■本日より、クリア後のお楽しみ「パパス・マーサ駆け落ち編」です。
……うっかり長くなりそうだー!
なにやってるだかー!

■妖精の城で (テス視点)
「こんにちは、テス」
「あれ? ベラ?」
ぼんやりとした視界に、懐かしい顔。
「えーと……」
ボクは考える。
「ボクって起きてたっけ?」
「テスはまだ寝てるよ? 私とは夢の中で話してるの」
「そうなの?」
「うん」
「そんなこと出来るんだ」
言うと、ベラは笑った。
「ま、色々あるのよ」
「で、何」
聞くと、ベラはにやりと笑ってその場で一回転した。
「あのねー」
にまにまと笑って、ベラはボクを見る。
「……何かいいことあったの?」
その言葉を待っていたんだろう、ベラは両手をぱっと広げる。
「そうなのよー! 大ニュース! あのねー、妖精のお城にマスタードラゴン様が新しい絵を贈ってくださったのよー!」
「大ニュース?」
思わず聞き返す。
「そんな不満そうな顔しない」
ベラは口を尖らせる。
「すっごい事なのよ!? 栄誉よ!?」
頭のなかにプサンさんがちらついて、栄誉とか大ニュースとかどうもピンとこない。
ボクがあんまり感心しないから、ベラはため息をついてあきらめたようだった。
「まぁ、テスは昔から感覚変だったし……いいわ。ともかく、伝えたからね?」


目が覚めた。

なんだかぐったりした気分で起き上がって、欠伸をしながら頭をバリバリかく。
やっぱり、ベラがわざわざ来たっていうのは、あれは「見に行け!」って事だよなぁ。
……プサンさんが贈った絵ねえ……?
確か、前は勇者誕生のお祝いの絵を妖精の城に贈ったんだったよね。
あの絵はよかったな。
見に行く価値はあるのかなあ?
「どうしたの? 悩み事?」
まだ寝そべっていたビアンカちゃんがゆっくりした口調で言うと、座っているボクの足に頭を乗せる。膝枕みたいにしてから、ボクを見あげた。
「んー」
ボクはビアンカちゃんの髪を撫でながら、言うか言わないか考える。
「なんかね、妖精のお城にマスタードラゴン様が絵を贈ったんだって」
「何で知ってるの?」
「夢にベラが出てきて、教えてくれたんだ」
「え!? ホントに!? 素敵ー!」
ビアンカちゃんはボクを抱き締めた。
「……じゃあ見に行ってみる?」
「行きたいっ」
声を弾ませてビアンカちゃんは起き上がる。
「絵も見たいけど、妖精のお城に行きたいっ」
「あぁ、メインは城ね」
「マァルに聞いたら、すっごく素敵なお城みたいなんだもん。見てみたいわよ」
「まぁ確かにきれいだったね。王の間にはステンドグラス越しの色のついた光が降り注いでたし、お城自体鏡みたいな湖に建ってた」
「素敵ー!」
ビアンカちゃんは想像しているのかうっとりと目を閉じる。
「絶対行きましょ? いつ行くの?」
「気が早いよ」
ボクは苦笑する。
「まあ、間近な休みにでも行ってみようか」
「だったら三日後ね! 楽しみだわー!」
ビアンカちゃんは今から出掛けるかのようにニコニコとして、目を輝かせる。
「どんな服着ていこうかしら? やっぱりちゃんとした服?」
「旅してた時の格好で十分だよ。かなり広い湖の真ん中に建ってるお城だから、いかだを使うんだ。ちゃんとした格好で濡れちゃったら大変だよ」
「そっか」
ビアンカちゃんはのびをした。
「マァルやソルにも言わなきゃ。楽しみねー」


あっと言う間に時間はすぎて、妖精のお城に行く日になった。
久しぶりの本格的な外出に、子どもたちのテンションも高い。「早く早く」と口々に言いながら、足踏みをしている。
「じゃあ行ってきます」
ボクはオジロン様やサンチョに言ってからビアンカちゃんたちに合流した。
グランバニアから少し歩いた所にある平地で、久しぶりに天空のベルをならす。澄んだ音色が空に吸い込まれて、しばらくするとマスタードラゴンが舞い降りてきた。
「まさか呼ばれるとは思ってなかったぞ」
「平時に乗り物にして失礼します。本当ご迷惑をおかけして……」
ビアンカちゃんが頭を下げると、マスタードラゴンは大きな声で笑った。
「よいのだよいのだ、ちょうど仕事に飽きてきた所だったのだ」
「ちゃんと世界を見守ってくださいよ。仕事でしょ、仕事。仕事してください」
ボクは思わずマスタードラゴンを見上げた。けど、マスタードラゴンは聞こえないふりをした。
相変わらず正直者だ。
「で? 何処へ行くのだね?」
「妖精のお城に行きたいのっ」
マァルがマスタードラゴンにむかって両手を広げる。
なにか、期待の大きさを表しているようだ。
「絵を見に行くのかね?」
「そうだよ」
ソルはうなずく。
「プサンさんが贈ったんだよね?」
「そうだ」
「何の絵?」
「それを見に行くのだろう?」
マスタードラゴンは苦笑してソルを見る。ソルは「あっそっか!」と頭をかいた。
「では行こう」
マスタードラゴンの声にボクらは頷いて、その背に乗る。
彼は静かにはばたくと、空に向かって大地を蹴った。

キラキラと輝く海をわたって、やがて大陸が見えてきた。
右手側、つまり北側には高い岩山が連なっている。その頂上にある神殿は、今は雲のむこうになっていて見えなかった。
南側には朽ち果てかけた塔があり、大陸の中央には妖精の城がある湖が見える。
「あの塔は昔本当に天空城につながってたの?」
マァルがマスタードラゴンに尋ねると、彼は軽く頷いた。
「遥か昔にな」
少しずつ高度がさがる。
ボクらは湖の南側に広がる平地におろしてもらった。
「ありがとうございました」
マスタードラゴンは一度頷いて、再び天空に戻っていった。

湖は波もなく、静かだった。
用意されていたいかだに乗って、ボクらはゆっくり湖の中央をめざす。
ボクらの後ろにいかだが通った跡が波になって残る。しばらく進むと、睡蓮がピンクの花を開いていた。
その向こうに、城が見える。
「あれがそうなの!? 素敵ー」
ビアンカちゃんがうっとりと城を見つめる。
「中はもっと素敵なのよ!」
マァルがビアンカちゃんを見上げた。
ソルはよく分からない、といった顔をした。
その気持ちは分からないでもない。

中に入ると、女の子達の興奮は最高潮になった。
きゃいきゃいとあちこちを見ている。ビアンカちゃんが若いのか、マァルが大人びてるのかは考えないことにした。
ボクらは女王にあいさつして、許可を得て二階にむかって歩きだす。
途中にいる妖精たちは初めて会うビアンカちゃんに興味があるらしく、話し掛けている。
「テス様とビアンカ様が運命で結ばれ、勇者様がお生れになったんですよね」
「そうねー、テスと結婚しなきゃこんな苦労しなかったかもねー」
ボクは思わずビアンカちゃんをまじまじと見つめる。
なんか頭が真っ白で何も考えられなかった。
心臓がものすごいはやさで脈打って、痛い。
「……冗談よ。そんな顔しないで?」
「……」
言葉がでない。
「ごめん」
「……うん」
何とか返事して、ボクはへなへなと座り込んだ。ビアンカちゃんが隣にしゃがんで、ボクの背中を撫でた。
「ごめんね」
「も、いい」
しばらく座り込んで、何とか落ち着いてから二階にむかう。
二階の部屋には、新しい絵がかけられていた。
今度の絵は、風景画。
「何処の絵かしら? 見覚えがあるんだけど……?」
ビアンカちゃんが眉を寄せて絵を見つめる。
絵の所にいた妖精がボクを見る。
「この絵は最近になってマスタードラゴン様から贈られたものです。テス様が絵の前に立って心を開けば、きっと愛しい人に会えるでしょう」
「え?」
ボクは絵を見上げる。
あの時みたいに、どこかへ?

ふわりと浮遊感。
声を出す暇もなく、ボクは絵に吸い込まれた。


■というわけで、スタートです。
……って全然進んでねえー!

のんびりお付き合いください。

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