■さて、どうしようか。
というのもですね、本日、こちらの「Diary Note」さんが頑張ってくれたらしく、文字の上限が変わったんですよ。

3000字→10000字。

三倍以上かよ。頑張りすぎだよ。どうしてくれようか!(笑)
とりあえず、3000字でやってきたし、そのくらいが一番読みやすいんじゃないかと思うのでコレまでどおり3000字くらいで行きたいと思います。

皆1万字も何書くんだろう。

■もう一回 (テス視点)
魔界での、朝が来た。
目が覚めても寝るときと同じ薄暗さなのがとても嫌だ。どうしても、人生の大半をつながれていたあの場所を思い出す。
息が苦しい。
ボクはベッドの中で体を丸めて、暫く目をギュッと閉じて耳を塞ぐ。落ち着くために頭の中でゆっくりと数を数えて、百まであとちょっとのところで体をゆすられた。
「大丈夫?」
ゆっくり目を開けると、ガラス色が目に飛び込んできた。
綺麗な蒼。
好きな色。
「ねえ、うなされてたよ?」
「……大丈夫」
かすれた声で答えて、ボクはビアンカちゃんの頬に触れた。
実物。
「大丈夫。ちょっと嫌な夢をね……」
ため息交じりの声で答えて、体を起こす。
窓の外は相変わらず、べったりとした重い灰色の曇り空。
ビアンカちゃんも窓の外を見てため息をついた。
「憂鬱よね」
「うん」
「もし、魔王が私たちの世界に乗り込んできたら、あっちもこんな風になっちゃうのかしら?」
「かもね」
「……嫌だなぁ」
「うん」
ボクらは暫く手をつないで、そのまま窓の外を見る。
「ま、そうならないように頑張りましょう? ともかく、エビルマウンテンだっけ、そこへ行けばお義母様も居るわよ」
「なんで?」
「昔から、捕らわれのお姫様は一番偉いヤツの隣に座らされてるものよ? 私もそうだったでしょ?」
「……お母さんもビアンカちゃんもお姫様じゃないでしょ」
ため息混じりに言ったら、思いっきり蹴り飛ばされた。

 
ジャハンナの入り口であるハシゴをおりて、皆と合流した。
「とりあえず、地図を手に入れたからちょっと説明ね」
ボクは貰った地図を広げて地面に置く。
「今、ここ。ジャハンナの町ね」
ボクは地図の南にある小さな町を指差した。
「それから、目指すところはここ」
今度は地図の北側を指す。
陸地の果てにある、大きな岩山。
「エビルマウンテン。……敵の本拠地」
皆が、誰かに言われることなく北の方角を見た。
ここからでも、うっすらと小さくその山を見ることが出来る。
うっすらと小さくしか見えないのに、その存在感は圧倒的だった。
「で」
ボクは山から目をそらして息を吐いてから続ける。
「今更なんだけど、ちょっと確認したい事があるんだ」
皆が不思議そうにボクを見た。
「つまりさ、魔界へ来たときは旅の扉のある祠についたでしょ? でも、ボクらは移動が出来る魔法としてルーラがある。妖精の村からはルーラで戻ることが出来たよね? 世界がちがってたみたいなのに。ということは、魔界からもルーラで戻れるんじゃないかな?」
「あ、ソレは試してみたほうがいいかもしれないわね」
すぐにビアンカちゃんが頷いた。
「でしょ? もし戻れるなら色々便利だし……あと」
「あと?」
「もし、海の神殿に捧げた指輪が回収できるなら、したい。それで入り口が閉じてルーラで来られなくなったらまた捧げたらいいんだし……」
「ソレはうまくいかないんじゃない?」
マァルが少し眉を寄せる。
「やってみて駄目だったら、それまで」
「そうよ、やってみましょ? 私もあの指輪は取り戻したい」
「じゃあ、決まり。とりあえず、エルヘブンを目指そう」
ボクは小さな声でルーラを唱える。

目を開けたら、エルヘブンの前に居た。

「あら、成功? お日様が気持ちいいわねー」
ビアンカちゃんは思いっきり伸びをして、深呼吸した。
「太陽って素敵!」
マァルもビアンカちゃんを真似して大きく深呼吸する。
ボクも空を見上げた。
抜けるような青空。
綺麗だ。
「さて、それじゃ指輪の回収に行きますか」
「うまくいけばいいんだけどね」

 
神殿は相変わらず水の音が反響していて、不思議な雰囲気に包まれていた。
女神像はちゃんと指輪を手に載せたまま変わらずにある。
その奥に、魔界へと通じる真っ暗な空間がまだ口をあけていて、相変わらず光の粒を飲み込んでいっていた。
「……あれ見ると緊張するね」
ソルがボクの顔を見上げる。
「うん。でも、皆で居れば恐くないね」
「そうだね」
ソルが笑う。
「お父さん」
「ん?」
「一緒って、いいね」
「そうだね」

ボクはソルの手を握る。
小さいけど、暖かい。
そういえば、小さいときお父さんの手を握るのがスキだったなって急に思い出した。
あんまり成長して無いのかも。
内心苦笑しながら、ボクは水のリングを捧げた女神像に近寄った。
その手の中に、青い輝き。
そっと手に取ると、向こうにある魔界への入り口が小さくなっていって、やがてなくなった。

「ビアンカちゃん」
隣に居る彼女に笑いかけて、それから左手をとる。
「これからもよろしく」
言いながら、薬指に指輪を嵌める。
細くて長い、白い指に青い輝きはとても良く似合う。
「ありがとう」
ビアンカちゃんは頬を染めて笑うと、ボクの事をぎゅっと抱きしめた。
「あーあー。もう、テスとビアンカはいつまでたっても恥ずかしいなあ」
スラリンが足元でため息混じりに言った。
「あら? いいことでしょー?」
ビアンカちゃんは余裕の表情で笑うと、炎のリングと生命のリングをスキップして持ってきた。
ボクは受け取るために手を差し出した。
「テスも左手」
「え?」
「早く。自分は平気でやったくせに、どうして恥ずかしがるのよ」
「……いや、何となく」
視線を合わせないようにちょっとそらしながら、ボクは左手を差し出した。
「こっち見なさいよ」
「はい」
呆れたように言うビアンカちゃんに逆らわない事にして、ボクはビアンカちゃんを見た。
目が合うと、ビアンカちゃんはニコリと微笑んだ。
それからボクの小指に生命のリングを嵌めてから
「ずーっと仲良しでいようね?」
そういって、薬指に炎のリングを嵌めてくれた。
ソルが指笛を鳴らして、マァルは拍手をする。
「……恥ずかしい」
「先にやったのはテスよ」
ビアンカちゃんは笑うと、ボクの手を握る。
「今度こそ、ずっと一緒よね?」
「勿論」
小声に小声で返して、ボクは少し笑う。
「コレで結局魔界に戻れなかったら、なんか恥ずかしい分損だよね?」
「そう? 私は幸せな気分になれただけでもラッキーだと思うわ」
「そうかな?」
「そうよ」
ビアンカちゃんは済ました顔で笑うと、ボクを見た。
「うまく行くといいね。私これはずしたくないのよ」
「ボクもだよ」

 
結論から言うと、目論みはうまくいった。
行き先をちゃんと想像できれば、きちんとつけるのがルーラのいいところだ。
扉が閉まってるはずなのに、とか、そういうことは考えない事にした。


■はいはい、小休止みたいな話で申し訳ありませんでした。
でも魔界に行ってから指輪を取り返しに行ったのは事実ですから。
あくまで「小説風」の「冒険日記」ですから!(言い張る)

……封印の洞窟も魔界に行ってからマント取りに行きました。そっちはもう話としては端折る事にしますけど。

ともあれ、妙に気恥ずかしく、何を書けばよいやら色々困ってしまって随分時間がかかりましたが、何とかまとまってよかったです。
次回からは真面目にエビルマウンテン目指そうと思います。

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索