今日の「DQ3」(28)
2007年5月12日 今日の「DQ3」■木曜日・金曜日と、あまりの眠気に負けて何も書かずに寝てしまいました。まあ、そういうわけなので、ちょっと反省して土曜日ですけどアップしてみます。
■ノアニールの目覚め
■そろそろ書くのが楽しみだった場所に近づきつつあるので、ちょっとうきうきしております。
しかしうきうきしているからといって、別に更新頻度が上がるわけではございません(笑)
■ノアニールの目覚め
ノアニールは相変わらず眠りの只中にあって、何も変化はなかった。
「貰った目覚めの粉っていうのは、どうしたらいいのかな?」
私は道具袋から、エルフの女王に貰った目覚めの粉を取り出す。それは小さな袋で、触ると中に何かが入っているのが分かる。独特のさわり心地がした。
「とりあえず、粉っていうくらいだから、粉が入ってるのよね? 全員にかけてまわるとか?」
チッタは村の中に目を向ける。村の通りには何人もの人が立ったまま眠っていて、全員にかけて回るのは無理そうだ。第一、目覚めの粉が入った袋はそんなに大きくないから、全員にかけて回るだけの量もないだろう。
「全員は物理的に無理そうだね、どうする?」
カッツェもさすがに困ったような顔をして、私の手の中にある袋を見る。
「中、見てみようか?」
袋をそっと開けてみると、中には黄色く輝く粉がはいっていた。良く見ると、粉というよりは花びらのように薄いフレーク状で、一片一片は三角形になっている。
「どのくらいかけたら目が覚めるわけ?」
使い方が全く想像つかなくて、私は思わずみんなの顔を見る。カッツェは眉を寄せて首をかしげ、チッタは口を尖らせて目覚めの粉を見ている。リュッセは曖昧に笑った後、
「とりあえず、そこにいる男性に少しかけてみてはどうでしょう?」
「うーん、そうしてみようかなあ?」
袋をコレまでよりすこし大きく開けて袋のなかに手を入れかけたとき、風が吹いた。
そういえば、カザーブからノアニールまでの道のりは結構風が強かったっけ、なんて気楽に構えていたら。
「リッシュ!」
チッタの声が飛ぶ。
「え? あああ!?」
思っていたより、目覚めの粉は軽いものだったらしい。風に煽られて袋の中から粉はどんどん飛び散っていく。
薄く黄色く光る粉は、風に乗ってノアニールの中を飛んでいく。
風の動きが見える。
意思をもってるかのように、ノアニールの中をぐるぐると駆け回り、やがて空へ渦を巻いて消えていった。
少し、薄荷に似た匂いがした。
「ど、どうしようか?」
いまや袋の中に粉は全く残っていない。途方にくれて皆を見ようと振り返ったときだった。
視界の隅で、何かが動いた。
反射的にそっちを見ると、ノアニールの入り口で立ったまま眠らされていた男の人が大きく伸びをしている。大きなあくびと一緒に。
「ふあああ〜〜」
なんて間の抜けた声をだしながら伸びを終わらせた男の人は、私たちに気づいて首をかしげた。
「あれ? いつから居たのおねえちゃんたち」
「ええと、ついさっき、です」
「あ、そうなの? オレ余所見してたのかな? えっと、ノアニールにようこそ」
眠っていた時間は、彼の中では流れていないみたいだった。彼等は一体何年間「なかった」ことにされたんだろう。そしてその何年間かは、彼等の中には存在しない。
何だか、変な気分だった。
とりあえず、報告に行く事にして村の奥にある、唯一眠っていなかったメガネのおじさんの家に行ってみることにした。
おじさんの家が見えるところまで歩いていくと、ちょうどおじさんが家の中から出てきているところだった。おじさんは、私たちに気づくと走ってこちらにやってきた。
「ありがとうございます! ありがとうございます! 人々のざわめきが聞こえて外に出てきたんですよ!」
おじさんは私の手を一方的に握ると、上下にぶんぶんと振った。少々手荒な握手に、私は曖昧に笑い返す。
「私たち、そんなにたいしたことは出来なかったんですよ。エルフの女王がきちんと話を聞いてくれたからなんです。だから、女王に感謝してくださいね」
おじさんはうなずくと、エルフの村があった方向を見て暫く黙っていた。
「ノアニールは、いいところですよ? 是非少し滞在していってください」
エルフの村のほうを見ていたおじさんは、ちょっと悲しそうに笑った後、私たちを見てノアニールの紹介をしてくれた。
「じゃあ、回ってみます」
答えて、元来た道を戻りかける。
振り返るとリュッセがおじさんと何かを喋っていた。リュッセは何かを否定するような感じで、小さく首を横に振ってから深々とお辞儀をして、早足にこっちに戻ってきた。
「何話してたの?」
リュッセは暫く何かを考えるように視線を宙に彷徨わせた後、
「男同士の秘密です」
なんて似合わない事を言って笑った。
ノアニールは、目覚めたばかりにも関わらず活気に溢れていた。
町の彼方此方を子どもが走り回ったり、店からは客寄せの威勢の良い声が響いている。眠りから覚めたせいで、逆に元気なのかもしれない。
村の人たちにとって、寝ていた時間はなかったことになっている。多分、そのうちカザーブ辺りに行商にでて驚くことになるんだろうけど、今の段階で私たちが何か言っても、多分誰も信じないだろう。
「とりあえず、ざっと中を見て回って宿で一泊したらここを離れよう。下手なことをいってボロをださないほうがいい」
「そうだね」
カッツェの提案に私はうなずく。皆思っていることは同じなのか、同意している。
「なんか変な感じだね。皆知らないことを知ってるのって」
チッタはそんなことを言いながら、口を尖らせて辺りを見回していた。
宿に行くと、宿屋の人が一生懸命掃除をしているのに出くわした。
「あ、いらっしゃいませ、4名様ですか?」
「はい、あの、泊まれますか?」
「問題ございません。ただ、現在掃除中でうるさいですけど、よろしいですかね?」
「いいですよ。どうしたんですか?」
「それが、ちょっと目を離した隙に埃が床なんかに溜まってまして。毎日掃除してるのに、どういうことなんですかね?」
理由が分かる私たちは、曖昧に笑って「何ででしょうね?」とだけ答える。
この分だと、行商とか出なくてもいずれノアニールの中だけででもおかしなことが沢山になってきて話が合わなくなるかもしれない。けど、ソレを私たちが知らせなくてもいい。きっと今私たちが本当のことを言っても、信じてもらえないだろうし、下手をしたらうそつき呼ばわりされて嫌な目に遭うかもしれない。出来れば周りに波風たてないように気を使いながら歩いたから、宿の部屋に着く頃には妙に疲れきっていた。基本的に、隠し事とか下手な性格だからかもしれない。
暫く部屋でごろごろとベッドに横になっていると、ドアがノックされた。
「はーい、あいてるよー」
返事をすると、チッタが顔を覗かせた。
「リッシュ、あのね、ビックニュース。この宿屋、オルテガおじさんが泊まった事あるんだって」
「え!?」
私は跳ね起きると、部屋の外に出る。チッタは若そうなお兄さんとお姉さんと一緒に廊下に立っていた。お兄さんはどことなく困惑したような顔をしていて、お姉さんはまだちょっと眠気があるのか、ぼんやりとした顔をしていた。
「あのね、この人たち、オルテガおじさんに会ったんだって。この宿で」
「お父さ……父はどんな様子でしたか?」
私が聞くと、お兄さんは少し驚いたような顔をした。
「へえ、オルテガさんの娘さんなのですか。私は色々なところを旅して回りましたが、彼こそが勇者と呼ぶにふさわしい男性でしたよ。ほんの昨日まではこの宿に彼も泊まっていたんですよ。何でも、魔法の鍵を探しに行くとかで、アッサラームのほうへ向かうとおっしゃってました」
そこまで言うとお兄さんは私の顔をまじまじと見た。
「オルテガさんは若かったのだが……お嬢さんは随分大きいね。やはり私の重い過ごしではないのだろうか」
「どうしたんですか?」
チッタがお兄さんを覗き込む。
「いや、オルテガさんが旅に出たのは、確かに昨日の話なんだ。私はその様子をしっかり覚えている。が……それから私は何年も眠り続けていたような気がして仕方がないんだよ。なにかこう……勘なのだけど。お嬢さんを見ていると、なんだかその勘が正しい気がしてきたよ」
お兄さん、鋭い。
「そんなことあるわけないじゃないですか」
今度はお姉さんが言った。
「オルテガ様がお出かけになったのは、確かに昨日です。それから何年もたったなんてありえないですよ」
「お姉さんは、父とどういう?」
「わたしが近くの森で怪我をして動けなくなっていたところを、お助けいただいたの。抱き上げてくださったあのたくましい腕……」
お姉さん、目がハートだ。
何かヤだなあ。
「ともかく、父は昨日出発して、それでアッサラームに向かったんですね?」
「そうだよ」
お兄さんとお姉さんは別々にうなずく。
「ありがとうございます」
私はお礼を言うと、チッタと一緒に部屋に戻る。
「なんか、不思議な感じだね。一体この村何年眠ってたのかしら。オルテガおじさんが旅をしてたのって、いつごろだろう。リッシュが生まれた頃にはもう旅立ってたよね?」
「うん、そうらしいよ」
「この村、10年以上時間が止まってたわけだ。なんか、なあ」
チッタはふう、と大きく息を吐く。
「お父さんは人助けだったんだろうけど、なんか若い女の人に好かれてるの見ると、ヤな感じだったよ。……お母さん一筋だと思ってたのに」
「一筋だよ、きっと」
チッタは私の頭を撫でてくれた。
「カッツェ姉さんとの別れが早まっちゃうけど、この村は早く出ようね。なんか、精神状況が悪くなる気がするわ」
「うん」
「でもきっと、これから先、色々なところでオルテガおじさんの話を聞くことになると思う。リッシュもちょっと覚悟しておいたほうがいいよ」
チッタの言葉に、私はうなずくしかなかった。
次の日、私たちは朝早く出発した。
村の人たちは長い間眠っていたせいか、皆朝早くから起き出して色々なことをしていたけれど、特に話しかけたりしないことにした。
■そろそろ書くのが楽しみだった場所に近づきつつあるので、ちょっとうきうきしております。
しかしうきうきしているからといって、別に更新頻度が上がるわけではございません(笑)
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