■今日は食べすぎで気分が悪いです。
人間、逆上しちゃだめですね。

……バイキングって、おっそろしいね。

■ダーマ神殿 1
目が覚めると、窓の外からは既に太陽の光が差し込んできていた。今日も強烈に晴れて暑くなるんだろう。
「で? これからどうするんだい? ポルトガか、ダーマか。それとも別のところかい?」
朝食の席でカッツェが言う。テーブルには朝食と共に地図が置かれていて、皆でソレを覗き込む。食べながらだから行儀は悪いけど、なるべく早く次の進路を決めたほうがいいということで、反省しつつこういう方法をとることにした。
「ポルトガは後でいいって!」
「感情論排除」
チッタの声にすかさずカッツェがこたえる。チッタはむぅ、と頬を膨らませた。
「王様の気持ちが変わる前に胡椒を届けたほうが良くないですか?」
「イシスの女王様から便宜を図ってね、って頼まれてるんだよ? ここで言ったことを覆したら、色々問題あるんじゃない?」
「足元見るなよ」
チッタの主張にカッツェが苦笑する。「でもそうでしょ?」という反論には、カッツェは笑いながら頷いていた。

「ダーマ、行こう」

私はぽつりと言う。
「リュッセはずっとダーマに行ってみたいって思ってたんでしょ? だったら折角近くに居て、行けるチャンスがあるんだから、行かないと」
「僕は別に」
「後悔しないためにも行こうよ。私はお父さんの情報集めるときに何回も皆に我侭聞いてもらったし、チッタだってノアニールとエルフの村のとき主張が通ってるし、カッツェもカンダタのことに決着ついたし……まあカッツェのは私たちは勝手についてったんだけどさ、でも、こうやって考えたら私たちは皆大体、これまで一回くらいは我侭とおしてきたんだよ。でも、リュッセは何にも言ってない。一回くらい『こうしたい』って言ってもいいよ」
リュッセは困ったように私の顔を見た後、チッタとカッツェの顔を見た。
「んー、まあ、そういわれればそうだよね。リュッセ君は賢者になるのが夢なワケだし。近くに居るのに行かないのは後悔の元だよね。それにポルトガ行きも遅くなるし」
「アタシもそれでいい。やれるときにやれることをやったほうがいいさ。船を手に入れたら、こっちのほうへは来ないかもしれないんだし」
「後悔はしちゃ駄目だよ」
リュッセは暫く黙って、自分の指先を見つめたり、天井を見上げたりしていた。随分迷っているようだった。
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
リュッセはそういうと、私たちに深々と頭を下げた。

「ダーマ神殿へ、行かせてください」


話がまとまると、準備は早かった。
荷物を持って、必要なものだけ買い足してから、グプタさんとタニアさんに挨拶をしてから街をでる。
目指すのは街から北東にあるダーマ神殿。地図で見る限り、凄く遠いわけではない。
「案外早くつけるかも知れないね」
「早く着けても、すぐに希望がかなうとは限りませんよ」
「でも、スタートが早ければ、ゴールも早いよ」
チッタがリュッセを見る。彼は頷いた。
「まあ、せいぜい頑張ります」

バハラタの街から東に進む。
川を越えて、洞窟があった森を左手に見ながら暫く東を目指すと、やがて半島の東端に出た。地図から言えば、この海岸線に沿って、森をぬけつつ北に行けば、やがてダーマ神殿が見えてくるはずだ。
カンダタの居た洞窟は、ココからだともう西側になる。
時折襲い掛かってくる魔物は、バハラタの西にある草原とここでは随分強さが変わってくる。ダーマにはある程度力のある人しか行けないように、こんな場所に造られたのかもしれない。
何回か夜営をしながら私たちは確実に北へ進む。
森をぬけて、山道をずっと進んでいくと、やがて遠くに木々に囲まれた建物が小さく見えてくる。
「あれかな?」
「そうかもしれないね。森の中だとか言ってたし」
目的地が見えてくると、疲れていても足取りは軽くなる。新しい、知らない土地なら期待もあってとても嬉しい。
遠くに建物を見ながら歩くようになって、半日ほど。
その間にどんどん建物は大きく見えるようになってくる。
「いよいよって感じがするね」
なんてチッタの声も弾んでくる。

ダーマは古めかしい石造りの、かなり大きな神殿だった。
正面の入り口は大きな扉で、まだ中がどうなっているのか分からない。入り口には男の人が立っているのが見える。
正面入り口から見て右手側には、小さな二階建ての建物があって、そこが宿屋になっていた。
ダーマはその二つの建物しかなかったけど、何に驚いたって建物の外回りも、かなりの範囲にわたって石畳が作られていたってこと。
これまでの街や村にも、石畳の道はあったけど、所謂「庭」にココまで力を入れた建物を見るのは、お城以外では初めてだった。
「凄い建物だね、何か『他所とは違います!』ってアピールしてるよね」
チッタの言うとおり、確かに神殿はとても神秘的だった。少し古ぼけているところが、歴史を感じさせる。とても静かで、荘厳。
「なんか、そりゃこんなところなら修行だってできるよね」
「凄い力とか身につけちゃいそうだよね」
「そのために来たんだろう?」
チッタと私の会話にカッツェは突っ込みつつ、神殿を見上げた。
「まあ、確かに、何か底知れない感じはするな」


■さて、ついにダーマ編突入です。
おめでとうリュッセ君!
そしておめでとう私!!!

■人気投票継続中。
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