■今回、ラストです。
あまり無駄なことは書かないようにしたい……した……むりでした。

■全部終わって
全部おわって、ボクらはグランバニアに帰ってきた。
ベッドに突っ伏して大きく息をはいたら、色々なことから解放された気がした。
ビアンカちゃんはボクの隣に座って、静かにボクの頭を撫でてくれている。
「ビアンカちゃん」
「なぁに?」
「……ありがとう」
ビアンカちゃんはびっくりしたような、きょとんとしたような顔をしたあと、柔らかく微笑んだ。
「どういたしまして」


「あ」
ボクは思い出して体を起こす。
「どうしたの?」
「ボク、ここへ戻ってきたとき、サンチョから貰ったんだよね」
「何を?」
「絵の入ってないロケット」
「意味なーい」
ビアンカちゃんは呆れたような声をだした。
「お父さんたちの結婚記念品だったらしいんだけど。絵を入れてくれる職人がいなかったんだって」
ボクは説明しながら、ロケットをしまった棚をあける。華奢なデザインのペンダントは相変わらずきれいに光っていた。
「ボクは過去のエルヘブンでペンダントに入れる絵をかく道具をそろえる手伝いをしたわけで……」
ボクはロケットをあける。

さっきまで会っていた、若いお母さんが微笑んでいた。

ビアンカちゃんが覗き込もうとして背伸びする。ボクは少し体を屈めて、中を見せてあげた。
「入ってるじゃない」
ボクは笑った。
「手伝いをしたからね」
「あ、そっか!」
ビアンカちゃんは手を軽く叩いてから、もう一度絵をみた。
「可愛らしい方ね……確かにお義父様がよろけちゃうの、わかる気がする」
そう言って、ボクを見上げた。
「よろめいた?」
「そんな風に嫉妬するビアンカちゃんにね」
答えると、ビアンカちゃんは耳まで真っ赤になってボクの鼻をつまんだ。
「痛いよ」
ボクは鼻声で抗議しながら、ビアンカちゃんの髪を撫でる。
「これまで、いっぱい迷惑かけてごめんね。碌でもない目にあわせたし、危険な目にあわせてばっかりだったし、本当に申し訳なく思ってる。ボクのこと、見捨てないでくれてありがとう。……今までずっとのんびりできなかったから、これからは目一杯のんびりしようね」
鼻声だけど、気にしないで言う。ビアンカちゃんはあわてて手を離した。
「だから、これからもよろしく」
笑いかけて頭を下げると、ビアンカちゃんも頭を下げる。
「こちらこそよろしく。……のんびりするのもいいけど、たまにはドキドキする事もしようね」
「たとえば?」
ビアンカちゃんは視線を宙に漂わせてから、何かを思いついたらしく、目を輝かせた。
「……おばけ退治とか!」
ボクは思わず笑う。
「じゃあまず、いじめられてる猫を探さなきゃね」

ボクらのドキドキは、きっとあの頃からつづいてる。
そして、
多分ずっとつづいていくんだ。
これからも。


夢を見た。
ここはどこだろう。
しばらくあたりをみて、ここがグランバニアの自分の部屋だと気付く。
けど、置かれている調度品の場所や、かかっているカーテンの柄なんかが違う。
だからすぐわからなかったんだろう。

ボクは空中にいるみたいに、部屋を斜め上から見ていた。

まだ明るくて昼間みたい。
けど部屋にはベッドに横たわる女の人しかいない。
黒い髪の女の人。

お母さんだ、とすぐ気付く。
よく見ると、お母さんの隣にはまだ生まれてすぐみたいな黒い髪の赤ちゃんが眠っていた。


ドアが開く。
「マーサ!」
ちょっとだらしないくらい嬉しそうな顔をしたお父さんが、部屋のなかに入ってきた。
「あなた」
お母さんが微笑む。
「男の子よ。きっとあなたに似て強くて素敵な子になるわ」
お母さんのことばに、お父さんはベッドに眠る赤ちゃんを見た。
「……なんだか不思議な気分だ」
「私もですよ。……私たちの赤ちゃん。……健やかに育ってね」
「さっそく名前をつけなければな」
お父さんはそわそわした感じで腕組みをしてその辺を歩き回る。
「そうだ! トンヌラと言うのはどうだろう!」

いやいやいや。
まてまてまて!
思わず言ってしまったけど、ボクの声は聞こえないようだった。

お母さんは笑う。
「まあ、素敵な名前。強そうで、勇ましそうで」

おいおいおい、
正気か!

「でも、私も名前を考えていたの」
「ほう」
「テッサディールと言うのはどうかしら? テスって呼ぶの」

お母さん、グッジョブ!


お母さんの提案に、お父さんは難色を示す。
「なんだかパッとしない名前だな」

トンヌラはどうなのさ!

「が、おまえが気に入っているならそれがいいだろう」
お父さんはそう言うと、お母さんの頭を撫でて、それからボクを抱き上げた。
「今日からおまえはテスだぞ、息子よ」
小さなボクは一瞬笑った。
「あなたもきっと気に入るわ」
お母さんは微笑む。
「エルヘブンで私たちを助けてくださった旅の方のこと、覚えてらっしゃる?」
「もちろんだ、忘れるわけがないだろう?」
「彼のお名前なの。テッサディールって。私たちを結び付けてくださった方のお名前をいただくの」
そう言って、お母さんはお父さんの腕のなかのボクを見る。
「ずっとこの子が、私たちを結び付けてくれるのよ」
「なるほど」
お父さんは納得したようにうなずいた。
「それは良い」
お父さんは笑ってボクを見る。
「あの青年のように、他人のため懸命になれる人に育ってくれたら良いな」
「でしょう?」
お母さんは少し得意そうに微笑んだ。



目が覚めた。
周りで、ざわざわと音がする。
そうだ、ボク、お父さんと船にのってサンタローズへ帰るんだった。
起き上がると、お父さんはボクに背を向けて椅子に座って、何かやっていた。
ボクはおきていって、お父さんの顔を見上げる。
「あのね、ボクが産まれるときの夢を見たよ」


■初回に戻る(笑)

というわけで、ラストです。
これで、おしまい。

色々かたるのは今はやめておきます。
お約束してた「裏話」は、サイトのほうでこそこそ更新します。


次回からは「今日のDQ3」になるでしょう。
気がある方は、また長々つきあったってください。
眠いのでコメントとかのお返事や、新規の日記はまたあした。

寝ます。

おやすみなさい。

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