■毎週いそいそと読みに行っている王宮のトランペットさま
http://www5.ocn.ne.jp/~tonnbo/
のね、小説がもうすぐ終わりになるそうです。
ちなみにヘンリー君がものっそカッチョイイです。

本日ルキウス陛下が大神殿でお勝ちになられました。

あー、終わっちゃうのかああああぁぁぁ。

とんぼさま勝手に紹介してゴメンナサイ(って此処見てらっしゃるかどーかしらないですけどね……)

■山奥の村 (テス視点)
サラボナから北に飛んで、マスタードラゴンは山奥の村の近くにふわりと降り立つ。これまでどおり村の入り口で待ってもらって、ボクらは村に入った。
春の暖かい風にのって、硫黄の匂いがするのが懐かしい気がした。春らしく、畑ではイチゴが色付いている。
ソルもマァルも楽しそうに辺りを見回す。
「あ! リス!」
「イチゴがあるよ!」
きゃいきゃいと二人は見えるものに歓声をあげる。その姿は、ちょっと前に魔王と戦って勝ったとは思えない。
「あらー、ビアンカちゃんお帰りー」
畑仕事をしていた女の人がビアンカちゃんに声をかける。
「マリーさんこんにちはー」
ビアンカちゃんがマリーさんと呼んだ女の人はニコニコ笑いながら、採ったばかりのイチゴを渡してくれた。
「ダンカンさんなら元気よ。それと、平和にしてくれてありがとうねー」
付け足しで言う様子は、あくまで気楽。ビアンカちゃんに気を遣わせないためか、それともこの柔らかい村では、平和は当たり前だったのか。
どちらにせよ、特別扱いされないのは気楽でよかった。


村の奥にある、ダンカンさんの家にむかう。
途中村の人たちはビアンカちゃんを見ては口々にお帰りと声をかけて野菜やらくだものやら分けてくれる。
「お母さん、イチゴあとで頂戴ね!」
「はいはい」
ビアンカちゃんは笑いながらソルに返事をする。
「ビアンカちゃんモテモテ」
ボクが言うとビアンカちゃんは「馬鹿なこと言わないでー」って苦笑した。

「お父さん、ただいまー」
ビアンカちゃんは明るく部屋の奥に声をかける。
「おぉ、ビアンカ。お帰りー」
ダンカンさんはのんびりした声で返事をした。
「お爺ちゃん! ぼくら魔王を倒したんだよ!」
「わたし恐かったけど頑張ったの」
ソルとマァルは口々にダンカンさんに報告する。
「そうかいそうかい、魔界の王をやっつけてしまったのか……」
ダンカンさんは目を細めて微笑む。
「それはともかくテスたち親子4人がこうしてわしに会いにきてくれたんだ。こんなうれしいことはないぞ。つもる話もあるし今日くらいはゆっくりしていけるんだろう?」
「それがお父さん……そんなにゆっくりしていけないの。グランバニアにも帰っていないし」
ビアンカちゃんは洗ってきたイチゴをテーブルに置く。ソルとマァルがすかさず手を伸ばす。
「なんだって? グランバニアでは人々がテスの帰りを待ちわびているのか。……そうか……。テスはグランバニアの王様だったな。すっかり忘れていたよ」
ダンカンさんは仕方ない、といった顔をする。
「よしわかった。テス、早くグランバニアに帰ってあげるといいぞ」
「お父さんまた会いに来るからねっ」
ビアンカちゃんはダンカンさんの手を握る。
「会いに来るのはいいがテスとケンカして家出なんかしてくるなよ」
ダンカンさんはそう言って豪快に笑い声をあげた。
「ホントにもうっ! お父さんったら心配してるのかからかってるのかわからないわ!」
ビアンカちゃんは頬を膨らませたあと、ボクを振り返る。
「でもテス。私がここに帰りたくなるようなことは絶対にしないでね。約束よ」
「約束します」
ボクは苦笑しながら頷いた。
「どれわしのかわいいマゴたちの顔をよく見せておくれ。ソルにマァル。お父さんやお母さんのような立派な大人になるんだよ」
ダンカンさんはソルとマァルの頭を交互に撫でて、しっかり顔を見る。
イチゴを食べおわった二人はニコニコ笑ってダンカンさんを見上げる。

ボクらはダンカンさんの家をあとにする。階段をおりきったところで、ソルがボクらを見上げる。
「お爺ちゃんひとりっきりじゃ淋しいに決まってるよ。お父さんお城が落ち着いたら おじいちゃんもグランバニアに呼ぼうよ。ねっ!」
ビアンカちゃんは少し目を潤ませた。
「ありがとう……ソル」
「わたしお爺ちゃん大好き。だってやさしいんだもん」
「マァルも本当にいい子ね……」
ビアンカちゃんは二人を抱き締める。
「えっと……あのね……。お城に戻ったら、わたし皆でおべんとう持って……森へピクニックに行きたいの」
マァルはビアンカちゃんにくっついて、小さな声で言う。
「いいわね。じゃあお母さんがおべんとうつくろうかな?」
ビアンカちゃんはにじんだ涙を拭って笑う。
「ホント!? やった〜!」
「ぼく甘い卵焼き入れてほしい!」
ソルが手をあげる。
「任せて!」
ビアンカちゃんはソルにウィンクした。
マァルはビアンカちゃんにぴったり体をくっつける。
「お母さん……」
「ん? なあにマァル?」
「……ううん。なんでもないの。お母さん……大好き」
ビアンカちゃんは何にも言わないで、マァルをしばらく抱き締めていた。



「オレ聞いちゃったよ。ビアンカさんてダンカンさんの本当の娘さんじゃなかったんだね。なんでもダンカンさんが山に行ったとき拾ったとか。あっこれ言っちゃいけなかったかなあ……」
帰り道、村の入り口付近であったおじさんが、ビアンカちゃんに確かめるように尋ねる。
けど、みるみる凍り付くビアンカちゃんの表情をみて、おじさんは口を押さえた。
ビアンカちゃんはうまく声をだせなくて、ボクをみる。
「ダンカンさんの冗談じゃないですかね?」
ボクはおじさんに笑って言うと、そのまま村の外をめざす。
「ねえ」
ビアンカちゃんがボクに聞く。

「今の話本当かしらね……。もし本当だったらちょっとショックかな……。でもそんなことあるはずないわ。だってあの父さんと母さんが私にずっとウソをつきとおすなんてできるはずないもの……」
ビアンカちゃんは泣きそうな顔をする。
「そんなことないって思うんでしょ? だったら、それがホントだよ」
ボクは微笑んで見せた。
「……うん……テスは何も聞いてない?」
「うん。あんなの、きっとダンカンさんが酔った勢いとかで言った冗談だよ」

第一、聞いたのは山じゃなくて宿にきた若い夫婦の話だ。
今思えば、勇者の血筋のせいで、魔物に襲われたのかもしれない。

「……」
ビアンカちゃんは眉を寄せ、不安そうに村の奥を振り返る。
「あのさ、お父さんって聞いて誰の顔を思い出す? お母さんは? ……ダンカンさんたちでしょ?」
ビアンカちゃんは頷いた。
「だったら、ビアンカちゃんの両親はダンカンさんたち。それ以外はないよ」
ビアンカちゃんは微笑んで頷いた。
「そうよね。……そうに決まってるよね」
「あこがれの夫婦なんでしょ?」
「うん」
「負けないように頑張らなきゃね」
ボクらは手をつないで歩く。
「お父さん、お母さん、はやくー!」
先に行った子どもたちが手を振ってボクらを呼ぶ。
「今いくわー」
あいた手でビアンカちゃんは手を振りかえして、ボクをひっぱって歩きだす。

ボクはそっと村の奥にある家を見る。
ダンカンさんも、ボクも、ビアンカちゃんの秘密は二度と口にしちゃいけない。

「ビアンカちゃん」
「なぁに?」
「好きだよ」
ビアンカちゃんは一気に顔を赤くした。
「な、なによ急に!?」
「別にー。ちょっと言いたかっただけ」
照れているんだろう、ボクの手を乱暴に引っ張ってビアンカちゃんはそのまま歩く。

やっぱり、こんな感じでいてくれるほうがビアンカちゃんは可愛い。


■はい、というわけで山奥の村オシマイです。
次はついにグランバニア!
上手く行けば最終回!
長かった。長かったぞー。14ヶ月だー!(多分)
あ、次回280回か。
丁度いい感じだな、無理やりでもおわっちまおう!

……次は何書こうかなあ。
DQ3かなあ。
マザー2かなあ。
オリジナルかなあああ。
もうやめちゃうのが楽だよなあ!

コメント

nophoto
2006年2月27日23:46

えぇえぇ!?…止めないで下さいまし〜(泣)。
毎回毎回楽しませて貰っています。
…終わった後も書いて欲しいなあ、短編とか。
わがまま言ってゴメンなさい。

こーき
こーき
2006年2月28日21:03

>柳さま
やめちゃいたいです(笑)
でも、書き続けていたので、やめちゃったらそれはそれで物足りないかも知れません。
とりあえず、短編とかは別のブログにこっそり書いてますので、こっちに書くことは無いと思います。
気になりましたら、ホームからサイトにお越しくださいませ。
期待はずれだとは思いますけど。

nophoto
ニックネーム無し
2006年3月1日5:51

ビアンカにばれるんじゃないかとヒヤヒヤしました・・・・。最後の最後に大きい修羅場があったらどうしよう!と心配だったのでほっとしました(笑)

残すはグランバニアだけ・・・・・・本当に終わっちゃうんですね・・・。寂しいですが、最後まで応援してます!

こーき
こーき
2006年3月1日21:59

>ニックネームなしさま
山奥の村で、あのセリフを聞いた時には「何言うんじゃおっさん!」とか思ったものです。
あのヒミツは、ダンカンさんとテっちゃんに、墓まで持っていってもらいます。絶対いいませんよ。

本日、終わりを迎えました。
長い事お付き合いくださいましてありがとうございました。

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