」
「とりあえず、この二箇所だな。近いところから行くなら」
「じゃあ、そうしてみる」
それといった代案もないから、私たちはリーダーの意見どおり進んでみることにした。
「なあ、コレ、何?」
ティックが私たちが持ち帰ったオーブを見て首をかしげる。
「すっごい綺麗。物凄く値打ちモノみたいだけど、けど、絶対店では値段を付けられない感じのモノだね」
「今、コレも探しながら旅をしてるんだよ」
答えると、「ふーん」と言ってティックは私にオーブを返してくれた。
「覚えておくよ」
なんていうと、ティックはリーダーに連れられていった。そういえば、彼女は船に乗る代わりに仕事があるんだった。
船は静かに、北に進路を取って進み始めた。


■何かちょっと、こう、今日のはいつもとリッシュの口調が違っていた気がします。
まあ、そういう日もあるさ。
……次から気をつけよう。
■最近、自分が何を書いてるんだかようわからんようになってきました。

……読んでくださっているかたがどのくらい居るのか分かりませんが、これ、楽しいですか?

うん、時折ね、確かめたくなるの。
需要あるのか。

いや、答えなくていいです。

これ書くの、自己満足だから。

■ヒミコの館で
あわててオロチが逃げていった溶岩を覗き込む。一気に熱気が襲い掛かってきたけど、気にせず目を凝らすと、どろりとした溶岩の中に渦のあるのが見えた。
オレンジに光る溶岩のなかで、その渦は確かに溶岩とは違う色を放っている。
よくよく見てみると、その光はうっすらと渦を巻いて空中まで出てきている。
「旅の扉だ」
私の声に、「どれどれ」なんていいつつチッタが隣から覗き込む。
「わ、ほんとだ。魔力もちゃんと感じる」
「もしかして、オロチはこの旅の扉でどこからか遠征してきてる?」
私たちは顔を見合わせた。
「余力、ある?」
みんなの同意を確認して、私は目をぎゅっと瞑ると溶岩に飛び込んだ。

熱い

と、感じる間もなく、独特の浮遊感。
世界が変わる感じ。

目を開けると、あたりは薄暗かった。うっすらと、何か香を焚いた匂いがする。床は冷たくて、つるつるとしていた。
どこからともなく、うめくような声が聞こえる。
「ヒミコ様っ! 今すぐ 傷のお手当てをっ!」
そんな声が聞こえて、私は勢い良く体を起こす。
見覚えのある広い部屋。壁に飾られた不思議な縄。祭壇みたいなもの。つやつやの木の床。
ココは、ヒミコの部屋。
オロチを追いかけてきたのに、どうして?
慌てて周りを見てみると、皆も同じ場所にいた。全員、どこも変わった様子はない。
「どうしたんですか?」
ヒミコのところでおろおろしている男の人に声をかけると、男の人はとても切羽詰った顔で私を見た。
「ヒミコ様が大怪我をなさっていて……それにしてもヒミコ様は一体いつどこでこんなお怪我をなさったのやら……」
男の人は困惑した様子で、怪我の手当てをできる人が早く来ないかと何度も廊下とヒミコの間を行ったり来たりしている。
「どういうことかな?」
小声でみんなの意見を聞く。
「だって私達、オロチを追いかけてきたんだよ」
「うん、手負いのオロチをね」
「そしてそこにいるのは怪我した女だ」
「結論はやっぱり一つ?」
「複数はないでしょう」
話し合いを終えて、ちょうど男の人が廊下に顔を出した瞬間を狙って、私たちはそっとヒミコに近づく。
と、
突然頭の中で声が聞こえた。

わらわの本当の姿を見た者はそなたたちだけじゃ。黙っておとなしくしている限りそなたらを殺しはせぬ。それでよいな?

見ると、ヒミコの目が、異様に赤く光る目だけが、私たちを見ている。そのせいで声は聞こえたのかもしれない。
「そんなの、いやだ」
相談もしなかった。
ともかく、気付いたらもう言っていた。
「ほほほ、ならば生きては帰さぬ。食い殺してくれるわ!」
ゆらり、とヒミコが立ち上がる。髪を振り乱し、らんらんと輝く目は赤い。
「リッシュ、コレを使ってください」
リュッセが一振りの剣を私に渡そうとする。
細身だけど、すごく切れ味のよさそうな、綺麗な剣だ。
「何コレどうしたの?」
「貴女がオロチの尻尾を切り落としたでしょう? 何気なく見てみたら、その中に入っていたんです。……切れ味よさそうだったので、思わず」
「……お前、賢者じゃなくて盗賊になったほうがよかったんじゃないか?」
カッツェが思わず呆れたような声を上げた。
「そんなこと言い合ってる場合じゃないよー! ほら! 来る!」
チッタの焦ったような声に、私たちは再びそれを見る。

八つの頭を持った、巨大な魔物。
ヤマタノオロチ。
ヒミコだったものがそう成り果てたのか、それとも魔物がヒミコに成りすましていたのか、それならいつ入れ替わったのか。
分からないことだらけだけど、一つだけは確実。

コイツは、この国を滅ぼそうとした。
それだけで、戦う意味は十分ある。

「私は絶対許さない!」

オロチの尾は確かに一本切り取られてなくなっていた。つまりここに居るオロチは、私たちが戦ったオロチそのもの。所々手負いだけど、まだ十分力を残していそうだし、手負いな分、今まで以上に怒り狂い力は半端じゃない。
けど、冷静さを欠いているのも、また事実。さっき洞窟で戦ったときと、ほとんど変わらない。ただ、相手が怒り狂っているだけ。
冷静に対処すれば、怖くない。
そして、手に入れた剣が、今まで以上に切れ味のいい剣で、戦いはとても楽だった。
自分の体から出た武器で、倒されるってどんな気分だろう。
皮肉なものだ。
一度戦って、どういう手で攻撃してくるか分かっていたから、私たちは苦労することなくオロチを倒すことができた。
一部始終を見ていた館の人たちは悲鳴をあげたり、悲嘆にくれたりしている。
暫らくは、国が混乱して停滞するかもしれない。
けど、きっと。
魔物にいいようにあらされて、滅ぼされるより絶対に、いい。

ヒミコはヤマタノオロチだった、という話は瞬く間に国中に広まって、

そして、朝が来た。

まぶしい、太陽。
ジパングは、解放された。


■そういえば、全然サイトにまとめをアップしてないや。
今唐突に思い出した。
……何話分貯まってるんだろう。怖いなあ。
■最近日記がかけてなくて申し訳ないです。
DQコンサートは必ず書きます。
今日まで色々チョット別のことやってまして、今日それがおわりまして、何とか書く暇や余裕も出来てきた気がしないでもないので、ここらでまた日記を復活できたらいいなあとか思ってますよ。

■オロチの洞窟 2
息は、一定の間隔で、同じ方向から聞こえてくる。
この通路から見た、広い空間のほうだ。
私たちはお互いに準備ができているか確認してから、そっとそちらの空間に近づいていく。
通路から広い空間を覗き込むと、石造りの橋がかけられている小島にその魔物が悠然と立っているのが見えた。辺りは溶岩が流れていてとても暑い。
魔物はとても特徴的な姿をしていた。
まず、頭が八つあった。そしてその頭は長い首で胴体と繋がっている。顔にはどれもとても凶暴そうな赤い瞳があり、私たちに既に気付いているのか、それとも偶然なのか、こちらを見ているような気がする。
胴体はかなり大きくて、尻尾がいくつかあるのがちらりと見えた。ただ、溶岩の中にでも入れているのか、本当にいくつあるのかはココからではよくわからない。
「おっきい」
チッタが呆然としたように呟いた。
「どうやって戦えばいいのかな?」
「とりあえず、動きが早いのか遅いのか分からないが、あの図体だ、きっと傷に対する耐性はかなりのものだろうし、鱗っぽいもんが見えるから、鎧みたいな働きをして防御力もかなりのもんだろうね」
カッツェが面倒だ、といわんばかりに舌打ちをした。
「では防御力を下げるためルカニなど唱えましょう」
「しっぽを溶岩に入れてるくらいだもん、きっと炎や熱には強いよね。メラとかイオとかは使うだけ無駄っぽいし、わたしはヒャド系を唱えるよ。この前、結構強そうなヒャダインって呪文を覚えたんだよね」
にや、とチッタは笑うと続ける。
「わたしは攻撃呪文をメインにしていくから、リュッセ君は回復優先で、余力があったら攻撃呪文も使ってね」
「わかりました」
「私とカッツェは地道に武器で攻撃するしかないね」
「基本的でいいじゃないか。ともかく、リュッセのルカニに期待だな」
作戦を決めれば、後は行動に移すだけ。
私たちは速やかに広い空間へ走りこむと、そのまま一気に橋を渡ってオロチの近くまで走り寄った。
オロチが私たちに気付いたのか、大きく咆哮する。
甲高いような、不思議な音がした。
そして八つの首がそれぞれに敵だと判断したものを見る。ある首は私を見たし、また別の首はチッタを見る、そんな感じだった。
近くで見ると、目は血のような赤で、爛々と輝いている。
不気味な色だった。
でも、ひるむわけには行かない。
「ルカニ!」
複雑な腕の動きの後に、リュッセの力ある言葉が発せられる。見た目は全く変わりないけど、きっとオロチの防御の力は随分落ちたに違いない。そう信じる。
その言葉を待っていたかのように、カッツェの持っていた鞭が空気を切り裂く音とともに、カッツェを見据えていたオロチの頭を打った。ぱしん、と乾いた低い音が響く。手ごたえがあるのかないのか、見てても分からない。
「ヒャダイン!」
次にチッタの力ある言葉が発せられる。その力はすぐに形になって現れた。オロチの頭上に、突如氷の塊が出現した。それは先の尖った氷の牙をいくつも寄せ集めたような、それでいて法則性をもった綺麗な氷の塊だった。その塊はすぐに回転して、オロチの体に次々に氷の刃を降り注がせる。氷の刃は次々にオロチの体に突き刺さる。目に見えて効いているような気がする。
私も目の前にあった頭に対して、渾身の力で剣を振り下ろす。リュッセの呪文は効いていたようで、思いのほか深々と剣が刺さった。ぬくと、返り血が噴出してすこしそれをかぶる。熱い血で、やけどをしたかもしれない。けど、構っている暇はない。まだ体は動く。
オロチの顔が不意に私から離れた。
よく見ると、首は全ていっせいに宙に持ち上げられている。そのどの口にも、炎の揺らめきが見えた。
「ヤバイ避けろ!」
カッツェの声が響いたのと同時に、オロチは一気に全ての首を下ろして私たちに近づけると、その口から炎を吹き出す。熱い炎が、私たちの全身に降り注いできた。
「!!」
何とか衣服までが一気に燃え上がることは避けられたけど、体のほうはかなり酷い。やけどがひりひりする。
目に見えて一番酷いチッタに、リュッセから回復の呪文がとんだ。傷が一気にふさがる。それで元気を取り戻したのか、チッタから再び氷の呪文がオロチに向かって発せられる。カッツェも鞭をまた振るう。私は次に怪我の酷そうなカッツェに回復の呪文を使った。さっきみたいな炎の攻撃を、次々やられたら勝ち目はない。ともかく回復は早めのほうがいいだろう。
戦いは長引かせたくはなかったけど、ちょっと覚悟は必要かもしれない。

その後も戦いは一進一退という感じだった。オロチは炎攻撃だけでなく噛み付いてきたりもする。こちらはこちらで、自分でもガッツポーズをとりたいくらい上手く攻撃が当たって、相手の首を切り落としたりもしたけれど、やっぱり回復がすこし追いつかなくなってきている。ともかく、全体的に炎の攻撃があるのが痛い。
とはいえ、少しずつこちらが押し始めた。
そして、何回目か分からない攻撃をしたとき、オロチがすっと攻撃をやめ、なんと体を翻した。
「逃げる!」
チッタが叫ぶ。オロチは溶岩に逃げ込むつもりらしい。
思わず剣を振り下ろす。オロチの尾が切れた。
けど、結局オロチには逃げられてしまった。


■この辺って、ゲームではすごく駆け足で済ませてしまうので、実際苦戦してるなんてことは全然ないんです。
何気に、話でもチッタちゃんがヒャダインつかってる辺りから、その辺を汲み取っていただけるとありがたいです。
今回のゲームでは、ジパング攻略したの、レベル28くらいでした(笑)
レベル28までダーマに居たの。
それから一気に話を進めるの。
■昨日はDQコンサートへ行ってきました。
豪華でしたよー!!
アンコールが!
……前半、最後の1曲しか聞けてないですけどね。

明日あたり、日記書きます。

今日は眠いから、これだけで勘弁ー。

■オロチの洞窟 1
ヤマタノオロチが居るという洞窟は、村からそれほど遠くない山の中腹にあった。
どうやら火山らしく、洞窟の中には溶岩が流れ出ている部分がある。噴火をする寸前なのか、それともした後なのか、いつもこうなのか、よく分からなかったけど、とりあえずとても暑い。
ただ、暗いはずの洞窟の中は、その溶岩がぎらぎらと光を放っているせいで、妙に明るい。
何が幸いするかなんて分からないものだ。
洞窟の中には、水脈もあるようで、水が溜まっている部分もあった。どうせならしっかりヤヨイさんあたりに洞窟内部の構造を聞いてくればよかったけれど、今更村に戻るわけにも行かない。洞窟の中がどうなっているかなんて、今までだって分からなかったけどちゃんと進めてこれた。今回も、内部の冒険としては、同じことだといえる。
「それにしてもあっついわねー。コレって、溶岩の直接の暑さだけじゃなくて、きっと湿気も関係してるよね」
チッタがうんざりしたように舌を出してぼやく。暑さで息がしにくいのか、すこし呼吸が速かった。
「溶岩が道を寸断してないといいんだけど」
カッツェも流石にどうしようもない、という感じで顔をしかめる。
「行ってみるしかないでしょう。用心して進みましょう」

洞窟の中の地面は、何度かイケニエを運んだせいか、随分しっかりと踏みしめられていて歩きやすい。通路としてもそれほど細くなく、基本的に作りは単純なようだった。何かを貯蔵しておくために使ったこともある洞窟だったのか、場所によっては明らかに人の手で掘り進んだのだろうという小部屋がいくつかあった。が、それは一部の例外のようなもので、基本的には自然の洞窟だ。
魔物は、もちろんヤマタノオロチ以外も住み着いていて、なわばりを横切る私たちに襲い掛かってくる。たいていの魔物は一度は見たことのあるような奴らで、多分西に位置する大陸、つまりはダーマやバハラタのほうから流れ着いてきたんだろう。手ごわい敵は居なかったけど、相変わらずあの銀ぴかに光るメタルスライムには逃げられるばかりで、何だか悔しい。しかもこの洞窟ではメタルスライムは集団で現れ、いっせいにギラを唱えて逃げていくのがまた腹立たしい。
「いつかあいつらを一方的に倒せる日がくるのかしら」
悔しそうに地面を蹴るチッタに、とりあえずそっと賛同しておく。
「多分、彼らをいとも簡単に仕留められるようになる頃は、物凄い強さになってるでしょうね」
とリュッセは最初から諦めたような笑顔で、力なく呟いた。

洞窟には分岐するような通路は全く無くて、小部屋を除けば一本道のつくりになっていた。幸運にも、溶岩が通路を寸断するようなことも無く、私たちはあまり苦しむことなく洞窟の奥深くまでたどり着くことができた。洞窟のおくには、更に地下へ進むための人工の階段が作られていて、低くうめくような、それで居て叫び声のようは奇妙な音が定期的に響いてきている。
「オロチとかいうやつの息かな?」
チッタが階段を嫌そうに見つめて呟く。確かに、ココまで息遣いや鳴き声が聞こえてきているのだとしたら、相当大きいか、すぐそこにいるかのどちらかということになる。戦うつもりでは来たけれど、階段を下りてすぐ戦いになる、というのは少々避けたかった。どうせなら、どういう部屋なのか知ってから戦いたい。
カッツェが階段から注意深く下の階を観察する。
「大丈夫だ、すぐそこにオロチが居るわけじゃない。どうやら広い通路みたいだね」
「じゃあ、降りてみよう。皆ココまで怪我とかしてない?」
カッツェの報告に私は頷いてから、皆を見渡す。誰も怪我なんかはしてなくて、元気そうだった。それを確認してから、階段を下りる。石が埋め込まれたしっかりした階段で、危なげなく下の階にたどり着くことができた。
さっきまで聞こえてきていた不思議な音は、更に大きくなった。確実に、風が流れる音が一緒にしている。どうやら間違いなく、これは呼吸音のようだった。
「何者かは必ず居ますね」
「うう、でかそう」
あちこちに視線を送りながらリュッセがいい、チッタが嫌そうな声を上げる。
階段を下りたところは広い通路になっていて、奥のほうにひときわ広い空間があるのが見えた。そこには石造りの祭壇のようなものも見える。
左側には小部屋が、右側には広い空間が広がっているのがそれぞれ見えた。どちらも、両側の壁にあいた入り口からざっと見ただけの話で、本当はどうなっているのかよくわからない。
「あの祭壇は?」
リュッセが正面の祭壇に興味を持った。
「行ってみよう」
カッツェの言葉とともに、私たちはひときわ高く作られた祭壇に進む。祭壇をのぼりきると、そこには端の擦り切れたような縄と、多くの骨が散らばっていた。この骨は、多分ささげられたイケニエのものだろう。
「……」
リュッセが無言で祈りをささげる。
「コレはもう、絶対に無視できませんね」
骨の多さから、随分たくさんの人がイケニエになったことを想像するのは簡単だった。
「息の元へ行こう」
生きているヤヨイさんを骨にするわけにはいかない。そして、故郷を守るためイケニエにされた人たちの恨みを、無視するわけにはいかない。この国の村を、第二のテドンにはしたくない。
「そして絶対勝とう」
私は自分でもビックリするくらいの強い声で皆に宣言する。
皆が頷いた。
大丈夫、私は一人じゃない。
イケニエの若い娘さんたちは皆一人で、村のために恐怖と戦ったんだ。
「負けるわけには行かない」


■はい、というわけで書くのが苦手な洞窟探検&戦闘パートの開始です。
ふー、気が重い……(苦笑)
■毎日暑いですね。
こう暑いと、もう何も考えられませんね。
書くのも面倒です。

つまりまた、ストックがなくなったわけです(笑)

■ジパング 2
お社は周りを広い森林に囲まれていて、涼しくてさわやかな空気に包まれていた。
遠くからみてもかなり大きかったけど、近くでみると本当に大きい。こんな太い木をどこで手に入れたんだろう、というような木の柱があちこちにある。木でできた階段を上がる。廊下も木でできていて、表面がつややかに光っていた。壁は土のところと、紙がはってある扉とで構成されている。扉は引き戸で、音も無くすっと開く。とても軽かった。
社の中でもたくさんの人が働いていた。やっぱり質素な白い服を着ていて、黒い髪を長く伸ばしている。どうやら、この国ではコレがスタンダードらしい。
中で働いている人たちの関心事も、ヤマタノオロチのことらしい。まあ、確かに国を滅ぼすかもしれないくらいの怪物みたいだし、尤もな話だろう。
聞いた話を総合すると、ヒミコは不思議な力を持っているらしい。そして、オロチにはきっと頭を痛めている。生贄はヒミコの予言で選ばれる。
自分の国の人を、怪物なんかに差し出さなければいけなくて、しかもそれを選ぶのが自分の役目ときたら、ヒミコとかいう女王様はさぞ心が痛いだろう。
「なーんか、変」
「ええ、なんか妙ですね」
チッタとリュッセが首をかしげあう。今のところ、それが何かを教えてくれるつもりは無いらしく、ただ何かを疑うような顔をしているだけだった。

ヒミコの部屋は、お社の中央・奥にあった。どの部屋よりも広くて、そして綺麗に磨き上げられている。床はこれまでと同じように木で作られているのに、ぴかぴかに光っていたし、奥の壁に作られた小さな飾りも精巧な彫刻が施されていて、手が込んでいる。壁には稲妻の形に切った白い紙がついた縄も飾られている。何を意味するのかはよく分からなかったけど、なんかおしゃれだ。
部屋の真ん中の、広げたござのようなものの上に座っていた女の人がこちらを見た。
真っ黒でつややかな髪を腰より長く伸ばしていて、それは長さのせいで床に広げられている。白い質素な服には赤い服を重ね着していて、首には緑の石をソラマメみたいな形に整えたものがついた首飾り。薄い金で作った冠をかぶっている。
顔は恐ろしく綺麗で、切れ長のつり目と、赤いアイシャドウが印象的。イシスの女王様も綺麗だったけど、なんか種類が違う。イシスの女王様が太陽なら、こちらは月。でも、なんだろう。同時にとっても……怖い。
何だか得体が知れないというか、体の奥底から冷えてくるような感覚。
目が合った。
「なんじゃお前は?」
声はとても冷たくて、刃物のようだった。
「えと、私は……」
「答えずともよいわ!」
答えかけると、突然ヒミコはそう叫ぶと立ち上がった。意外にもかなり小柄で、さっきまで感じていた威圧感だとか、冷たさがウソだったんじゃないかとさえ感じられる。
「そのようないでたち。……大方この国の噂を聞き外国からやってきたのであろう」
そこで持っていた扇をぱちん、と音をたてて閉じると、その扇で私たちを指し示した。
「愚かな事よ。わらわは外人を好まぬ。早々に立ち去るのじゃ。よいな! くれぐれもいらぬことをせぬが身のためじゃぞ」

話はそこで終わりで、後は社にいた人たちに案内されるがまま歩かされ、気付けば社の外に放り出されていた。
「なーんかやっぱり、へーん」
チッタが足元の草を蹴り上げながら言う。
「リュッセ君どう思う?」
「感覚は同じです」
「カッツェ姉さんは?」
「胡散臭いとは思う」
そこでチッタは振り返ると、社を見上げた。
「ともかく、ちょっと話を聞いてみよう」

あちこち再び村の中を見て回る。コレは黙っておいたほうがいいんだろうけど、今年生贄にされるヤヨイさんが隠れている場所を発見した。何でも恋人が生贄の祭壇での縄を緩めておいてくれたそうで、何とか逃げて帰って来たそうだ。でも、いつかは生贄になりにいかなければ、ヤマタノオロチが村に来て人を食べてしまう。だからまた生贄の祭壇には戻るつもりだといっていた。
「せめてもうひと時、生まれ育った故郷に別れをつげさせてくださいませ」
それがヤヨイさんの言葉だった。

「絶対オロチを退治しようよ」
チッタが再び握りこぶしを作る。
「けど、余計なことをするなって、ヒミコ様は言っていたよ?」
私が言うと、チッタが深く深くため息をついた。
「気にすることないのよ! 怪物を前に尻尾巻いて逃げてるような奴に遠慮することはないの!」
「うー、そうなのかなあ?」
思わず押されて頷きかける。
「それにあのヒミコって女! すごーく胡散臭い!」
「それには賛同」
カッツェが頷く。リュッセも無言ながら頷いていた。
「オロチがいつ現れたのか不明ですけど、ヒミコが不思議な力を手に入れたのは『近頃』だという話でした。そして生贄の話をしだしたのも、そんなに昔ではないようです。ヒミコとオロチの間に、もしかしたら密約があるかもしれません。だからこそ、暴かれないためにも、余計なことをされたくないんです」
「そんなの、無いかもしれないじゃない」
悔しくて反論すると、リュッセは静かに頷いた。
「ええ、もちろん、何の根拠もありません。色々な可能性を挙げているだけです」
私は頷く。それは分からないでもない。
「ただ、コレだけはいえます」
「何?」
「ヒミコはヤマタノオロチを退治するつもりはありません。この村に、ヤヨイさんに何かしてあげたいなら、黙って退治にいくしかないですよ」


■さて次回からまためんどっちー洞窟探検です。
戦闘シーンも苦手だし、憂鬱ですなー。
■金曜日は寝こけてました。
遅れてごめんなさい。
ゼルダ?

おもしろいよー?
それのせいで寝不足だよー。
その状態で花火大会に行ってばっちり体調崩したよー。
だめな人生驀進中!

■ジパング 1
遠くにその島が見えてきた。
コレまでのいろんな大陸と比べると本当に小さな島で、地図で見てみると北東から南西に向かって細長く伸びている。実際の島は、遠くから見る限り緑の山に覆われていて、というかむしろ山がたまたま島の形をしています、ということじゃないだろうかと思うくらい山が目立つ。見渡す限りの草原、とか絶対に無いだろう。
実際、近づけば近づくほどその感覚は確信に変わっていく。
もちろん、平地もあるけれど、これまで旅をしてきた土地で一番山が近い。村も小さく、木造の小さな家が点在しているだけだった。道路という感覚はないらしく、地面は土のままで、よく人が通るのであろう場所だけ土が踏みしめられていて、草が無いから通路に見える。
そんな小さな村には不釣合いなくらい大きな神殿が、村の北側に作られていた。神殿も木造で、大きな木がいくつも組み合わされて神秘的な美しさを放っている。色は付けられていない。木の色そのまま。一階建てだけど、床下には1メートルくらいの隙間が作られていて、全体的に建物が持ち上がっている感じで建てられている。
その神殿までの道は、ちゃんとした通路があって、木を組み上げた不思議な形の門が通路にいくつも作られていた。通路を通ると、その門をどんどんくぐっていくことになる。この門は朱塗りで、道路を挟むように二本の柱が立てられていて、その柱と柱で上の方の二本の横木を支えている。
村の人たちは質素な白い服を着ていて、男の人も女の人も黒い髪を長く伸ばしている。男の人は顔の両側で髪をまとめていて、女の人はそのまま下ろしていたり、髪の先のほうで一つにまとめていたりと、様々だった。
「これはこれは! ジパングへようこそおいでくだされました」
私たちに気付いた、村の入り口にいた女の人が畑仕事の手を止めて挨拶をしてくれた。
「こんにちは」
私たちもそれぞれ挨拶をする。女の人はよく見るとすこし疲れたような顔をしていた。
「お仕事、精が出ますね」
女の人ははにかんだような顔をして、それから軽く顔を伏せた。恥ずかしいのかもしれない。
「あまりゆっくりしないで、早めにジパングをお出になってくださいね」
女の人はそういうと畑仕事に戻っていった。
「どういうことかな?」
チッタが首をかしげる。
「んー、排他的なのかな?」
答えて、再び村の様子を見る。小さな村は、あまり活気が無い。畑はあまり収穫が期待できそうにもなく、走り回る子どもも少ない。村の人たちは皆疲れたような顔や、諦めたような顔をしている。
「何か、辛気臭いトコだね」
カッツェが舌打ちをする。村の人たちは、私たちを遠巻きに見ていて、話しかけようにもなかなか機会が無い。
そんな中、私達と同じような姿をした神父さんが村にいるのを発見した。
「わたしはこの国に神の教えを広めにきました。でも、ここではヒミコが神さまです」
「ヒミコ?」
「この国を治める女王ですよ。北側にある大きなお社を見ましたか?」
「あの神殿?」
「この国ではお社と呼ぶんですよ。あそこに住んでるんです」
「圧政か鎖国かしてるのか? 随分村が寂れた感じじゃないか」
カッツェが尋ねると、神父さんは大きくため息をつきながら、力なく首を横に振った。
「この国は今、怪物に襲われているのです」
「怪物!?」
「ヤマタノオロチという怪物です。この村からそう遠くない東の山奥に洞窟があるのですが、その奥底に住み付くようになったそうです」
「それは……困ったねえ」
チッタが眉を寄せる。
「どうにかできないの?」
「オロチは力が強く、退治をできるほどの力を持った者はこの国には居ません。ただ、若い娘を生贄にささげると半年から一年くらいは悪さをしないので、仕方なくそうしているようです」
「そんなひどい! おかしいよ!」
チッタが憤慨したように歯軋りする。本気で悔しいらしく、顔が赤い。
「そもそもはヒミコが言い出したらしいですけどね。あまりにオロチの被害が酷くなり、占いの結果だそうですけど」
「直談判に行こう。他の方法とか無いのかとか! 何なら退治しようよ!」
「落ち着いてよチッタ」
「落ち着いてるよ!」
「とりあえず、村のほかの方々にも話を伺って、それからヒミコ様に会いに行きましょう。ね?」
リュッセの言葉で、私たちは村の中をもう少し探索してみることになった。
暫く聞きまわった結果、確かにこの国には今ヤマタノオロチという恐ろしい怪物が居て、生贄として若い娘さんたちをささげているらしい。村の中には子どもが男の子で本当に良かったとあからさまに喜んでいる人もいたし、一人娘のヤヨイさんが生贄に選ばれて、泣き崩れている家族も居た。ともかく、神父さんに聞いた話は本当らしい。
「やっぱり、放っておけないよ。他の方法がないのか、無いなら生贄じゃなくて退治するように兵を組織するとか、ともかくヒミコに言いに行こう!」
チッタは握りこぶしを作る。
「まあ、確かにこの状況は良くないのは分かる。だから言いに行くのはついていく。けど、もうちょっと落ち着いて話をしようね、チッタ」
「ともかく行くのー!」
握りこぶしのチッタを宥めつつ、私たちは不思議な門をくぐって、北のお社を目指した。


■はい、というわけで、ジパング編スタートです。
わりと淡々と書くつもりですので、短めになるんじゃないかな、と。思ってますがどうなることでしょう。
■火曜日に、ゼルダの伝説夢幻の砂時計を買いました。
面白い! 面白い! 楽しい!
これからドンドン更新が遅くなったら「そうかゼルダか」と思っていただいて結構!(笑)

■船に乗っていたもの
次の朝、なるべく早く私たちは落ち合うと、船にいそいだ。
船は何の変化も無く、そこにあった。
「どうした、早いじゃないか」
リーダーが驚いたような顔をしている。
「何も変わりはなかった?」
私の緊張した声に、リーダーが笑う。
「ねえよ。リュッセが先に来たくらいだな」
「何か言ってた? リュッセ、変わりなかった?」
「別にねえな。ヤツは早く寝たけど、そのくらいだ。……話は大体聞いてる」
「どんな?」
「アレに因縁深い貴族に、ここに居るのがばれたかもしれない、迷惑はかけません、ってトコだ」
「襲撃とか、無かった?」
「ねえよ。あったとしても撃退できるぜ。俺たちを何だと思ってる」
「海賊」
「正解だ」
リーダーは笑いながら、わしわしと私の頭を撫でた。
「心配ならさっさと会いに行ってやれ、飯食ってるとこだ」
私は慌てて走る。後ろのほうでチッタとカッツェがくすくす笑っているのが聞こえたけど、気にしないことにした。

「あれ、早かったんですね」
「心配で」
「ありがとうございます。でも心配することありませんよ。アリアハンの英雄オルテガの娘にして、魔王討伐の旅に出たアリアハンの勇者の供を暗殺したなんてばれたら身の破滅ですからね、そんな下手なことしませんよ」
リュッセはそんなことをいって静かに笑っている。
「じゃあ何で先に船に乗ったりしたの!?」
「迷惑をかけないためですよ。勇者という重要な娘さんの、仲間であることが判明したんですよ? いけしゃあしゃあと『昔さらわれたうちの子に良く似てる』だとかなんだとか言いながら、ウチに迎えにきたらどうするんです」
「あー……」
「僕は父親のことは嫌いです。許すつもりは有りません。でも、父も母もとても大切です。愛しています。だから迷惑をかけるわけには行きません。さっき言ったようなことになったら、僕は両親のためにも父親のところへ行かざるを得ないでしょう。ほかならぬ両親の目の前で。それは避けなければ」
「うん、そうだね」
「本音としては、ココに父親の手のものが来れば、とも思ってたんですけどね」
「そ、そうなの?」
「きっぱりと決別を宣言できたでしょう? 僕から出向くわけには行きませんから」
そこで私は大きく息を吐いた。
「よかった。殺すとか言うのかと思った」
「そんな野蛮なことはしません。それじゃあの父親と同じじゃないですか」
「そうだね」
「でも、心配してくれてありがとうございます」
「ううん」
リュッセは私の頭をそっと撫でて、優しい顔でふわっと笑った。
「いつかきっと、恩返しをしますね」
「なんのこと?」
「さあ?」

長居は無用ということで、早々にアリアハンを後にする。
当初の目的はレーベの北。そこから一気に海を北に向けて縦断することになっている。アリアハンから北に向かうと、ダーマの東南方面・バハラタの東辺りの大陸の端っこに着く。そこからごく狭い海を東に渡ると、細長い島国にたどり着くそうだ。何でも独特な文化を育んだ国で、ジパングというらしい。
「ともかく行ったことのねえ国を行ってみて手がかりを探すんだろ?」
というリーダーの言葉に頷いたらそうなった、という感じだ。
よって現在、レーベの北をすこし行ったところを船は静かに北へ向かって進んでいる。
「リッシュ、リーダーが呼んでます」
甲板で素振りをしていたところへリュッセがやってきてそう伝えた。
「何の用かな?」
「全員で来てくれって頼まれました。カッツェはどこですかね?」
「チッタは?」
「すでに行ってます。寝てましたから」
「また船酔い?」
「単に眠かったみたいですよ。お父上と喧嘩してたらしいですし」
「寝不足かぁ」
私は笑うと、帆を見上げた。
「カッツェー! リーダーが呼んでるってー」

帆から降りてきたカッツェとともにリーダーの居る部屋に行って、私とカッツェは唖然とした。
「え? なんで?」
そこにいたのは、ティックだった。ルイーダさんのお店で会って、そのときは諦めたみたいにしてたのに。
「密航だ。タルの中に潜んでた」
「古典的な」
リーダーの言葉に、カッツェが呆れた声を出す。
「で? コイツが入ってた分のタルの食糧なり水なりは大丈夫なのか?」
「多めに積んでるから問題はないが……どうする」
「連れて行ってください!」
カッツェとリーダーの会話に、ティックはすごい勢いで頭を下げた。
「ココから戻るのって、どうなの?」
私が訪ねると、リーダーは即答する。
「面倒だ。海に叩き込むか」
その言葉に、リュッセが「それは断固反対です」と、冷たい声をあげる。確かに、かなりそれは嫌だ。
「普通はどうするの?」
「普通海賊船に密航するやつはいねえよ」
チッタの質問に、リーダーが困ったような声を上げる。
「え? コレって海賊船なんですか?」
「違うよ」
ティックの質問に、チッタがため息混じりに答えた。
「ともかく、海に叩き込むにせよ、船員の見習いにするにせよ、あんたらの仲間にするにせよ、船長が決めてくれ」
「海に叩き込むのは断固反対ですってば」
リーダーの言葉に、リュッセが眉を寄せる。ちょっと怒っているみたいだ。
「んー」
私はティックを見て暫く悩む。
もちろん、海に叩き込むなんて、そんなつもりはない。
でも、お客さんでもない。
「見習い船員でいいんじゃない? お客さんってわけには行かないし、かといってわたしたちと旅してもらうわけにも行かないでしょ? 船代のかわりに、お料理でもしてもらって働いてもらえばいいじゃない」
チッタが首を傾げて私を見た。
「うん、そうだね」
「ありがとうございます!」
私の返事に、ティックがまた勢いよく頭を下げた。
「じゃあ、お前ついて来い。料理長に会わせる」
リーダーの言葉に、ティックは「はい!」といい返事をしてその後を追いかけていった。
「あそこまで執念あると、ちょっとガッツを認めたくなるな」
カッツェは苦笑して、歩いていったティックを見送った。


■さてはて、これから進むのは北・ジパングです。
実はあまり古文も日本史も得意じゃないので、ぼろがコレまで以上に出るとおもいます。
大目に見て頂戴、大目に。
■明日はお休みします!
というのも、明日は朝からお出かけで、帰ってくるのが深夜だからです。
だいありーのーとさんは時間指定で予約、とか出来ませんから。
激人力ですから。

まあ、ほら、放っておいても書かない日もあるんだから、そんなにたいした問題ではないって。

■いつかどこかで。
次の日の朝、アリアハンのお城に向かう桟橋の前で皆と落ち合った。
「派手に喧嘩してきたわー! でも、わたしが強力な呪文をたくさん覚えたのを見て、ウチの石頭も漸く頭を縦に振ったわよ!」
チッタが勝ち誇ったように胸を張る。強力な呪文をたくさんって、チッタとおじ様はどんな喧嘩をしたんだろう。怖くて聞けない。
「リュッセ君は? その頭、何にも言われなかった?」
「ええ。そんなに。『そうか、乗り越えたか』程度の話ですよ。旅の話は長くしましたけど。そうですね、この姿でお城に行くのは流石に心配してましたけど、そのときはそのときです」
そうか、『お父さん』はそれなりの地位の人なんだっけ。お城に居る可能性があるんだ。と思ったけど言わない。会わないかもしれないし、それを祈る。
「リッシュは?」
「私もほとんど母さんと話して終わっちゃった。あ、でもカッツェとルイーダさんの酒場で会ったよ。ルイーダさんに挨拶に行ったから」
「へえ」
「何か、商人の女の子とちょっと話をしたくらいかな」
「え? 連れて行くの?」
「まさか。無理だって言ってやった」
チッタの驚きにカッツェは呆れたような声を出す。
「そうだよね。行商じゃないし、あんまり町に滞在しないしね」
チッタの納得した声。
「じゃあ、お城にレッツゴー!」

お城は相変わらず静かで、多くの兵士さんが見張りをしている。そんな中を、王様が居る謁見の間まで案内されて歩く。お城やキラキラしたものが大好きなチッタは目を輝かせてあちこちをきょろきょろしているし、カッツェもさりげなくあちこちチェックをしているみたいだった。リュッセはちょっと緊張気味の顔。私も久しぶりに来たし、回数としても2回目で、緊張はあまり皆と変わらない。
「よく戻った」
王様はまずは私の無事を喜んでくれた。それから、私たちに旅の話をするように言う。ロマリアに渡ったことや、ノアニールの人とエルフの話、イシスの女王のこと、ポルトガのこと、それからテドンでのこと。私たちは話しちゃ問題の有りそうなこと、例えばピラミッドで宝を持ってきたとか、以外のことを一生懸命はなした。それから、「魔王はネクロゴンドに居る」ことも。
王様は時折頷きながら熱心に話を聞いてくれた。そして長いお褒めとねぎらいの言葉をかけてくれた。それを静かに聴いて、謁見は終わった。

「肩がこった」
「疲れちゃった」
カッツェとチッタはそんなことを言いながら謁見の間を後にする。それを聞いてリュッセは苦笑していた。
謁見の間を出て、手すりの彫刻も見事な、大きな階段を下りる。絨毯はあいかわらずふかふかで、足音なんか全然しない。
「豪華すぎて疲れる気持ちはちょっと分かります」
「だよね、お城って見てるくらいがちょうどいいよね、やっぱり」
チッタはリュッセの感想に大きく頷いた。
階段をおりきったところで、綺麗なドレスを着た女の子が私たちに声をかけてきた。
女の子はふわふわの青い髪をしていて、顔立ちが整った上品な感じの子。すこし離れたところにお付きの人っぽい人が立っているところから、多分いいところのお嬢さんなんだろう。
「リッシュ様ですか?」
「うん……じゃなくて、はい」
慌ててしまって、変な返事になったけど、女の子は気にしないようでニコニコしている。なんかどっかで見たような顔だな、と思うけどそれが誰だか思い出せない。
「わたくし、リッシュ様にあこがれておりますの。女性でありながら、勇敢で、旅に出て魔王を倒そうなんて、ステキですわ」
「……あ、ありがとう、ございます」
照れてしまって、まともに返事もできない。
「わたくし、リッシュ様が旅立たれてからずっと応援しておりますの。わたくしのお友達にも、たくさんリッシュ様のファンがおりますのよ」
「……」
口をぱくぱくさせるけど、声も出ない。
「すごいリッシュ、大人気だ」
チッタが笑う。
「チッタ様も、魔法を志すお友達があこがれておりますのよ。クルーゼ様もご自慢でしょうね」
「ははは」
チッタが引きつった笑い顔をする。そのクルーゼ様と、昨日大喧嘩したなんて言えないよね、確かに。言うまでも無く、クルーゼ様っていうのは、おじ様。チッタのお父さんだ。
「どこまでできるかわからないですけど、頑張ります。ありがとうございます。ええと、お名前は?」
何とか声を振り絞るようにして言うと、女の子は恥ずかしそうに口元を扇で隠した。
「あら、いやだわわたくしったら、名も名乗らず。恥ずかしい」
扇の向こうで、目を伏せる。頬が赤い。
なんか、全然違うなあ、同じ女の子でも。なんて自分を思ってため息がでそうになる。
「わたくし、ティーアと申します。ティーア・ウィー……」
「お嬢様、お時間です」
名乗りかけたところに、向こうに居たお付きの人から鋭い声が飛ぶ。
「あら、そうなの? 仕方が無いわね」
女の子は口を尖らせると、お付きの人のほうを一度みて、それから私をもう一度見た。
「お話できてうれしゅうございました。またお会いできることを楽しみにしております」
そういうと、女の子はお付きの人と共に城の奥のほうへ消えていった。

「……はああああ」
いきなり大きな息を吐いて、リュッセが座り込む。
「ど、どしたの?」
「いえ、別に、ちょっと緊張を」
ビックリして尋ねると、そんな返事が返ってきた。同時にチッタが壁を殴りつける。
「ちょっと! チッタもどうしたの!」
「気付かなかったなんて! ああもう! わたしの馬鹿―!」
「なんだい、どうしたってんだ?」
カッツェも流石に慌てた。
「さっきの子!」
チッタが女の子が歩いていったほうを見る。
「お城から出たら教えてあげる!」
そういうとチッタはリュッセの手を取って早足で歩いていってしまう。もちろん私とカッツェは慌ててその後を追いかけた。

「あの子がどうしたってんだ?」
「最後まで気付けなかったなんて、わたしったらもー!!!」
チッタの怒りは収まらないらしく、暫くそんなことを叫ぶ。場所は私の家。ココが一番いい、とチッタが言ったからだ。リュッセはともかく疲れきった様子で床に座り込んでいる。
「名前しか聞いたこと無くて顔を知らなかったのが敗因だわ!」
「だから、何が何だか説明してくれ」
カッツェがため息をつきながらチッタの肩を押さえる。
「さっきの子。名前はティーア・ウィードっていうの」
チッタは口を尖らせる。
「名前は知ってたのに! ピンとこなかった! あああ! イヤミの一つも言ってやりたかったー!」
ウィードって、それって。
「リュッセ君大丈夫!?」
チッタはくるりとリュッセのほうを向く。リュッセはチッタを見て、ぼそぼそと答えた。
「ビックリはしましたけど、別に存在を知らなかったわけではなく、顔は初めて知りましたけど、って、こう答えてしまったら、認めたも同然ですね」
「そういえば否定してたんだったね」
「そうか、それでどっかで見た顔だと思ったわけか」
チッタの呟き。カッツェの長いため息。
「でも、彼女が何をしたわけでもないですからね、イヤミをいっても仕方ないですよ」
「気持ちの問題!」
「でも、そうなると、あのお付きの人、名前を名乗るのをやめさせたのは、リュッセに気付いたからって事だよね?」
首をかしげながら言うと、皆が黙った。
「ま、明日にはアリアハンをたつわけですし、問題ないですよ」
ほかならぬリュッセがそう言って立ち上がる。
「今日は船に泊まります。父にはそう言ってきます」
「気をつけてね」
「ええ」
私の言葉に頷くと、リュッセは先に部屋を出て行った。


■展開ベタだな!!!
でもベタっていうのも、たまにはやっておかないとね!
とか自分を擁護だ。

……ベタって、美しいよね?
■なんとか書きましたよー。
ちょっとコメディ色が強いからかけたのでしょうか。
まあ、勢いですから。
書いたらそれで勝ちです。勝ち負けって関係ないですけど。
己に? みたいな?

■久々のアリアハン
ランシールから東に進路を取って数日、私達はアリアハンに到着していた。
色んな土地を渡り歩いていたから気付かなかったけど、アリアハンを旅立ってから季節はほぼ一巡していた。日付ではなんとなく理解していたけど、変な気分だった。
船の準備はコレまでと同じようにリーダーたちに任せて、私たちはそれぞれの家に戻ることにした。チッタは「この機会だから父さんと決着をつける」なんて据わった目で宣言し、リュッセは「ちょっと驚かれるかもしれませんね」なんて染めなくなった蒼銀髪を触って曖昧に笑っていた。カッツェは宿で待機しているというし、全員で別々なところで眠るスタイルも懐かしい。
「じゃあ、明日王様のところへご挨拶に行くとして、朝集合ね」
ということだけ決めて、私たちは別行動になった。

「お帰りなさい」
母さんは嬉しそうに私を迎えてくれた。そして「少したくましくなったのは、旅人としては嬉しいけど、女の子としては複雑だわぁ」なんて言う。小さい頃、剣の修行に明け暮れさせた人とは思えない発言で、思わず苦笑する。
「でも、無事でよかった。どのくらいここに居られるの?」
「んー、明日はお城に行って王様にご挨拶するし、船の準備とか考えて、早くてあさってかな? 伸ばすのはいくらでも伸ばせるけど、そういうわけには行かないし」
「そう」
「そういえば、父さんの噂をあっちこっちで聞いたよ」
「どんなの?」
「やっぱりすごい勇者だったんだね」
私は母さんに、旅の途中で聞いた父さんの噂を色々話す。……除く、ロマンス。母さんは嬉しそうににこにこ笑って話を聞いてくれた。
もちろん、自分の冒険も。
母さんは私の話をちゃんと聞いてくれる。
何だか、懐かしい感覚に涙が出そうになった。

「そうだ、リッシュ。ルイーダさんに挨拶しておくのよ? 色々お世話になったんだから」
話がひと段落したところで、母さんに言われた。それもそうだ。チッタは別として、カッツェやリュッセを紹介してくれたのはルイーダさん。おかげで旅は順調だった。
「そうだね。今から挨拶に行ってくる」
家の前の、アリアハンを東西に走る大通りを横切って、ルイーダさんの店に向かう。
この大通りを東に行けば、町の端にリュッセの居る教会がある。チッタの家は私の家からそう遠くない、町の西側。カッツェの泊まる宿もうちの近所。誘ってもいいかな、と思ったけどやめておいた。皆それぞれ羽を伸ばしてるだろう。
ルイーダさんの酒場は、相変わらずにぎわっていた。冒険者や船乗りがメインだけど、街の人もいなくはない。
「リッシュじゃないか」
「あれ? カッツェ何してるの?」
「酒場だから酒のみに来てるのさ。アンタは?」
「私はルイーダさんにお礼を言いに。カッツェとか紹介してもらったし」
テーブルに居たカッツェとすこし話してから、私はカウンターに向かう。ルイーダさんは相変わらずの美貌で、すこし気だるい感じが色っぽい。けど、今はカウンター越しに話しをしている女の子の相手にちょっとうんざりしてるみたいだった。
女の子は、ピンクの髪をポニーテールにして、青いベストに白いちょっと変わった感じのズボン。背は低め。結構可愛い顔立ちで、黒くて大きな目が印象的だった。歳は私とそんなに変わらなさそう。必死にルイーダさんに話をしている。
「おや、リッシュじゃないか。帰って来たのかい?」
「また出るけどね。……取り込み中ならまた来るよ」
「いやいやいや、いいんだ」
「良くないよ、お客さんでしょ?」
「なんていうかなあ」
ルイーダさんはふわっとした紫の髪の中に手を入れて、ごしゃごしゃと頭をかいた。とってもめんどくさそうな表情をしている。
「旅に出たいっていうんだ」
「へえ。このご時勢に大変だ」
ため息交じりのルイーダさんに私は苦笑してみせる。
「貴女は旅に出てるんですか!?」
「え? うん、まあ」
女の子の突然の質問に、私は思わず頷く。ルイーダさんが「あっちゃー」と小さく呟きながら顔を覆った。
「歳なんて関係ないじゃないですか! この人もそんなに歳変わらなさそうです!」
「あー」
ルイーダさんは「なんていうかなあ」とかいいながら、女の子と私を見比べた。それから私を指差して、
「コイツは戦う術を持ってる。お前は持ってない。だからダメだ」
「そんなの横暴です!」
「……話が見えない」
女の子はティックという名前で、「世界を股にかける商人」を目指しているらしい。で、世界を股にかけるためには、旅に出なければならない。だから仲間を探している。話をまとめるとこういうことらしい。
「却下」
押し切られた形で、ティックと共にカッツェに話をしにいくと、カッツェはあっさりと返答した。
「身軽に旅ができて、しかも互いに守りあえるのはせいぜい今の人数くらいだろうよ。この子、自分の身を守れないんだろ? 論外」
「ごめんね、連れてけない」
あまりに素っ気無い返事に、私は思わず頭を下げつつ謝った。ティックは暫く頬を膨らましていたけど、やがて「もういいです」といって店を走り出て行った。彼女の出て行った店のドアを見て呆然としていたら、カッツェが私の肩を軽く叩いた。
「商人はキャラバンに同行するっていうのが一番いいんだ。商売の仕方や、他の町や村の顔と上の人のつながりとか理解できるし、自分の顔つなぎにもなる。アタシたちについてくるよりいい方法があるんだから、心配してやらなくていいさ」
「そうなの?」
「ああ、気にするな」


さて、商人ちゃん登場です。
ティックちゃんです。

パーティーメンバーは小さい「ツ」を入れるのが個人的な制約になっておりまして、結構名づけに困りました。で、適当につけました。
投げやり気味。
■現在、BS2で「スカイ・クロラ」の宣伝見てます。
空がきれいです。
でも、私は森センセの小説郡で、スカイ・クロラにはついていけなかったクチなので、映画になったとき理解できるか不安です。
いや、べつに理解はしなくてもいいか。

■ランシール 3
ランシールでは、結局神殿が見られなかったから、やることは一気に無くなってしまった。とはいえ、リーダーから「出航は明後日の朝!」と言われている以上、もう少し滞在しておかなければいけない。
「やること、一気になくなっちゃったねー」
チッタが肩をすくめる。
「観光スポットとかもないみたいだしー」
暇をもてあまして私たちは途方にくれる。宿に居続けてもしかたないから、食事をしに外の酒場に出ることにした。
小さな村とはいえ、たくさんの旅人が来ることと夜だということが手伝ってか、酒場はかなりにぎやかに繁盛していた。適当なテーブルを見つけて席に着くと、すぐにお姉さんが来て注文をとっていってくれた。といっても、適当にお薦めのものを持ってきてもらうようにしただけで、コレといった注文はしなかったけど。
「さて、どうする」
「仕方ないし、いろんな人に話でも聞いてみるとか?」
カッツェとチッタはそんな話をして首を傾げて見せた。
「うん。次はアリアハンに行くわけだけど、その先ってコレといって何をするとか決めてないからね。世界を色々回るしかないだろうけど、それだとしても指針はあったほうがいいよね」
目的があったほうが、色々とやる気が出るのは確かだ。それに「行ってない所に行ってみたい」なんて優雅な目的の旅をしてるわけじゃないから、無駄足はしないに越したことは無い。
「とりあえず、現在手がかりになりそうな事といえば、オーブくらいなものですよ」
「そういえば、どんな形してるのかな? 見ればわかるのかな?」
「探しようが無いなあ」
そんな話をしていると、隣を通っていたちょっと身なりのいいおじさんが立ち止まって私たちを見た。
「オーブをお探しなのですか?」
「え? あ! はい!」
思わず背筋を伸ばしてその人を見る。優しそうな顔つきの、壮年を少し過ぎたくらいの年恰好の人だった。
「イエローオーブについて聞いたことがありますよ」
「え!? ホントですか!?」
「ええ。イエローオーブは人から人へ、世界中をめぐっているそうです。例え山びこの笛であっても、探し出すことは難しいでしょうな」
「山びこの笛?」
「オーブと親和性がある笛だと聞きました。どういうものかは知らないのですが」
おじさんは少し照れたように頭をかく。
「でも、少しだけでも情報が手に入ってよかったです。ありがとうございます」
お礼を言うと、おじさんはまた照れたような顔をして、ぺこぺこと頭を下げながら店の奥のほうへ歩いていく。待ち合わせでもあったのか、ついた席の向かい側に座っている人にしきりに謝っているみたいだった。
「情報は手に入ったが、人から人へめぐってるってのは、厄介だね。好事家なんかが手に入れてたら、自分の代では手放さないとか言うかもしれないし、上手い事交渉に持ち込めても、足元見られて吹っかけられるかも知れないな」
カッツェが舌打ちをする。
「オーブって、どんなのか分からないから何ともいえないけど、いくらくらいするのかな?」
「値段は付けられないんじゃないですか? 宝石のようなものでも、貴石か半貴石かで評価は変わりますし、一見ガラクタのようでも、それを熱狂的にあつめている人にとっては宝物になったりしますからね。趣味人や好事家にとっては、値段なんてあってないようなものですよ」
リュッセが首を少し傾げながら苦笑する。
「まあ、行く先々でそういうモノを集めている人の話なんかを聞いて行けば、イエローオーブの持ち主にたどり着くこともあるでしょう」
話はそこで一旦おしまいになった。単純に、目の前に料理が届いたという理由だったけど、どうせこれ以上イエローオーブについて話せることは無かったのだから、結果良かったのかもしれない。

食事を終えて宿に戻る最中、占いをしているお爺さんが道で商売をやっていた。
小さな机に黒い布をかぶせて、その真ん中に大きな透明の球を載せている。水晶かガラスかは、私には分からなかった。
「そこの!」
「はい!?」
お爺さんはいきなり私を指差した。いくらお客さんが居ないからって、いきなり歩いている私を指名することは無いと思う。
抗議しようと口を開きかけるけど、そんな私の態度はお構いなしにお爺さんは続けた。
「わしには見える。もし、旅先で別れた仲間がいるとすれば、その者が希望をもたらすであろう!」
「残念ながら、そんな仲間は居ません」
「未来かもしれん!」
「……」
私は思わず、後ろに居る皆を見た。チッタ、カッツェ、リュッセ。この中の誰かが、いつか居なくなるんだろうか。一緒に旅は続けられないんだろうか。
……次、アリアハンに行ったときにチッタがおじ様から旅に行くなって言われるんだろうか。それとも髪を染めるのをやめたリュッセが、「お父さん」に見つかっちゃうんだろうか。カッツェがカンダタを探しに行っちゃうんだろうか。
「そんな顔なんでするの?」
チッタが困ったような顔で笑いながら、私の背中をばーん!と叩いた。
「きっと最後まで皆一緒だから! おじいちゃんも変なこと言わないでね!」
チッタは占い師のお爺さんに指をびしっと突きつけると、そのまま私の手を引いて歩き出した。
「あんなの、影響されちゃダメだよ。大体ウソだから」
「ウソなの?」
「大体ね。時々本物が居るけど、そんなの素人のわたしたちが分かるわけ無いんだから」
「チッタでも?」
「わたしは魔法使いであって、占い師や時読み士じゃないもん。未来のことなんてさぁーっぱりわかんないよ」
そんな私たちの背後から、占い師に話しかけている声が聞こえてきた。
太くてよく通る声だったから、聞くつもりはなくても聞こえたんだけど。
「私は最後のカギを探して旅をしている。しかしカギを手に入れるには、つぼが必要だという。いったいどういうことだ? つぼにカギが入っているのだろうか……」
歩いていたから、お爺さんがなんて答えたのかは分からなかったけど、なんとなく気になったから覚えておくことにした。


■書くのに飽きてきました。
なんか、ダメなんです。楽しくないんです。
チョット前まで、文章書くのが楽しくて楽しくて仕方なかったんだけどなあ。アウトプット時期が終わったのかも。インプット時期が来たのかも。本読もうかな。
■最近毎日車で「聖剣伝説3」のCDを聞いています。
やっぱり聖剣の音楽が好きだー。

……聖剣3、やり直したいなあ。
ホークアイがすきでした。
アンジェラが大好きでした。

■ランシール 2
ランシールの町は、周りを森林に囲まれたとても静かな場所で、どこに居ても緑の匂いがする。私たちが泊まった宿は目抜き通りに建てられていて、部屋からは表の道路を人がひっきりなしに歩いていくのが見える。
遠くには神殿の屋根が見えていて、アレが噂の「大きな神殿」なんだろうと思う。実際かなり大きそうだ。
「明日の朝には神殿に行ってみよう」
ということにして、私たちは少し早めの夕食を済ませた後はさっさと眠ることにした。

朝は少しもやがかかって神秘的だった町も、太陽がしっかり顔を出せば普通の町に見えてくる。そんな中、私たちは北側にあるはずの神殿を目指して歩いていた。
遠くから見たとき、大きな神殿は確かに町の北にあった。けど、神殿に続く道は無い。
とはいえ、神殿は町の人たちの自慢でもあるらしく「村は小さいけど神殿は大きいよ。
だからおとずれる人はけっこう多いんだ」なんて話を聞くことができた。けど、一方「くそっ! 大きな神殿などどこにもないではないかっ! この村のどこかにあるはずだが私の探し方がまだ甘いのであろうかっ!」なんていらいらしているおじさんも居る。
「つまりは案内の不備だよね」
少しうんざりしたような声でチッタはため息混じりに言う。
「信心が無い人に来られてもこまる、ということなのではないですかね?」
リュッセが苦笑してそんな風に答えた。もしかしたら、アリアハンの教会に居るとき、そういう風に感じていたのかもしれない。
「意地でも自力で神殿を見つけような」
人に聞けば早いのに、と思うけど、カッツェ的には何か意地みたいなのがあるのかもしれない。とりあえずそんなに慌てても仕方ないし(というのも、リーダーの話だと荷積みに少々時間がかかりそうだということだからだ)ゆっくり探してみて、ダメだったらこっそり人に聞くことにして、暫くは自分たちで神殿を捜すことにした。

「ともかく北に行けばいいんだよ。あるんだから」

なんて行き当たりばったり気味のチッタの言葉に、私たちはとりあえず村の北側に向かって歩くことにした。村の北には森が広がっている。森は全くの手付かずということはなく、下草は綺麗に刈られているし、手入れが行き届いた森だった。つまり生活に密着しているということだろう。
とはいえ、私たちはこの森のことは全くわからないわけで、道に迷うのは必至、ともいえる。気軽に歩くことは危険だろう。カッツェが細かくコンパスで方角を確かめながら歩く後ろを、ともかく素直についていくしかない。
「よく見ればいけるかも」
カッツェが唐突に呟いた。
「何が?」
「草。よく見てみな。ちゃんと手入れしてある森だけあって、人が通る場所は踏まれてるだけあって土が固い。注意深く見ながら歩いていけば、必然的に神殿につける」
カッツェが嬉しそうに、に、と笑った。
「なるほど。さすが姉さん!」
カッツェの言うとおり、注意深く見れば地面には微妙な違いがあるように思える。そこをゆっくりと慎重にたどっていくと、やがて視界が開けた。

森を切り開いたのだろう。広い空が見える。
西側には島の中央にあった岩山。
そして目の前には石造りの大きな神殿。
所々蔦が絡まって、森に同化しているようだった。
「着いたー!」
チッタが歓声をあげる。
「どんなところかわくわくするねぇ」
私も嬉しくなってそんなことを言うと、神殿のほうへ向かう。
「ん?」
最初に声をあげたのはカッツェだった。
「どうしました?」
「扉が閉まってる」
カッツェの言うとおり、神殿の入り口はしっかりと扉が閉められていた。
それは簡単に言うと鉄格子、に見える。鉄でできた硬くて細い棒が、何本も並べられている。鍵はしっかりかかっていて、中に入れそうに無い。
「部外者以外立ち入り禁止?」
かくん、とチッタが首をかしげる。
何度か鉄格子の扉を引いたり押したりしてみたけど、ガシャンガシャンと耳障りな音が出るばかりで、中に入れそうに無い。
格子越しに見える内部は、赤い絨毯が敷かれていて、なかなか豪華そうだ。
「んー、入れないなら仕方ない、かな? 誰かに言えば入れてもらえるのかな?」
チッタは名残惜しそうにまだ鉄格子をガシャガシャ言わせている。

と。
入り口の傍から、スライムがこちらを見ているのに気付く。
思わず剣をぬくと、スライムは飛び上がって驚いて、そして細い路地に入っていく。
「追いかけよう」
私はスライムが入っていった路地に飛び込む。
スライムは通路の行き止まりで縮こまっていた。
「きゃー!」
スライムはそんな声をあげる。
「……喋った」
チッタが呆然とした感じでスライムを指差した。確かに喋るスライムなんて初めて見た。
「悪さしてないみたいですし、おびえてますよ?」
リュッセが困惑したような声とともに首をかしげる。
「子ども?」
カッツェも疑惑の眼差しだ。
一方、とりあえず斬られなかったことでスライムはこちらを見た。
ちょっと、小柄、かもしれない。
「ねえ」
スライムはぽよん、と跳ねた。
「消え去り草を持ってるかい?」
「うわホントに喋る」
チッタが眉を寄せる。
「悪い魔物ではないかもしれませんね。時々居るそうですし。見るのは初めてですけど」
リュッセが苦笑する。
「そんなの、居るの?」
「噂では」
私の困惑をよそに、チッタはスライムの前にしゃがみこんだ。
「持ってるけど、欲しいの?」
「ううん、いらない。けど、持ってるなら、エジンベアのお城にいきなよ」
「なんで?」
「昔から消え去り草があるならエジンベアっていうんだよ」
「昔っていつ?」
「知らない」
チッタは立ち上がりながら振り返った。
「エジンベアって、どこだっけ?」
「世界の北西の端っこさ。場所的にはそうだな、ノアニールのずっと西ってとこだ。島国だな」
カッツェが答える。
「遠いね」
「まあ、いつか行くこともあるかもしれないな」
カッツェの言葉にスライムはぽよんと飛び跳ねる。
「じゃあ、そのときは消え去り草をわすれちゃだめ」
そういうと、ぽよんぽよんと跳ねて私たちをすり抜けると、草の向こうに消えていった。
「今の何?」
「明確に言えるのは、喋るスライムってことだね。内容はさっぱり意味不明だったけど」
チッタが肩をすくめる。
「まあ、それより分かったことがあるよ」
私は神殿を見上げた。
「入れないから、戻るしかない」
「なるほど」


■さて、今日で書き溜めてあった分がなくなりました!(またか)
明日からまたがんばらねばーねばー。

こんなにランシール長くしてどうするんだよー(笑)
■現在、BSで押井守特集見てます。
うる星やつらです。なつかしいー。
楽しんでおります。

■ランシール 1
船は何事も無く北東へ進む。
あたりは見渡す限りの青。海も空も青くて、世界中から他の色がなくなっちゃったんじゃないかと錯覚しそうなくらいの青。どこか青しかない世界へ迷い込んだんじゃないだろうか、というような変な錯覚。
時々襲い掛かってくる魔物が、世界は普通だと自覚させてくれる。
もちろん、夕焼けで海も空も金色に輝く時間帯もあるし、夜の闇にあたりが真っ黒に塗りつぶされる時間帯もある。
けど、大体おきている時間帯には青しかないわけで、つまりはそろそろ見える景色に飽きてきた。
「あと一週間、何も見えなかったら退屈で死ぬ」
チッタはぐったりと甲板に座り込んだ状態でそんなことを呟いた。船酔いは何とかなっても、退屈は何ともならない。
「魔物でも来ないかな」
「何を無茶なこと言ってるんですか」
呆れた声でリュッセが返事をする。あまりにも何も無くて退屈なのは皆一緒なはずなのに、リュッセは平然としている。悟りを開くってそういうことなんだろうか。
「陸が見えてきた」
私たちの会話には参加しないで、ずっと遠くを見てたカッツェの報告。その言葉に私とチッタはすぐさまその方向をみる。遠くに、まだ小さく、でも確実にその陸地は見えた。
陸地は大きな大陸、とまでは行かないまでもなかなか大きいようだった。少なくとも、島ではない。中央に高く山がそびえていて、周囲は海に向かってなだらかな稜線になっている。平地が広く、住む場所に困りそうにない。島の南側には大きな森林が広がっているみたいだった。豊かな土地だろう。
「あれが目的のランシールだ。でかい神殿が有名だな」
近くを歩いていた船員さんが教えてくれた。地図で場所を尋ねると、アリアハンの東にある小さめの大陸で、大きな町が一つあるだけらしかった。
「何でも地球のへそ、とかいう場所らしい」
言われてみれば、地図を人間の体だと思えば、おへその部分になりそうな気がしないでもない。
「まあ、あんまり神殿には近寄ったことないから、詳しいことは知らんのだけどね」
「ありがとう」
船員さんにお礼を言う。船員さんは忙しそうに船の中へ歩いていってしまった。

そんな会話から半日もしないうちに、ランシールの港に着いた。リーダーたちはココに残って、次の航海の準備をしてくれるそうだ。次の目的地はアリアハンだから、それだけの準備をする、といっていた。何をどのくらい準備したらいいかなんて私たちにはわからないから、まかせっきりになってしまうのが心苦しい。
「オレらのことは気にせんで、ランシールの村を楽しんできてくれ」
なんてリーダーに見送られて、私たちはランシールの村を目指した。

ランシールは、島の中央にある大きな岩山のふもとに張り付くように発展した、あたりを森に囲まれた静かな村だった。
村自体はあまり大きくない。ただ、神殿に来る旅人はそれなりに居るようで、宿は村の入り口すぐにあったし、宿のすぐそこでは道具屋が色々便利そうなものを売っていた。
「これ、何?」
道具屋の軒先に吊るされた、初めてみる草にチッタが不思議そうな顔をする。
「それは消え去り草よ」
道具屋の店番をしていた若いお姉さんがにっこり笑う。
「消え去り草?」
オウム返しで首を傾げつつ尋ねると、お姉さんは草を一つ手に取ると、おいてあった鉢でその草をすりつぶして見せた。
すりつぶされた草は、どんどん無くなっていく。
全部すりつぶしたときには、鉢の中には何も残っていなかった。
「なくなっちゃった。それで消え去り草?」
チッタが眉を寄せて鉢を覗き込むのをみて、お姉さんは笑った。
「違うよ。なくなってないの」
そういうと、お姉さんは鉢の中に指を入れる。お姉さんの指が、消えて見えた。
「え? 何? 手品?」
「これね、変な草なのよ。生えてるときは普通の草なんだけど、乾かして粉にすると見えなくなるんだ。で、この粉をふりかけると、それも見えなくなっちゃうの」
お姉さんは自分の腕に見えない粉を振りかけてみせる。すると腕が見えなくなった。
「風には弱いから、粉が吹き飛んじゃうと終わりなんだけどね」
ふー、と腕に息を吹きかけてお姉さんは粉を飛ばす。腕が戻ってきた。
「魔物から隠れるのに使うくらいしか用途ないけど、一般市民にはわりと人気あるんだよ。君たちみたいな冒険者には必要ないかもしれないけど。ま、匂いでばれるときもあるけど、そのときはその時」
なかなかバクチめいた豪快なことを言いながら、お姉さんは笑った。
「面白そうだから、いくつか買っておこうよ」
チッタが草を指差す。
「使い道、あんまりおもいつかないけど、面白そうなのは分かる」
「リーダーとか脅かそう」
「何の益があって……」
チッタと私の会話にリュッセが眉を寄せたけど、気付かない振りをしていくつかきえさり草を買う。
「よし、じゃあ、これを使った面白いいたずらを考えてみよう」
「だから、やめときなさいって」
リュッセのたしなめる声を聞こえない振りをして、私とチッタはにやりと笑いあった。


■で?
ホントのところ消え去り草って何なの?(笑)

ちなみに消え去り草、わりと好きです。
なんていうか、意味のなささ加減とかが。

今日は短いですがこんなところで。
■はい、お久しぶりです。
そこそこ元気です。夏場に「元気です!」と断言できるような体調だったことなんて、人生でも数えるほどしかない気がしてきてますので、あまり心配は要らないです。

■不死鳥のたまご
船は再び大陸沿いに南へ進んでいる。
テドンでのことはかなりショックだった。実際数日は重い気分が続いていて、なかなか切り替えることができないで居た。
けど、魔王を倒さなきゃ、と思えるようになったのは良かったのかもしれない。
今までは漠然としていた旅の目的がはっきりしたような気がする。
そう、私は魔王を倒しに行くんだ。
もっともっと強くならなくちゃ。

チッタの船酔いは少しずつ改善の兆しが見えてきていた。
船員さんたちに言わせれば、「慣れた」ってことになる。どんなに酷い船酔いをしていても、1ヶ月もすればたいてい平気になる、というのは本当だったらしい。チッタの顔色がいいのは、やっぱり見ていて安心する。
時折現れる魔物を倒しながら、船は大陸に沿って進む。
「ここらがテドンの岬だな。南にいけば言っていた通り、でかい神殿がある島にたどり着く。地面の凍った寒いところだが、神殿があるのは確実だ。で、この岬から東に行けばランシールだ。最初の予定では神殿だったが、どうするよ?」
リーダーが地図を片手に説明に来てくれた。
「現在地はどの辺り?」
「ここらだな」
リーダーが地図を指差す。今居るのは、テドンの岬といわれていた場所の、少し西側にあたるようだった。
大きな大陸で、北側には砂漠のイシスが広がっていて、西側は森になっている。この中にテドンもあった。東側は切り立った崖と岩山で分断されているけど、ネクロゴンドという場所で、魔王がすんでいる。丁度、大陸は細長い三角形を、細い部分を南に置いたような形をしている。とはいえ、テドンの岬と呼ばれるところはそんなに細いわけでもなく、なだらかな弧を描いている。
岬の南側には、島と呼ぶにはかなり大きな大地があった。東西に細長くて、南北は狭い。船長の話だと、大地が凍りついているほど寒い土地らしい。この中央あたりに、大きな神殿が建っているそうだ。とはいえ、船長たちは遠くから見ただけで、神殿には入ってないそうだ。
このまま東に進んでいくと、ランシールのある大陸に到着する。大きさはアリアハンの3分の1くらい。小さな町と、大きな神殿があるだけの場所らしい。広い草原や森、山々に囲まれた普通の土地だという話だ。そのまた東側にあるアリアハンと、そんなに気候はちがわないだろう。
「予定通り神殿に行こうよ。大地すら凍りつく島に建つ謎の神殿! 神秘的ー!」
チッタが地図上の島を指差す。ニコニコしていて元気そうだ。
「まあ確かに、神秘的ではあるな。……捨てられて随分たってたら、見入りはなさそうだけど。誰が建てた何のための神殿かは知らないんだろ?」
カッツェの質問にリーダーは頷く。基本的に興味が無いから、調べにも行かなかったらしい。
「こういう機会でもない限り、そんな辺境の土地にある神殿へなど、いくチャンスは今後無いかもしれません。予定通り進めばいいんじゃないですかね?」
「そうだね。じゃあ、予定通りここから南下していこう」
「おう、じゃあ進路を南に取る」
リーダーは威勢よく言うと船員さんたちに次々と指令を飛ばしながら歩いていく。
「何か不思議なこととかあったらいいのにね、その神殿で」
「普通が一番だよ、何言ってるんだ」
チッタの楽しげな声に、カッツェがため息をついた。
「普通が一番なら、冒険なんてできないよ」
チッタは言うと、南の空を見る。
「きっと不思議なことがあるに違いないよ」


船は何事も無く南へ進み、やがて遠くに島影が見えてくるようになった。
吹き付けてくる風はどんどん冷たくなってきていて、私たちは何枚も服を重ね着しないといかなかった。
「こんな寒いところ、住んでる人居るのかな」
げんなりして言うと、リュッセは苦笑した。
「少なくとも、過去にはいたのでしょう。神殿が建つくらいですから。もしくは、祭祀のときにだけ滞在する聖地のようなものかもしれませんね。そうであれば、永住はしてないかもしれませんが」
「どのみち、物好きだよね」
「それを言ってはおしまいですよ」
船が進むたびに、島の神殿がはっきりと見えるようになってきた。
遠くからみても分かるということは、かなりの大きさだということになる。
島にたどり着いたときには、どう考えても神殿へは道に迷う可能性はないな、と確信できるほどだった。

島はリーダーが言っていたように、大地は氷に覆われていた。本当に海に近いところには流石に氷はなくて、とても背の低い草が這い蹲るように生えている。島には大きな木なんてものは全く無くて、随分荒涼とした風景が広がっていた。
着いた日は、空もどんよりと曇っていて、ますます寒々しい。
神殿がココからでも大きく見える。思ったとおり、迷うことはなさそうだ。
「じゃあ、行ってきます」
リーダーたちに船を任せて、私たちは神殿を目指す。
迷うことなく真っ直ぐ歩くだけだったけど、いざ歩くと意外と遠い。
けど、その苦労を吹き飛ばすだけの美しい神殿が、そこには建っていた。

がっしりとした石で作られた神殿は、綺麗な装飾も施されている。繊細さと力強さ、どちらも感じさせられる美しい神殿だった。
横にはあまり大きくはないけど、高さがある。
階段は幅が広く、真っ直ぐ上に向かって伸びている。
「そ……外階段!」
思わずがーん、となったけど、それを補って余りある美しさがその神殿にはあった。
「登る?」
「ココまで来たらのぼらなきゃ!」
「……だよ、ね」
諦めて上を目指す。
途中数回休みを挟んで、私たちはついに最上階にたどり着いた。
というか、神殿は最上階と階段しかなくて、つまりは塔のようなものだったのだ、と登りきってから気付いた。登る前に気付いていたら登らなかっただろうから、結果的には良かったのかもしれない。

最上階は不思議なつくりになっていた。
中央には祭壇があって、そこには大きな卵のようなものが置かれていた。
その卵を中心に、金色の台座が6つ、円を描くように等間隔に作られている。
卵の前には、緑の長い髪をした、薄い黄色のローブをまとった女の人が二人、並んで祈りをささげていた。
彼女たちは私たちに気付いたのか振り返る。
鏡に映したように、そっくりな顔をしていた。
「何してるの?」
生きているに違いないのに、どこか作り物めいた美しさをもつ二人が、口を開く。

「わたしたちは、たまごを守っています」
「たまごを守っています」
「世界中に散らばる6つのオーブを、金の台座に捧げたとき……。伝説の不死鳥ラーミアはよみがえりましょう」

彼女たちはそれで話は終わった、といわんばかりに卵のほうを見て、また祈りを始める。
「どういうこと?」
尋ねても返事は無い。
私は思わず皆を振り返る。皆は困ったように首をかしげたり、肩をすくめて見せた。
「わかんないけど、でも、とりあえず見つけたら持って来てあげてもいいかもね」
「テドンの牢でなくなっていた方が、オーブを渡したかったとか書いていませんでしたっけ?」
全員で顔を見合わせる。
「きっと世界に点在してるんだろう。聞いた事もない宝って可能性もある。いいね、そういうの」
カッツェがにや、と笑った。
「テドンの彼から受け取るということは、供養にもなるでしょうし、オーブを探す、ということに異存はないです」
「じゃあ、旅をしているときに一緒に探してみよう。全部で6つだよね」
私は卵を見上げた。大きな卵だ。
「アレから鳥が生まれるんだよね。大きそうだよね」
「伝説だからねえ」


■友人に「テドンよかったよ」と言ってもらえてちょっと嬉しいです。
褒めてもらうの、大好き。
■体調はどうですか、とか自問自答すると、あんまりよろしくありません、と答えます。
まあ、夏はね、いつも体調悪いから。

■テドン 2
屋根の穴から降り注いでくる太陽のまぶしさで目が覚めた。
穴から見える空は青くて、雲が流れていくのが見える。今日もいい天気になりそうだ。
「おはよぉう」
半分眠ったような声のままチッタは大きく伸びをする。
「揺れないベッドってステキだわぁ、このありがたさを忘れちゃ駄目だねー」
あくび交じりの声に苦笑する。
「ご飯食べて、どうして家を直さないのか聞いてみようか」
そんな話をしていると、ドアがノックされた。
「皆さん、おきてますか?」
少し硬い、リュッセの声。
「おきてるよー」
返事をしてから、部屋の中を見る。入ってもらっても大丈夫そうだ。
「いいよー、入ってきてー」
リュッセは一度ドアを細く開けて、その隙間から中を覗いて確認してから、ゆっくり部屋に入ってきた。表情がこわばっていて、心なしか青ざめているように見える。
「何だい、朝から調子悪そうな顔して」
カッツェが片眉を跳ね上げた。それから大きく息を吐き出す。
「宿の人が居ません」
「は?」
リュッセが何を言っているのか分からなかった。
言っているほうも軽い混乱状態なのか、そこで一度視線をぐるりと宙にさまよわせてから、もう一度私をみる。
「ですから、宿の人が居ないんです。いや、宿の人だけじゃなくて」
リュッセはそこで、雨に汚れた窓を見やった。つられて外を見る。明るく晴れた広場が見える。けど、朝だというのに人が一人も歩いていない。いくら昨日の夜、宵っ張りな人たちが沢山歩いていたからって、全員で寝坊しているとは思えない。
「起きてからしばらく外を観察してたんですけど、誰一人として広場を通っていかないんです。朝だというのに、変でしょう? それで宿の中を見て回ったんですけど、宿にも誰も居なくて」
「……何かあったのか?」
「深夜に物音などは無かったと思うのですが」
私たちは顔を見合わせる。
「ともかく、村の様子を見て回ろう」

手始めに宿の中を見て回る。リュッセの言うとおり、宿の中には誰も居ない。念のため厨房なんかも見て回ってみたけど、中は荒れ果てていて、戸棚は倒れているし食器類は割れて床に散乱しているし、と酷い有様だった。日の光のしたでみると、床には埃が積もっている。私たちの足跡だけが残っていた。
「なんか……打ち捨てられて随分たってる感じがする」
チッタがぼそりという。私はぎくしゃくと頷いた。
「誰も、居ない、のかな」
私の呟きに、誰も答えない。

明るい太陽の下で見るテドンは、酷い有様だった。
草は伸び放題に伸びて、家という家はどこかしら壊れている。一番酷いのは教会で、屋根も壁も半分以上崩れ落ち、更に火事を起こしたあとがあった。時折空を飛んでいく鳥と、吹きぬける風に動く草以外、動くものは何も無く、物音もしなかった。
「ねえ、何で?」
誰に聞くとも無く声に出す。
「昨日、私話をしたよ? 空を飛びたいって女の人と喋った! 魔物が来たら撃退するっておじいさんとも! ねえ、何? 何で!?」

何か、ちりちりしたものが、胸の奥にある。
泣きそうだ。
なんとなく、何があったのか、本当は分かってる。
けど、認めたくない。
だって。
皆幸せそうだった。

「本当に、もう、誰も居ないの?」
「探してみましょう」
呟きに、リュッセの優しい声。
頷いて、村を見てまわる。
無事なものは何一つ無い。
牢屋ですら壊されている。昨日の夜は、男の人が一人中に入れられていたのを見た。けど、そこにはもう随分長い間風雨にさらされていたとしか思えない骨が転がっているだけだった。
「何だろう」
チッタが、その骨の傍の壁を見る。
「何か書いてある……何だろ。えっと? 『生きているうちに オーブを渡したかったのに』?」
チッタはそこで立ち上がる。
「何か、心残りがあったんだね。……オーブが何かわからないけど……かわいそう、もっと早く来てあげられれば良かったのに」

ココは魔王の居場所から一番近い村。
多分、
たったそれだけの理由で、魔物に滅ぼされたんだ。
普通に暮らしていただけなのに。
夢を見て、元気に、
ただつつましく暮らしていたのに。

胸の奥の何かちりちりしたものが、一気にはじけていくような感覚。

私はただ、大声を上げて泣いていた。

何もできなかった。
間に合わなかった。
どうしようもなかったのかもしれない。
それでも悔しかった。

今までぼんやりとした輪郭しか無かった、
魔王に対する感情が、形をはっきりさせた。
やり場の無い怒り。
初めて感じる、憎しみ。

涙は次々あふれ出たし、しばらく泣き止むことはできなかった。

リュッセの静かな祈りの言葉が聞こえる。
風に乗って、村全体に広がっていく。
それは長い間続き、
空へと吸い込まれていった。


■人気投票終わりました。
当初は1位が100票とるまで、というつもりではじめたんですけど、予想外にも2日3日くらいで達成してしまい、いやそれはないやろ、ということで2位が、とか思っていたら1位と2位が「なんかの代理戦争ですか?」というほどの接戦アンドデッドヒートでして、すぐに100票にたどりついてしまったので、3位が100票とるまで、とか思いましたら、途中から3位と4位もデッドヒートをはじめまして、見ているこちらは「おいおいどうするよ」とか内心あせっておりましたら、ラッキーにも3位が100票とったとき、4位とちゃんと票差がありまして、まあ、よかったな、と。
しばらくしたらコメント返しをします。
参加してくださった方、有難う御座いました。

現在は唐突に思い浮かんだヘンリー君の話を書こうかなあ、とか思いつつそれより拍手だな、とか我に返る今日この頃です。
拍手は暑中見舞いだから、引き下げる時期はわりと早いのです。
……暑中見舞いっていつまで出せるんだっけ?
立秋? 盆まで?
■BGMをベートーベンの「運命」でお送りしております。
いやまじで。
あ、終わった。
ええと、撮ってあった「N響アワー」を流しながら、という意味です。

おかしいなあ、まだカラヤンが出てこないなあ。
出てくるはずだったんだけど、間違ったかなあ?

最近、のだめの影響でオーケストラに興味が湧いてます。
好きな曲はサンサーンスの「動物の謝肉祭」です。

■テドン 1
船は静かに川岸に泊められた。テドンはすぐそこで、家々が見える。
「俺たちは船の見張りもあるから、ここでキャンプをして待機してます。姐さんたちはゆっくりテドンで骨休めしてきてください」
「気をつけてね?」
私たちは船員さんたちに見送られながら、テドンに向かった。

テドンは、夜だというのに人が沢山外にでて話をしたり空を見上げたりしていた。これまでの町や村と違って、夜に外を出歩く習慣があるんだろうか。
「テドンの村にようこそ」
入り口にいた男の人が私たちに気付いて声をかけてくれた。適当に挨拶を返して、私たちは村の中央に向かう。村の人たちは気さくで、次々に私たちに挨拶をしたり、色んな世間話を聞かせてくれたりする。
「魔王は北の山奥ネクロゴンドにいるそうです。近いせいか、ここまで邪悪な空気がただよっているように感じますよ」
なんていうことを言うお兄さんも居た。念のため、地図で場所を聞いてみたら、地図で分からなかった、切り立った崖で隔てられている大陸の内陸部分をネクロゴンドというそうで、灰色に塗ってある地図を見てお兄さんはちょっと困ったように笑っていた。
「魔法はネクロゴンド」
その言葉をよく覚えておこうと思う。
「たとえ魔王がせめて来ようとも、わしらは自分たちの村を守るぞ!」
近くを通っていたお爺さんが、私たちの話をきいていたのか、元気にそんな声をを張り上げていく。勇敢なことだと思う。やっぱり、強い魔物や魔王が近くにいるとなると、普通に生活している人の気持ちも代わってくるのかもしれない。実際、村の人たちの興味の大半は、魔王がすむというネクロゴンドに集中しているようだった。
鎧を着込んだ兵士さんは、私たちの地図を見ながら、説明してくれる。
「テドンの岬を東にまわり陸ぞい、川を上がると左手に火山が見える」
指し示されたのは、アッサラームから南西、くらいの位置にある川と、その河口付近にある大きな山だった。
「火山こそが ネクロゴンドへのカギ。しかし、よほどの強者でもないかぎり 火口には近づかぬほうが身のためだろう」
確かに、その火山を越えなければネクロゴンドには入れなさそうだった。なにせ大陸はほとんど、切り立った崖に囲まれているからだ。
けど、火山といえば、お父さんが魔物との戦いの末に落ちたという場所。
その火山がこの火山かは、分からないけど、きっと今の私ではまだまだどうにもならないだろう。
いつか、火山にいけるようになるだろうか。
そしてそれは近い未来だろうか。

「空が飛べたら素敵なのにね」
なんてお姉さんもいたけど、私にはその感覚は分からなかった。ただ、「魔王におびえることなく、どこへでも好きなところへ行ける」という気持ちはよくわかった。この村の人たちは、生まれた瞬間から近くに魔王が居る恐怖と隣り合わせだ。
そしてそれはきっと、とても……恐ろしいことだ。

「変ですね」
村はあまり大きくないから、歩いて全体的なものを見ていたときにリュッセが呟く。
「何が」
「ほとんどの建物が、どこかしら壊れています。教会なんて、半分以上壊れてましたよ。屋外に牢がありましたけど、それも扉が半分無くて、兵士がふさいでいたくらいでしたし」
「それになんとなく、生活感が無い。何だか妙な違和感がある」
リュッセの言葉を引き継ぐようにカッツェがぼそりという。
「村の人たちも、元気に話しかけてくれるけど、なんとなく生気がない感じ」
ようやく顔色も戻りかけたチッタも首をかしげる。
「……確かに、そうだよね」
気付かない振りをしていたけど、やっぱり皆も気にはなっていたみたい。
村は確かに人が沢山いて、一見活気に満ち溢れている。けど、村は共有スペースであるはずの広場にまで草が生い茂っているし、建物はリュッセの言うように壊れたまま放置されている。
「気になるけど、夜も遅いから、明日の朝から調べてみよう」
「そうですね。チッタもしっかり眠ってもらったほうが良いでしょうし」
「うん、揺れない地面と揺れないベッドのありがたみをかみ締めたい」
それで話はまとまって、私たちは村に一軒しかない宿に向かった。
宿もやっぱりあちこち壊れていて、屋根はあるけど壁の一部がなかったり、床がはがれたまま放ったらかしになっていたりしている。
「もしかして、大工さんが居ないとか?」
「それにしたって、自分で直せる範囲は直すだろうよ」
うっすら埃をかぶっているベッドの、埃を払いながらカッツェは眉を寄せる。
「布団、微妙に湿ってる」
触れた毛布が、少し重い。
「壊れてから随分たってますよね」
ぼこりとなくなっている壁の断面を見て、リュッセは首をかしげる。
「変なの」
チッタはばふ、とベッドに仰向けになった。アリアハンに居た頃のチッタなら、こんな建物やベッドで眠るなんて考えられないけど、旅に出て結構図太くなったのかもしれない。
それがいいことか、悪いことかは分からないけど。
……チッタのおじ様的には悪いことで決定だろうけど。

ともかく、どうしようもないのは確実だから、私たちは諦めて眠ることにした。


何か、悲しい夢を見たような気がするけど、起きたときには忘れてしまっていた。


■BGMをウィンナーワルツでお送りいたしております。
春の声?
まあ、よー知らんのですが、有名な曲ですわ。

か、カラヤンは気のせいだったのだろうか。

ドラクエと全く関係ない話しかしてないな。
そんな前枠後枠でも良いじゃないか。
しかも短いな。前後入れても2419字だ。
まあ、いいか。
■毎度どうも。
今日は素敵なドラクエのマップサイトを発見してほくほくです。
これでもう、書いてる途中に迷いません!
FC画像が懐かしいです。

お世話になっているサイトさんがドンドン増えてきました。
書き終わったときに勝手にスペシャルサンクスとしてご紹介の予定です。
実はDQ5のとき、説明を忘れてたという苦い思い出があります。

今度は忘れないようにしよう。

■海を越えて
ポルトガの南にある灯台は、真っ白な壁が印象的な……塔みたいな建物だった。とはいえ、床はしっかりしているし、壁にある窓は小さくてそんなに絶景は見えないし、何より壁が無い階が無かった。
最上階は、さすがに遠くまで光を伝えるために壁がない場所もあったけど、そんなところに近づく必要性は全く無かったから、結論を言うと怖くなかった。多分、この世で一番怖くない塔。
最上階には仕事に誇りを持ってますという感じの、眼光鋭いおじさんがいて、世界地図を片手にこのあたりの海の話や、世界のことを聞かせてくれた。やっぱり、ココからだとテドンを目指してみるのがいいらしい。テドンの岬から東に行けばランシール、とか、航海前にリーダーと会議した話の再確認になった。

で、現在私たちはその忠告に従って、大陸にそって船を南に進めている。
時折、空からヘルコンドルとかいうでっかい鳥が襲い掛かってきたり、大王イカが船に絡み付こうとしてきたり、しびれくらげが甲板に上ってきて襲ってきたりするけれど、本当にそういうのはマレだし、襲い掛かってきてもちゃんと退治できるから、結構安全かつのんびりとした船旅を楽しめている。
まあ、景色はずーっと海、海、海、空、時々魔物、遠くに陸地、というパターンから変わらないから流石に飽きてくることもあるけれど、まだまだ船旅は始まったばかりで、基本的に何もかもが珍しくて楽しい。
けど。

「大丈夫?」
私は甲板の、日陰になる部分で丸まって横になっているチッタをの傍に座る。
「うぅ……大丈夫じゃない……」
「キアリーとか、ホイミとか、唱えましょうか?」
「……そんな魔力は魔物が出てきたときに備えて蓄えといて……」
私やリュッセの言葉に、チッタは力なく呟くように返事をする。
チッタは現在、絶賛船酔い中だ。
船が動き始めた最初こそ元気だったけど、次第に顔色が悪くなってきて、今やベッドや床にへばりつくような状態になっている。流石に魔物が出てくると気力を振り絞って呪文も使って一緒に戦ってくれているけど、基本的には「もうだめだ」という感じでいる。
「本当に気分が悪かったら、呪文も視野にいれてくださいね」
リュッセはチッタを扇であおいであげながら眉を寄せた。
「リュッセ君だって海弱いはずなのに、なんでそんなに元気なのよぅ……」「僕は水全般に濡れるのが怖いのであって、海が怖いわけではないですし、第一、船の上ならそんなに全身濡れることはありませんし」
「うぅ……不公平だぁ……」
チッタは恨めしそうな眼をリュッセに向けた。
本当のことを言うと、リュッセもいつだったかの魔物との小競り合いのとき、マーマンの攻撃で思いっきり頭から水をかぶってパニックになっていたりしていたけど、もうチッタの記憶の中からそれは軽く消去されているみたいだった。
「まあ、なんにせよ安静にしてな。そのうち船の揺れにもなれて何とも無くなる」
カッツェがチッタの丸めた背をさすってあげながら言う。
「どのくらいでぇ……?」
「一月くらいかな」
「……それまでに衰弱して死なないようにするぅ」


船の上は活気にあふれつつ、どんどん南に進む。
「そろそろ、陸に教会が見えてくる。そこを目印にもちっと南へ行って、二本目のでかい川をさかのぼればテドンだ」
リーダーが望遠鏡と地図を持って説明に来てくれた。チッタは地図を見るのも嫌なようで、甲板にうずくまったまま起き上がろうとしない。仕方ないから三人で地図を覗き込む。説明によると、今はその教会の建つ草原の端っこあたりに差し掛かったあたりらしい。貸してもらった望遠鏡を覗き込むと、確かに小さく遠く、教会が建っているのが見える。
「明日の夜にはテドンにつけると思う。そっちで倒れこんでる気の毒な嬢ちゃんに、久しぶりに揺れないベッドで眠ってもらえるぜ」
船長は気の毒そうな目で、チッタを見た。
「俺も船に乗りたての頃は船酔いと戦ったもんさ。酔わなくなったら一人前の海の男だぜ」
「一生男になんてならないもん」
チッタはぐったりとした声で、けど、はっきりとそう言い切った。

川が見えたところで、船を泊める。ここからは川をさかのぼるということで、小さな船をおろしてそれに乗っていくそうだ。小さいといっても、船には私たち以外に二人、船員さんが乗ってくれる。船を動かしたり、テドンまでの案内をしてくれるそうだ。
小船は川をどんどんさかのぼる。左手側(東、になる)は高く切り立った岩山がそびえていて、その先がどうなっているか分からない。船員さんたちの話だと、こういう切り立った崖や岩山が大陸の周りを取り囲んでいて、誰もこの大陸の内側、イシスの南側については詳しく知らないそうだ。そういえば地図も、灰色一色で塗られていたっけ。「多分ずっと岩山ですよ」なんて船員さんたちは笑っていた。
右手側はうっそうとした森が広がっている。木々の間にはあまり光も差し込まず、薄暗い。聞いた事のない鳥の鳴き声が、時々した。
川をさかのぼるうちに、どんどん陽は傾き、やがて夜が訪れる。

川にせり出したような平地に、町があるのが見えてきた。
灯りがともっているようだ。
「いい宿があるといいね」
私は後ろで青い顔をしてため息をつくチッタに話しかける。チッタは面倒そうに一度頷いただけだった。たぶん、疲れはピークに達している。見ればリュッセも顔色が良くない。考えてみたら、この小船は水が近い位置にある。押し黙って、じっと空を見上げて耐えているようだった。
「皆船向きじゃないな」
船員さんたちは、残念そうにため息をついた。


■人気投票、もうちょっと続きます。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html

今月中には予定票数に達しそうな気がします。

あ、WEB拍手ですが、住んでる地域が梅雨明けしたら、去年のを使いまわして暑中見舞いバージョンにします。

……拍手でやりたい企画があるんですけどね。まだまとまらないの……。
■皆様に悲しいお知らせがございます(笑)
書き溜めてある分は、今日のがラストでございます。
明日からまた自転車操業!
毎日更新じゃなくなったらごめんなさいね。

なんか最近忙しいのですよ。

忙しいのを言い訳にしちゃいけないんですけどね。

■出航
準備は昨日のうちに終わらせてくれていて、私たちはその気になればすぐにでも出発できるということだった。
「私は高いところ全然駄目だし、できたら塔には登りたくないんだけど」
そう前置きしてからリュッセの顔を見上げる。
「船、大丈夫?」
「乗ったことがないので何ともいえないのですが、直接水に触ったり泳ぐわけではないですから、まあ、多分。あまりいい気持ちはしませんが」
リュッセは冴えない表情で答える。声のトーンも低くて、全然乗り気ではないのがありありと分かった。
「まあ、船の中心あたりにいれば大丈夫でしょう」
まるで自分に言い聞かせるかのような言い方で答えると、リュッセは軽くため息をついた。
「リッシュだって、苦手だ何だといいながら、それでも塔をいくつか制覇したでしょう? 僕だってどうにかなりますよ」

「で、どういう風に海を行くんだ?」
元海賊のリーダーが、私を見る。
「船長さんに任せます」
「船長はあんただ。俺は船を動かす野郎どもをまとめるだけさ。決定権はあんたにある。これは全員納得してるから心配いらねえ」
「んー」
私はリーダーの広げた地図を見る。
何本か線が引かれていたり、いくつか点が打たれている。航海するためには必要なものなんだろう。

ポルトガの対岸は大きな大陸があって、中部から北部にかけてイシスがある砂漠が広がっている。ポルトガの東はロマリア。つまり大陸と大陸に海が挟まれているように見える。
「東にはいけないね」
「ま、そうだな」
リーダーは苦笑する。
「ココには何があるの?」
丁度ポルトガの真南に、しるしがつけてあった。
「そこは灯台だ。海のことを良く知ってる男が住んでる」
「じゃあ、船旅はほとんど全員初めてだから、最初はここに行ってみようか。様子見で」
「そうだね、水に圧倒的に弱いやつもいるし」
カッツェが頷き、リュッセが「否定しません」と苦笑する。
「とりあえず、陸地が見えてたら安心する気がする」
と、チッタが眉を寄せる。少々不安を感じているみたいだ。
「あ、一度アリアハンにも戻ろうか? あんまり報告に行ってないし」
「それもそうね、わたし、アリアハンのお城ってまだ入ったことないから行ってみたいかも」
チッタはさっきまでの不安顔なんてどこ吹く風で目を輝かせる。
「じゃあ、こういうのはどうだ」
リーダーは灯台のところに指を置くと、それを動かしながら説明を始めた。
「まず、灯台へ行く。そっから大陸に沿って南下だな。あんたら、色んな町や村も回ってみたいんだろ?」
「うん、どこに情報があるか分からないから、できるだけ寄りたい」
「じゃあ、この南にある川をさかのぼって、テドンの村にも寄っとこう。で、また南下して」
リーダーの指は川の突き当たりにある村を指差して、それから指を川の入り口まで戻して、再び大陸を南下し始める。丁度大陸の一番南に突き出したあたりで、指は大陸を離れてどんどん南へ行く。
「この岬から真南に進むと、氷に覆われた大地があるんだ。ここに、何のためにあるのか分からねえ、でかい神殿があってな。遠くからは見たことあるんだが、俺たちは上陸した事はない。行くか?」
「不思議! ステキ! 絶対行こう!」
チッタが即答する。
「じゃあ、この島だ」
リーダーの指が、大陸の随分南にある、東西に細長い島を指差した。ココにその大きくて不思議な神殿が建っているとは、ちょっと思えない。船で行くにしても、随分不便そうだ。
「で、ココから進路を北東に取る。この大陸にランシールって街があるんだ。ここもでかい神殿で有名だな。俺らは神殿なんて用がないから行かねえけど。で、ココから東でアリアハンだ。とりあえず、最初の航海はこんなところだろう」
確かに、さっきの島の北東に大陸といっても大丈夫そうな大きな島がある。
「……世界の半分くらい回ってますよ」
リュッセが苦い顔をする。まあ、リュッセにしてみればかなり死活問題かもしれない。
「でも、テドン、神殿、ランシール、と寄り道してるからな、楽なほうだ」
「……そうですか」
怖いものは怖い、その心情は痛いほど理解できるから、思わずリュッセの肩をぽん、と叩く。まあ、それ以上どうすることもできないわけだけど。
「じゃあ、とりあえずそういう航路でお願いします。で、アリアハンに着いたらその後のことはまた考えましょう」
「おう、分かったぜ」
リーダーは、にっと笑うと、腕を振り上げた。
「野郎ども! 帆を揚げろ! 俺たちは世界を救う旅の手助けをするんだ! 気合入れろ!」
リーダーの叫び声に、威勢のいい声がいくつも返事をする。

「なんだろう、物凄く恥ずかしい」
チッタの呟きに、思わず私は頷き返した。


■人気投票まだやってますよ。
思ってたほど、予定票数まで行きません。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html

イチとリッシュの戦いが今は面白いですよ。


■さっき、心臓のあたりがすげー痛かった。
のた打ち回るような感じで。
なんだろうなあ。痛かったなあ。
■い・や・あー、昨日は全く記憶の無いかんじに、ばたーんと寝てしまいました。
10時半過ぎから2時ごろまでの記憶が御座いません。
全く御座いません。
私はいつ寝たんですか?
くらい記憶が御座いません。

ごめんなさいね、昨日はアップできなくて。

■船と海賊
次の日、お城の前には本当に大きな船がどーんと泊まっていた。
「え、これですか?」
船のところに立って待ってくれていた大臣に思わず尋ねる。
「ええ、この船です」
「たったあれだけの胡椒で、こんな?」
「ポルトガでは胡椒一粒が黄金一粒に匹敵しますので、かなりの額をお支払いいただいているのですけど」
大臣は苦笑する。
「でも、それにしたって……だって私たちがどの程度胡椒を持ってくるかなんてわからないわけでしょう?」
「まあ、そうなんですけどね。……ええとですね、この船、少々古いでしょう?」
「確かに、新しい感じはしないね」
カッツェが船を見て頷く。確かに、新品です!というような船ではない。
「でも、それでも大きさから言うと……」
「実は王が最近新しい船を作りまして、この船は古いとはいえ、まだ新しいといいますか……」
「つまり、新しいのが来たから、どんなに大きくても古いものはいらない、と?」
「そういうことでございます」
「欠陥とかがあったわけじゃないだろうね?」
「ええ、ソレはもちろん。……作ってみたらイメージと違った、と王が……」
「やっぱ我侭だ」
チッタがぼそりと言うと、大臣は困ったように笑った。
「ともかく、多少古くはありますが頑丈ですし、内装も凝ったものになります。お好きなようにお使いください。食糧や水は積み込み済みです」
大臣の言葉に私は頷く。
「それで、船を動かすクルーなのですが」
その言葉と共に、兵士2人に連れられて、数人の男の人たちが船の前までやってきた。
「この者たちをお使いください。船の扱いには人一倍詳しく、また確かです」
「ありがとうございます」
「では、貴女のたびに、神の祝福がありますように」
大臣はそういうと、兵士たちと共にお城の中に入っていった。

「ええと」
クルーの人たちは置き去りにされた形で、少々困ったような声を上げた。
「あんたがリーダーか?」
クルーの人たちの中でも、一番偉い感じがする男の人が私を見る。とりあえず、頷いて見せた。
「そうか、若いのにすげえな」
「あの、私たち、船は初めてで。よろしくおねがいします。でも……その、お給料とか、どうしたらいいですか?」
「飯や水をくれれば、給料はいらねえ」
クルーリーダーが断言すると、後ろにいたほかの人たちもいっせいに頷いた。
「……怪しい」
カッツェが鋭い目つきで彼らを見ると、リーダーがぼそり、と切り出した。
「俺ら……実は海賊なんだ」
「はああ!?」
思わず全員でそんな間抜けな声を上げてしまってから、まじまじとクルーを見る。
「いや、でも正義の海賊? そういう感じでな。悪い奴らからしか奪わないし、命は取らない!」
「まあ義賊ってことだな」
カッツェはあまり追求しないことにしたらしい。すごーく広い意味合いでは同業者だからかもしれない。
「まあ、そうは言っても、悪いやつなのに偉いやつ、ってもの中にはいるだろ? そういうやつが海賊の取締りを要請してな、俺らは捕まった、と」
「……間抜け」
ぼそりとカッツェ。クルーの方々は苦笑するだけで、別に怒りはしなかった。
「まあ、牢に入れられた、と。暫くしたら、お前らの船で無料奉仕するつもりがあるなら、牢からだしてやろうって話が出てな」
「よくそんな話になりましたね」
「牢に入れといたら、少ない飯とはいえ食費がかかるし、船を渡してクルーなしってのは不親切な話でイシスから文句出るかも知れねえし、だったら、腕は確かなんだからこいつら使おうってことらしいやな」
リーダーは自嘲気味に笑って見せた。
「とはいえ、俺らは海賊だ。海に居なきゃ死んでんのも同じ。海に戻れるならどんな悪条件だってのむさ」
その言葉に、後ろに立ってるクルーたちが雄たけびを上げる。
「んー」
私は暫くそんな彼らを見て、どうしようか考える。
カッツェとリュッセは「好きにしろ」という態度。
チッタは楽しそうだ。
「お給料がないのは申し訳ないなあ」
「美味い飯と美味い酒があれば俺らは文句ねえ。船で海にでられるんだ、文句はねえさ!」
「実際、僕たちだけでは船がうごかないのですから、ココはご好意に甘えるしかないですよ」
リュッセが私に言う。確かにソレはそうなんだけど。
「一つお願いがあります」
「なんだい?」
「この船で海賊行為はしないでください。立ち寄った町や村でも」
「おう! 分かってるって! あんたたちは世界を救う旅をしてるんだろ? その顔に泥を塗ったりしねえ! だから俺たちを海に連れ出してくれ!」
答えを聞いて私は頷く。
「じゃあ、よろしくお願いします」


■さあ、またそろそろ書き溜めてあった分がなくなってきています。
基本的にがーっとかいて、がーっとアップして、あら少なくなってきたわ、と思ったらがーっと書く、という感じでこの駄文は成り立っています。

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