■今日はついに、かなり重要シーンに突入です。
朝のうちは「どうかこうかなあ」とか色々考えていましたが、そのうち仕事に打ち込んで、結果何も考えないままこんな時間です。

結局いつもどおり無策です。

はてさて、どうなる事やら。
なんとなく、今日は文字数上限が増えていてよかった、とか言いそうな気がします(笑)

■お母さん (テス視点)
どうやら、ここは頂上らしかった。
空の色は相変わらずで、吹き抜けていく風が冷たい。
ごつごつと黒っぽい茶色の石で出来た山肌。地面は歩くためなのか平らにされている。平らな地面、とはいえ後は断崖絶壁。勿論手すりなどないし、道幅も言うほど広くは無い。
気を抜いたら……考えるのも嫌になるような目に遭うだろう。
崖と崖は粗末なつり橋でつながれている。
マァルが憂鬱そうにため息をついた。
「ここが山のてっぺんかな?思ったより広いね」
ソルが辺りをキョロキョロと見て言う。
ボクは頷いた。
「それに何だか変な形。遠くから見たときはもっと尖って見えたのにね」
そんな事を話し合っていたら、ビアンカちゃんがボクのマントを少し引いた。
「ねえテス! 聞こえない? ほら……どこからか祈るような声……」
ビアンカちゃんは人差し指を口元に持って行った後、小さな音も聞き逃さないようにするみたいに、両手を耳に持っていった。
ボクも倣って耳に手を当ててみたけど、風の音が聞こえるばかりで分からなかった。
「ごめん、分からない」
「うん、私ももう聞こえなくなっちゃった」
ビアンカちゃんも首を傾げる。
「ただ、急いだほうがよさそうだね」

足元が不安定なつり橋があるから、スライムにまたがっているピエールはちょっと危なそうだった。
頂上を歩くときだけ、ピエールには馬車に入ってもらって、代わりにビアンカちゃんが外を歩く。
「やっぱり歩くほうが性に合ってるわ」
ビアンカちゃんは大きく伸びをしてから言うと、マァルの手を握った。
「つり橋の間は目をつぶっていていいわよ。私が手を引いていくからね」
「うん」
きしんだ音を立ててたわむつり橋を慎重に渡る。
途中で下を一度だけ除いてみたら、空と同じ重苦しい灰色と紫の何かが広がっているのが見えた。
道はだらだらとした長い登り坂になっていた。
元々あった崖に沿って道を作ったんだろう、少し蛇行しながら道は続く。二度つり橋を渡ったところで、目の前に洞窟へ続く入り口が見えた。
ざっと見た限り、他にルートはなさそうだ。
ボクらはそのまま真っ直ぐ入り口をくぐる。
中はコレまで歩いてきたのと同じ、深い青色の壁と白い床の人工的な建物に繋がっていた。
「あら、また建物ね」
ビアンカちゃんは辺りを見てため息をつく。
「なんか、正しい道を歩いてるのかどうか、わかんなくなってきたね」
「……魔王に会えたら正解ルートだよ」
「うーん、なんかそう言っちゃうと微妙ね」
ボクらは軽く笑いあってから歩き出す。
道は一つしかない。ただの通路なんだろう。
行き止まりにのぼり階段が一つあるだけで、随分シンプルなつくりだった。
「お婆様待っててね。もうすぐみんなで助けに行くから……」
マァルが階段をあがるときに深呼吸した。
 
 
階段をあがると、また山の頂上へ出たようだった。
一気に視界が広がる。
目の前には紫が濃くなった灰色の空。
そして、
その空をバックに、真っ白な石を積み上げてつくった祭壇が見えた。
その祭壇だけ、本当に真っ白で魔界にそぐわない。
気分の悪い色の空に、ぽっかりと浮かぶように見えた。
祭壇の上には誰か髪の長い女の人が立っているのが見える。
そしてその祭壇に登るための階段のところに、ダークシャーマンが二人居るのが見えた。
「……っ」
ボクは暫く立ち尽くす。
何か、今まで感じた事の無いような感覚が、背中の辺りを駆け抜けていくのが分かった。
左腕に重みを感じてみてみると、ビアンカちゃんがボクの左腕をギュッと握っていた。
目が合うと、ビアンカちゃんは無言で頷く。

言葉は要らない。

あれは。

お母さんだ。

ボクらは足早に階段を目指す。
ボクらに気づいたダークシャーマンが、その蛇になっている腕を戦いに備えて振りかざしながら口々に叫んだ。
「何だお前たちはっ!?」
「今マーサ様は我らが魔王ミルドラース様のために祈りをささげているのだ。ジャマするやつはこうしてくれるわっ!」
「煩いお前等こそ邪魔だ!」
言い返すと、途端に彼等はボクらに襲い掛かった。
コレまでソルのおかげで魔物と戦っていなかった事と、もともとそれほどダークシャーマンが敵ではなくなってきていることもあって、ボクらはすぐに彼等を振り払う。
それから、階段をのぼろうと祭壇を見上げる。

その時、声がした。

「テス……テス……」

ボクを呼ぶ声。
小さいけど、優しい声。
声と一緒に、ボクらをやさしい光が包みこむ。
さっきの戦闘でつくった怪我が治っていく。
疲れがなくなっていく。

ボクは祭壇を見つめる。

ゆっくりと階段のほうへ向かいながら、
その髪の長い女の人は。
お母さんは、
ボクを見てにこりと微笑んだ。

どうしてだろう。
初めて会ったのに、お母さんだって分かる。

「ああ……テス……テスですね……」

ボクは何も言えずに、ただコクコクと頷いた。

「母はどんなにかあなたに会いたかったことでしょう……。私がさらわれたあの日以来、あなたのことを考えぬ日はありませんでした。テス……。なんと逞しく成長したことでしょう……。今こうしてあなたに会っていることが、まるで夢のようです……」

お母さんはそういって、自分で自分を抱きしめるような仕草をした。
もし、幸せに形があって見えるものだったら、それを抱きしめているのが見えただろう。

「もうこの母はなにも思いのこすことはありません」

ボクは耳を疑った。
何を言ってるんだろう。
お母さんは、これからボクらと一緒にグランバニアに戻って、
ずっと幸せにすごすんでしょう?

お母さんは両腕を解いて、ボクを見てもう一度微笑む

「テス……。大魔王ミルドラースの魔力はあまりに強力です。せめて……せめてこの私が、この命にかえてもその魔力を封じてみせましょう」

お母さんはボクらに背を向けて、あの空に向かって両腕を広げた。

「全知全能の神よわが願いを……
お母さんは最後まで言葉を続けられなかった。

突然
大きな火球が空に現れて
そのままお母さんを

何も聞こえなかった。



忘れるもんか

あのときとおなじ



あのときとおなじ


あの火球を。


すーっと音もなく、空からおりてくる
あのときとおなじ
その姿を。

ヤツはまだ、こちらを見ない。
倒れたお母さんを見て、肩をすくめているのが見えた。

「ほっほっほ。いけませんね。あなたの役目は大魔王様のためにトビラを開くこと……。……でもまあよいでしょう。親が子を想う気持ちというのは……いつ見てもよいものですからねぇ」

そこまで言って、ヤツは
ゲマは振り返る。

にたり、嫌な笑いを顔に貼り付けて。

全身の血が、逆流してるんじゃないかと思う。
体が熱い。
息が苦しい。

お母さんは大丈夫だろうか。

ヤツが憎い。

「さて……。ついにここまで来てしまいましたね。テスとその仲間たちよ」
ゲマはじっとりとボクらを見た。
「それに伝説の勇者までのこのこやって来るとは」
ヤツは軽く鼻で笑う。
「……しかし全てはこの地で夢と消えるのです。もはやミルドラース様にお前の母の魔力などいりません」
ゲマはちらりとお母さんを見てから、ボクらに視線を戻す。
「今ここで私が、お前たち親子を永遠の闇へお送りしましょう」
そういって、ゲマは圧倒的勝者の顔で笑った。

自分の中で、何かが弾け飛んで行くのが分かる。
この感情は何だろう。
ゲマが憎い。

憎い。

憎い。

「うああああああああああああああああっ」

ボクは叫ぶ。
もう、感情は言葉にならなかった。


■やっぱり3000字越しました(笑)
ありがとうだいありーのーと!

で。
ゲマ戦突入です。
ある意味最終戦闘みたいなもんです。
感情的にはミルドラースはオマケみたいなもんでしょう(言いすぎ)

なんか書いていて息苦しかったです。

最後のテスの叫び声は当初「ぶっ殺してやる!」でした。
普段の彼なら考えられない言葉ですが、実際以前ジャミとの戦いの時には言ってるんですよね。
基本的にパパスの仇に対しては凄く言葉遣い悪いです。
普段隠してるどす黒い感情を全部噴出させる勢いです。

けど今回、なんかその言葉すら嘘っぽいな、と思いました。
もっと言葉にならない本能的な嫌悪感とか憎しみとか混じってて、もう「人の言葉」にはならないんじゃないかと。
父親だけでなく、母親までもですから。
で、ああしてみました。

次回は実際ゲマと戦います。

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