■はー、珍しく当日更新です。なんかこの文章微妙に変な感じ(笑)

50回を過ぎようが過ぎまいが、コレまでどおりの更新頻度でうだうだやっていこうと思います。

■バハラタへ
ポルトガから東に向けての旅立ちの朝は、風が強い日になった。宿のご主人の言うことには、バハラタでは「旅立ちに風が強いのは幸運の証」だということで、何故だか随分「良かったねえ」なんてニコニコされてしまった。多分、私たちが頼りなく見えて、そんな私たちの門出が良いものになって、見送るほうとしてもほっとしたのだろう、というのがリュッセの分析だった。何だか複雑な気分だ。
そんな風の強いポルトガを後にして、ルーラでまずはアッサラームにとんだ。海の匂いが急になくなって、代わりに乾いた空気が私たちを出迎える。急激な変化に、思わず何度か咳き込む。ノドが何だか痛い。皆も顔を顰めてノドのあたりをさすったり、咳き込んだりしていた。水を飲んで何とか落ち着いてから、私たちは再びアッサラームの北東にある洞窟を目指す。前来たときは随分対応が悪かったホビットは、今度はどういう対応をしてくれるだろうか。ポルトガの王様の手紙は効き目があるんだろうか。全然交流なさそうに見えるんだけど、絶交中とかじゃないんだろうか。
そんな不安を胸に、再び洞窟に入る。打って変わって湿った空気が満ちたその空間に、皆もげんなりとした様子だった。
「なんか、一気に空気が変わりすぎだよな」
カッツェがため息混じりに呟く。流石に旅慣れたカッツェも、閉口しているようだった。

一本道の洞窟を進んで、一見行き止まりまでやってくる。そこから左手に伸びている細い通路を通っていくと、前と同じようにホビットが椅子に座って不機嫌そうにこちらを見た。
「またお前たちか!」
ポルトガへの旅は結構時間がかかっているし、よく覚えてたなあ、なんて思うけど、考えてみたらこんな洞窟にそうそう人がやってくるわけもないだろうから、つまりはホビットに言わせれば「同じヤツがまた来た」という感覚になるのかもしれない。
「ええと、話を聞いてください」
「うるさい、帰れ!」
「ポルトガの王様から、お手紙を預かってきました」
「何?」
そこで初めてホビットは怒るのをやめて私の顔をまじまじと見た。それから不機嫌そうに私を手招きする。手紙を持って近づくと、彼はその手紙を受け取って内容を読んだ。
「そうか、分かった。他ならぬポルトガの王の頼みじゃ仕方ない。お前さんたちを東への抜け道に案内してやるよ。……他のヤツに言うんじゃないぞ!」
「言いません」
大体、言う相手なんて居ない。
「じゃあ、こっちだ、着いてきな」
ホビットが細い通路を戻っていって、私たちを案内したのは、あの太い一本道の突き当たりだった。今は右手側に、アッサラーム近くからの入り口がある。
「ちょっとここらで待ってろ」
ホビットはそういうと、そのまま向かい側の壁のほうへ歩いていく。足取りは軽いけど、何も無いところだ。それどころか、壁の前には大きな岩まである。
ホビットは軽く息を吐くと、まずは壁の前にあった大きな岩をひょい、とどけた。小柄なその体は、私の背の半分くらいしかないのになんて力だろう。ビックリしている間にも、ホビットの作業は続いていく。気合をこめるような大声を短くあげたあと、ホビットは壁に向かって走り出し、そして体当たりをした。
「!?」
重く響く音に、私は思わず身を硬くして息を短く吸う。なんか、すっごく痛そうな音がするにも拘わらず、ホビットはその作業を何回も繰り返す。そのたびに、私は体をびくりと震わせる。本当に痛そうだし、見てて痛い。リュッセが私の両肩をつかんで、「大丈夫ですか?」と耳のそばで小声で尋ねる。痛そうなのとビックリしたのとで、私はコクコクと頷くしかない。
そうしている間に、ホビットの作業はどんどん進んで、やがて「ドーン!」というコレまでで一番大きな音とともに向かい側の壁は崩れてなくなった。壁があったところの向こうに、通路があるのが見える。
「ほれ、待たせたな。コレが東への抜け道だ」
「あの、体、大丈夫ですか?」
私は東に行く道ができたことより、そっちのほうが気になって、思わずしゃがんでホビットの顔を覗き込む。彼は全く気にした様子の無い表情で暫く私をきょとんと見た後、豪快に笑い声を上げた。
「あんなもん、たいしたことじゃない。心配してくれたのかい? ありがとよ。そんなことより、アレが抜け道だ。さっさと通ってくれ」
ホビットはそういうと、不機嫌そうに元の部屋に消えていった。
「もしかして、いい人? 超絶テレ屋さん?」
チッタが部屋に消えていったホビットを見送りつつ首をかしげた。

教えてもらった、というよりは力技で通れるようにしてもらった抜け道を通る。道は一本道で、かなりの太さがある。多分、そもそもはアッサラームから東に抜けるためのトンネルがあって、ソレを何かの理由でふさいでいたんだろう、というのが正直な感想だった。あのホビットさんは見張りなのかもしれない。
道は随分長い。くねってはいるけど、一本道でよかったとも思う。随分歩いたな、と思った頃に漸く外の光が見えてきた。ソレとともに、光のほうから空気が流れてきているのも感じる。
「もうすぐ外だね」
思わず早くなる足。最後のほうは半ば走るような速さで私たちは洞窟を抜けた。

そこは鬱蒼とした森だった。


■はいはい、まだ人気投票はやってますよ。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html

なんか、もう、ちょっとこの人気投票に必要性や意味を見出せないで居るのですが(笑)まあ、いいや……。
いつやめようかな。

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