■かけるうちに書いちゃおう、という作戦です。
なんか今日はすらすら文章が出てきたのです。
おお、もう終われそうじゃないか。
今週中におわれるんじゃないか?
終わりたいなあ。

■最後の部屋で (テス視点)
「えーと、あっちが開くとこっちが……」
ボクは床に座って頭のなかで部屋を動かす。左側の部屋を動かして、そこから順番に動かして……。最後に真ん中を上げたらなんとかなりそう……。
「じゃあ行こうか」


部屋を抜けると、くらい不思議な空間にでた。一本の道が曲がりくねってのびている。空間には他に何もない。
「ぼく勇者でよかったよ。だってぼくが強くなれたのってきっと勇者だったからだし……。ぼくとにかく強くなってお父さんの手伝いがしたかったんだ。お父さんに会ったときから……」
ソルがボクの手を握って言う。
「ありがとう……ボクにソルが居てくれてよかった」
「こわい……下が見えないの。ならくの底ってこんな感じ?」
マァルがボクのもう一方の手を握る。
「んー、でもどこに居てもマァルが居てくれればいい気がする」
マァルがにこりと笑う。
「いやな空気がどんどんこくなってる……。お父さん……気を付けようね」
「うん」
ボクらはゆっくり一本道を行く。道の最後は、絶壁にあいた入り口につながっていた。
ボクらはゆっくり頷きあって、その入り口をくぐる。

「また、部屋……」
ビアンカちゃんはため息をつく。
部屋はとても広かった。
壁は深い青なのは変わらなかったけど、床の色が茶色になっていた。
部屋の奥は三段の祭壇になっていて、そのまた奥に扉があった。
魔獣の像が壁ぎわに並んでいて、篝火が燃えていた。ゆっくり扉に近寄ると、二匹の門番の魔物が立ち上がってきた。
これまで見た記憶もない魔物。かなり強くてボクらは苦戦した。
が、勝てない相手じゃない。
数分もしたら、ボクらは門番を倒す。
「この扉の向こうに……いるんだね」
ソルが扉を見つめてつぶやく。
「昔の伝説の勇者だって大魔王をたおすときはきっとこわくてしかたなかったはずだよ。だからぼくはどんなにこわくても絶対に負けない!」
それから、決意を固めるように手を拳にして、少し声を張り上げた。
ボクはソルを思いっきり抱き締める。
「……」
何か言わなきゃならないはずなのに、言葉がでなかった。
「お父さん……ぼくらきっと大丈夫だからね」
「うん」
「本当はすごくこわいんだけど……お父さんといるとすこしだけこわくないの。わたし……お父さんの子でよかった……と思う。ごめんなさい上手に言えなくて」
マァルが少しうつむき加減にいった。
「うん……」
ボクは今度はマァルを抱き締める。
「うん……うまく言葉にできないね……ボクも……何か言いたいんだけど」
マァルはキュッとボクに抱きついて小さく頷いた。


ボクは皆を見る。
ビアンカちゃん。
ソル。
マァル。
ゲレゲレ。
スラリン。
ピエール。
ホイミン。
ロビン。
それから、今ココには居ないけど、たくさんの仲間たちの顔を思い出す。
ヘンリー君。
サンチョ。
マーリン爺ちゃん。
ほかにもいっぱい。
誰一人かけても、きっとボクはここまでこられなかった。
「あ……のね」
ボクは泣きそうな気分になって、皆を見る。
「ここで何か気の引き締まる気のきいたコトでも言えたらいいんだけど、なんかうまく言えないや……」
「ここでうまい事言えたらテスじゃないな」
空元気か、スラリンがそう言って笑う。ゲレゲレがその後ろで頷いた。
「……それもそうかも」
「肯定しないっ!」
ビアンカちゃんがすかさず言った。
それで何となく、皆の緊張がとける。
「そうだ、皆に聞いておいてもらおう」
ボクは思い立って手を打つ。
「何?」
「ボクの名前」
質問に答えると、ビアンカちゃんが納得したように頷いた。
「テスさんはテスさんでしょ?」
ホイミンがふわふわと首を傾げる。もっともだ、と言わんばかりにソルやマァル、ピエールが頷いた。
「グランバニアの王族は、本名は家族やごく近しいヒトにしか教えないんだ。名前は魂の一部だから」
「そんな大切なものを我々が聞いてもよろしいのですか?」
驚くピエールに、ボクは頷く。
「だって、皆大切な家族でしょ」
皆一瞬ビックリしたような顔をして、それから嬉しそうに笑った。
「ボクの本当の名前は、テッサディールって言う。意味は知らないけど、お母さんが付けてくれたんだって」
「素敵な名前でしょ?」
すかさずビアンカちゃんがほほえむ。皆が頷いた。
「お母さん、知ってたの?」
「もちろん」
ビアンカちゃんが自慢げに頷いた。
「あれ? でも、グランバニアの王族がもう一個名前持ってるってコトは……」
スラリンがソルとマァルを見上げる。
ソルはその視線を受け取って、ボクを見上げた。
「……ぼくらもあるの?」
期待した表情で、ソルとマァルはボクを見る。
ボクは頷いた。
「本当は成人の儀式に伝えるつもりだったんだけどね……」
ボクは苦笑して二人の頭を交互に撫でた。
「まあ、二人ともしっかりしてるから、いいか。……誰にも教えないって約束できる?」
「うん!」
二人とも顔を紅潮させて頷いた。
期待に胸膨らます、といった感じ。
とても可愛い。
「ソリディア」
ソルをみてなるべく優しい声で呼ぶ。
ソルはきょとんとして首を傾げる。
「マーリィシャ」
マァルに目線をあわせて、優しい声で呼ぶ。
マァルはにこっと笑った。
「……変な感じ」
ソルがぼそりと言ったのを聞いて、ボクは大声で笑う。
「その気持ちはよくわかるよ、ボクもそうだった」
「……身も蓋もないコト言わないの」
ビアンカちゃんが呆れたような声を上げた。
「……さて、緊張も解れたところで……」
ボクは扉を見つめる。
「行こう」
「うん!」



扉をひらく。
小さな地面だけが足元にあって、あとは何もない空間だった。
空も、辺りも、闇に包まれていて、空間を稲光が走っていく。
音は空間を切り裂いて、ボクらの体を震わせた。
少し離れた正面に、宙に浮かんだ祭壇のようなものがあるのがみえる。
……魔王が、そこにいるんだろう。
「まがまがしい空気がうずまいててクラクラするわ。でも私たちは負けないわよ」
ビアンカちゃんは真っ正面を見据えて、しっかりした声でいった。
「……うん、勝とう」
ビアンカちゃんはボクをみて、少し泣きそうな笑顔を見せた。
ボクらは手をつなぐ。
「ねえテス……。もしかしたら最後かもしれないでしょ? だから今のうちにきいておくわね」
「ヤなコト言わないでよ」
ビアンカちゃんは続ける。
「サラボナで誓ったこと、今でもまだおぼえてる? 私たちあの教会で永遠の愛を誓ったわよね。テス……。死ぬときは一緒よ。だけど絶対に生きてグランバニアに帰りましょうね」
ぎゅっとつないだ手に力をこめる。それから、ビアンカちゃんを抱き締めた。
やわらかい、いい匂いがした。
「……生きよう。まだ話したいコトがいっぱいあるんだ。グランバニアに絶対帰ろう」
「……うん」
ボクはビアンカちゃんにキスをした。
「愛してる、だから、生きて一緒に帰ろう」

■……ヘンリー親分の名前を度忘れして、30秒くらい悩んだ、というのはヒミツです。

本日、ソルとマァルの本名を出してみました。
マァルの本名は最後まで、本文に出した「マーリィシャ」にするか「マールディア」にするか悩みました。
ちなみにずーっと「マールディア」の予定だったのですが、ソルの本名が「ソリディア」なので、「ディア」で韻踏むのはどうなのだろう……と。
ソレじゃなくても「ソル」と「マァル」で韻踏んでるのに……。

ねえ。

次回はついに魔王と対決。
おおお、今日明日くらいで終われるんじゃない!?(ムリムリ)

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