■はい、お久しぶりです。
怒涛の仕事が少々楽になってきましたので、生活に余裕が出てきました。
が、精神的にはまだちょっと余裕ないです。むしろどんどん欝っぽく。

とはいえ、とりあえず、久しぶりに1回分かけたのでアップします。
短いですけど。

一ヶ月ぶりくらいなのですね。
すみませんなー。

■前回(約一ヶ月前)のおさらい
ジパングから北へ行ったところにある小さな村ムオルで、ポカパマズと呼ばれていた父。その足跡を知りつつ、形見ともいえるかぶとを手に入れた。
そんな感じ。

■氷の島の老人
船はムオルを後にして、北東に進む。
地図の右側、つまり世界の東側には、南北に伸びた大きな大陸がある。北側は中央から東側に向けてたくさんの川が入り組むように流れている。形は、大体丸。南側はスライムをさかさまにしたような形で、北に行くほど東西に広く、南側は尖った岬になっている。その北側と南側の大陸は、細い陸地でどうにかこうにか繋がっている。けど、多分北と南ではそれほど行き来はなさそうに思えた。
何せ南側の大陸は、その大半を岩山がぐるりと囲んでいて、内陸には進めないようになっているからだ。地図では、その内陸の部分も描かれてはいるけど、どうやってそこへたどり着いたのか、想像がつかない。
とりあえずの目的は、その南北に伸びる大陸の、北側にある小さな村だった。
川をさかのぼったところに、素朴な村があるらしい。
北の海はとても冷たい風が吹いて寒い上に、時折どこからともなく氷の塊が流れてきていたりしてかなり危ない。しかも、大陸の東側に向かうために通った、大陸の北側(何だかややこしい説明になってしまってるけど、陸地の名前も分からないから仕方がない)は、大小さまざまの島が点在していて、船で通るのはなかなか大変だったそうだ。
私は乗ってるだけでよく分からなかったけど。

大陸の北側には氷で覆われた大きな島があった。
最初は何もなさそうだから放っておくことにしていたんだけど、通るときに何気なく見ていたら、煙が上がっているのが見えて、私たちは船を停める。何かが居るのは間違いなさそうだった。
「どうする?」
リーダーは首をかしげて私を見る。その表情は困惑しきっていて、かなり迷っているようだ。
「俺が思うに、遭難者じゃねぇと思うんだ。付近に船の残骸とかねぇし。もし船の残骸がなくなるくらい昔の遭難者だったら、普通生きてねぇし」
「アレが幻とかいう可能性はないかな?」
チッタが首をかしげる。
「そういうのは、アンタの専門分野だろ?」
カッツェがため息をつくと、チッタは苦笑して見せた。
「んー、これだけ遠いと流石に魔力がどうのとかは分からないよ」
「気になるなら、見に行くのが一番だよね?」
私は皆を見る。別に反対意見はないみたいだった。もちろん、賛成意見もなかったけど。
「じゃあ、ちょっと見に行ってみるか」
とめても無駄かな、みたいな言い方でカッツェが言ったのが結論になって、私たちは北の大きめな氷の島に上陸した。

寒い、というより痛いといったほうがよさそうな冷たい風のなか、私たちは煙を頼りに島の中央を目指す。
幸いにも、煙は途切れることなく昇っていて、しかもあまり海から離れていない場所だった。暫らく歩いていくと、小さな家が見えてくる。そこから煙は上がっていた。つまり、煙突から。暖炉か何かの煙だろう。
「近くでよかったねえ」
「まあ、肉眼で見えるほどですし」
そんなことを口々に言いながら、小屋に到着する。周囲を簡素な木の柵で囲った、木造の小ぢんまりとした家からは、物音はしない。家の規模からいって、一家族住んでいるとは思えない。もっと少数の、せいぜい1人か2人といった感じだろう。
「ごめんくださーい」
ノックとともに声をかけると、意外にも中からは元気な声で返事がかえってくる。中へ入れてもらうと、予想通り暖炉には火が入っていて、とても暖かかった。
「こんな辺境へ海賊以外の人間が来るとはなあ」
中に一人で住んでいたお爺さんは私たちを見て苦笑する。
「しかも若い女子が大勢。不思議な世の中になったもんだ」
お爺さんは遠慮もなく私たちをじろじろと見た後、大きく息を吐いた。
「で、お前さんがたは、何の用事があってこのグリンラッドに来たのじゃ?」
私たちは、ここから南にある内陸の村を目指していることだとか、本来の目的はバラモスを倒すことであるとか、この島がグリンラッドという名前なのは初めて知ったことであるとか、色々な話をした。
お爺さんはその一つ一つにいちいち頷いたり驚いたりして、話を楽しそうに聞いてくれた。聞き上手というひとは、こういう人のことを言うんだろう。
「そうじゃなあ、そんな風に世界中を旅するのであれば、一つ頼まれてくれんか?」
「何を?」
「世界には『変化の杖』とかいう、姿を変えられる杖があるそうだ。それを持ってきてくれんか。代わりになりそうな変わったものを用意しておくから」
「その杖で何をするの?」
「遊ぶ」
多分姿を変えるほどの杖だから、大きな魔法の力が封印されているんだろうけど、それを使ってすることは何もなく、ただ純粋に「遊ぶ」と言い切ったお爺さんは実のところ大物なのかもしれない、と思いながら私は頷く。
「分かった。何処かで見かけることがあって、しかも手に入りそうだったら、もって来るね。無理だったらごめんなさい」
「そのくらいの心構えでちょうどいいと思う。では、頼んだ」
お爺さんは豪快に笑って、私たちを海岸線まで見送りに来てくれた。
「そうそう、この島よりも南で、大陸よりは北に、小さな島が点在しとるだろう? その中の一つに、旅の扉の設置された小さな祠がある島がある。もし世界中を回ってしまったら、それを使ってみるのもおもしろいと思うぞ。どこへ通じとるか全然知らんが」
お爺さんは南のほうを指差してそんなことを教えてくれた。
「わかった。見つけたら入ってみる」
「では変化の杖のことは頼んだからの」
「忘れないようにするよ」

船に乗って、内陸の村を今度こそ目指す。
「それにしても変わったお爺さんだったね」
「きっと名だたる賢者なのでしょうね。いろんなことをご存知でした」
リュッセはとっても名残惜しそうな顔をして、小さくなるグリンラッドをずっと見つめていた。


■また、ぼちぼち書いていこうと思います。
次はスーに行きますよ。

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