■最近さぼっててごめんなさい。
一つは、DQ1の話を書くのが楽しいから。
もう一つは、FF12が楽しいからです。

非常に分かりやすい性格で申し訳ない(笑)

■微笑み (テス視点)
パオームのインクと妖精の羽ペンを持って絵の前に立つ。
「よろめかないでね?」
絵のなかに意識を集中しかけたとき、ビアンカちゃんがボクのマントを引っ張った。
「そういう対象じゃないって言ってるでしょ」
ボクは苦笑する。
ソルが不思議そうにボクとビアンカちゃんとを見比べる。それとは対照的にマァルははぁっとため息を吐いた。


エルヘブンは見た目何にも変わらなかった。いつ来ても変化が感じられない村だから(ボクが鈍いだけかも知れないけど)お父さんに羽ペンとインクを頼まれてからどのくらいの時間がたっているのかわからない。
少なくとも、ボクが絵のなかにいる間は時間が流れている。それは分かっている。
けど、絵から離れている間に時間がどうなっているのかわからない。
まだお父さんはいるだろうか?
考えながら階段を祈りの塔にむかって歩く。
思い立って塔のなかを覗いてみると、長老達はまだ祈りを捧げていた。
ボクはそっと階段をのぼってみた。階段の終わりにいたはずの兵士もいない。
もしかしたら……時間は進んでない?
ボクはお母さんの部屋に辿り着く。
「あら? 忘れ物でもしたの?」
お母さんがボクに気付いてにこりと微笑みながら尋ねた。
「……えと……そうではなくて……あの、ボクがココをでてどのくらいたってますか?」
「変なこと聞くのね? そうね……十二・三分くらいかしら? 村の入り口で引き返してきたの?」
「ええ……まあそんなところです……。あ、ボク用があるので……お邪魔しました」
「……変な人ね」
お母さんは笑う。
「また来るかも知れませんけど」
お母さんが首を傾げた。
「まぁ、色々あるんです」
「不思議な人」
「あ……長老達はいつまで祈りを捧げているんでしょうか?」
「……そうねぇ、あのお祈りは結構時間がかかるから……あと二時間は続くと思うわ」
お母さんは少し首を傾ける。
「ありがとう」
ボクは軽く手を挙げると、あいさつもそこそこにボクは階段をかけおりた。


祈りの塔の裏手の階段もかけおりる。角をまがって、お父さんがいるはずの家に入った。
「おや、早い到着だね」
家の主人の髭のお爺さんが驚いてボクを見た。
「頼まれたものはどちらも所持していたので……世界の名産品を集めて旅をしてるんです」
この答えは、まぁ、嘘じゃない。
ボクが答えていると、隣の部屋からお父さんと画家さんが顔をだした。
「おお、きみか」
「お待たせしました。村の外の馬車に置いてたので……」
「なんと! 妖精の羽ペンとパオームのインクを持ってきてきださったのか! ありがたい! さっそくお借りしますぞ!」
お父さんは顔をほころばせる。すごく嬉しそうで、見ていて嬉しいし、微笑ましい。
ボクは妖精の羽ペンとパオームのインクをパパスに手わたした。
お父さんは暫くそれらをまじまじと見つめて、それから頷いた。
「あとはマーサどのの祈りの部屋の番人をどうするかだが……」
お父さんは祈りの塔のほうを見上げて、眉を寄せた。
「あぁ、番人の方なら暫く戻ってきませんよ。ちょっとお出かけしてもらいましたから。長老たちは今祈りの時間で暫くは塔に入っても大丈夫ですよ」
ボクは壁にもたれて少し笑いながら言う。
「え? 番人の兵士は出かけてるって? なんということだ……。なぜそこまでしてくださるのだ……」
「助けてもらったからです」
「……お会いしたことは無かったはずだが……」
お父さんは首を傾げる。
そう、ボクが助けてもらうのはまだずっと先で、でもずっと昔の話。
今の彼には、わからない話。
「ボクが結婚するとき、周りにいる人たちに沢山助けてもらったからです。だから、ボクも誰かを助けてお返しがしたいんです」
ボクは微笑んでみせた。
これだって本心だ。
「ともかく今はお言葉に甘えることにしよう」
お父さんは画家の男の人を見た。
「それではマーサどののところへまいりましょう、マティースどの!」
「まいりましょう! いざ!!」
画家さんは頷いて立ち上がる。二人は早足で家をでていった。

 

ボクはゆっくりと階段をのぼり、祈りの塔へむかう。純粋に、画家さんがどんな風にしてどんな絵を描くのか興味があった。
それに、お父さんとお母さんがどんな風に話をするのか見てみたかった。
ボクはその風景を見たことが無い。
少し楽しみ。

塔の中のお母さんの部屋に、三人が集まっていた。
テーブルの向こうにお母さんは座っている。画家さんはその向かい側に座っていて熱心にスケッチしている。お父さんは画家さんの前で少し恥ずかしそうに頬を染めているお母さんをやわらかく微笑みながら見つめていた。
二人はそれといって話をしてないけれど、素敵な風景だった。
階段に一番近い所に座っていたお父さんは、ボクに気付いて軽く手を挙げた。
「おおあなたは! おかげでこのロケットペンダントに絵を入れることができます。申し訳ないが少し時間がかかるので、いったん帰ってからまた来てくれないだろうか? お借りした道具は絵が完成したらすぐにお返しします」
ボクは頷いた。
「ゆっくり使ってください」
「ありがとうございます」
お父さんは深々と頭を下げる。ボクは思わず頭を下げた。
それから画家さんの後ろから近寄って、絵を見ながら声をかけた。すると画家さんは少し不機嫌な声を上げた。
「悪いが話しかけないでくれ。ロケットに入れるような小さい絵は色づけがむずかしいんだよ」
小さな紙に描かれた絵は、お母さんにそっくりで、とても腕の良い画家さんだというのがわかる。
邪魔をしちゃいけない。
ボクは今度はお母さんに近づいた。
お母さんは少し緊張して、そして恥ずかしいらしい、困ったような顔で、両手を膝においている。
「緊張してますね」
「なんだかはずかしいわね。でもパパスさんがどうしてもって……」
お母さんは少し笑った。
「私にこんなにまっすぐ近づいて来る人は誰もいなかったわ。神に授かったこの力が人びとをおそれさせるから……」

その神様はあの人、と思うと多少いたたまれない。
もしかしたら、もうあの洞窟でぐるぐる回ってるのかも。
二十年以上って言っただけだから、三十年前のこの時点でも、回ってる可能性はある。
ボクはお母さんを見た。
小柄で弱々しくて、でも意志が強くて素敵なお母さん。

……プサンさんの馬鹿。

ボクは目が合ったお母さんに笑いかける。
「お幸せに」
「あなたも」
お母さんも笑った。
「では、お邪魔しないように、ボクもう行きますね」
ボクは手を振って階段をおりた。
振り返らないで。


■多分、次回が本当のラストになるとおもいます。
随分掛かりましたね。

次はDQ3が優勢な感じです。
DQ1?
あれは「かきとめ」で気が向いたら書くのよ。
……と言っても読まれてるのかどうか微妙ですけど。

とりあえず、全部終わったら、キャラ語りとか裏話とかちょっと書きたいな、と思ってます。

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