■そろそろ女神様ご帰還なせいか、書いていて「早く先に進みたい……!」と思うようになって来ました。
とはいえ、女神様ご帰還はちょっと危険な香り。
私、そこで燃え尽きないでしょうか……。
思えば女神様と結婚、の時ももう燃え尽きて続き書きたくなかったんですよね。何とか続けましたけど。書きたいことそれなりにまだ残ってたし。
これから先……。うーん、前途多難な予感。
 

■大神殿 8 (テス視点)
ヨシュアさんの居た部屋を後にして、ボクらは道を進む。コレまでと同じように、二層構造になっていて一見ややこしいけど、実は一本道になっている通路を、ただ進んだ。
誰も何も喋らない。
通路を抜けきると、また神殿内部に入ったとき、最初に到着した広い空間に出た。コレで三回目になる。
道は一本で、空間のちょうど中央にある場所に続いているようだった。これまで、その高さとまわりを囲む壁とで中が見えなかった部分が、漸く見えるようになってくる。
底は、さらに地下へ進むための入り口になっていた。四方を壁に区切られた小さな床に、ただ下る階段だけが作られている。
その奥からは、何か邪悪な気配のようなものが漏れ出してきているように感じた。
「当たりってかんじ?」
ボクがボソリとつぶやくと、ソルが頷く。
「お父さん気をつけてね。下からすごくイヤな気配を感じるの」
マァルが顔をしかめてうめく。
「うん、ゆっくり行こう」

 
階段を下りた先は、今までと雰囲気が違っていた。
白い床の上に、青と銀色で織られた綺麗な絨毯が敷かれていた。随分装飾の細かい絨毯。ただ、部屋の奥にはまた醜い銅像が並べられている。
次の部屋に続く入り口には、竜戦士が立っている。
ヤツはボクらに気づくと、剣を構えた。
「大教祖イブール様は只今瞑想中であられる! お前たちが誰であろうとイブール様のジャマはさせぬぞ!」
ボクらも剣を抜いて戦いの準備をした。
「邪魔をするな!」
叫び声とともに、竜戦士が襲い掛かってくる。何度も戦った相手で、そしてもうボクらの敵ではない相手。それが一匹で向かってきてもボクらにとっては大した問題にはならなかった。
すぐに倒して、ボクらは入り口を抜ける。

広い部屋だった。
壁沿いには綺麗な柱が並び、篝火が焚かれている。
部屋の中央には祭壇のようなところがあって、他のところより一段高くなっていた。
その中央に、ヤツは居た。
ヤツはボクらの気配に気づいたのか、ゆっくりとこちらを見る。
赤い帽子を被って、随分派手なローブを着ている。背は高い。手には背よりも高い金色の杖をもった、緑色の皮膚をした怪物。ちょっとワニに似てる。ゴテゴテに飾り付けたワニを、無理やり立たせたらこんな感じになるかも。
ともかく悪趣味で、気持ちが悪い。
ヤツは不愉快そうに細めた目でこちらを見ると、大袈裟にため息をついた。
「ほほう、ここまでやって来たとは……。その様子では、どうやらワシの1番の片腕ラマダを倒してくれたようだな。ワシの苦労の甲斐もなく伝説の勇者などというたわけた者も生まれたらしい」
そういって、ヤツはソルを見た。そしてまた大きく大袈裟なため息。
「ここまでは神の筋書き通りというわけか……。しかしそれもこれもここでおしまいじゃ。これより先の歴史はこのワシが作ってやろう」
ヤツは杖で、カツンと床を叩く。随分大きな音がした。
「さあ来るがよい。伝説の勇者とその一族の者たちよっ!」
ソレが戦いの合図になった。

イブールはワニに似てるくせに随分と知性があるようだった。
考えてみれば教団の教祖をするくらいだ、当たり前かもしれない。随分魔法に詳しいらしく、マァルが使う最高の攻撃魔法イオナズンも簡単に使ってくるし、身も凍るような輝く息で攻撃してくる。
そのくせマホカンタを使ってこちらの攻撃魔法を跳ね返すから、マァルは攻撃魔法を唱える事すら出来なかった。
こちらは相手の攻撃を軽減させるためにスクルトやフバーハを使っているのに、ソレを打ち消す凍てつく波動で攻撃してきたりする。
流石に厄介な敵。
「凍てつく波動が来たら、攻撃より補助優先で!」
攻撃を優先していたソルに頼んで、回復をピエールに頼む。
攻撃はきつかったし、戦いの終わりはなかなか見えなかった。
けど、数が圧倒したのか、じわじわと、次第にボクらがイブールを押し始める。
そして、ソルの攻撃がヤツに止めを刺した。

ゆっくりと、イブールは後ずさる。
肩で息をして、そのくせ目だけはギラギラとしたまま、ボクらをにらみつける。
ボクは左手のバングルをはずした。そこに刻まれる焼印を見せてボクは口の端を吊り上げる。
「お前が所有してたドレイが、お前を破滅させるんだ。今の気分は?」
「う、煩い……」
イブールが叫ぶと、口から血があふれ出した。
「これが……こうなることが……運命だったというのか……」
つぶやくように言うと、ヤツは天を仰ぐ。
「すべては我らが神、大魔王ミルドラース様の予言通り! テスよ。お前の母は暗黒の魔界ミルドラース様の元にいる。母を助けたくば魔界にゆくがよい。しかしそこでお前とその一族は滅びることになるのだ。今このワシが魔界への道を通じさせてやろう。大魔王ミルドラースよ! このワシに最期の力をあたえたまえっ!」
イブールは手にしていた杖を大きく振りかざす。
部屋いっぱいに金色の光があふれ出して、けど、それ以上何も起こらなかった。
イブール自身にも、ソレは予想外の事だったらしい、キョロキョロと辺りを見回している。
「そんな……バカな……」
「ほっほっほっほっ……。いつまで大教祖のつもりでいるのですか?」
あの独特の笑い方とともに、ゲマがイブールの背後に現れる。
あの時の傷はボクら同様流石に癒えたらしい、いつものあの冷たい威圧感と共に、冷たい瞳をイブールに向けた。
「ゲマ! ワシに対してそのクチの利き方はなんだ?」
ゲマはやれやれ、と言った感じに首を振る。
「まだ分かっていないようですね。あなたにはただカタチだけの教祖として人間たちを集めるお仕事をしてもらっただけですよ。しかしその役目も、もうおしまいでしょう」
「そんなはずは! ミルドラース様は……」
イブールは動揺したように叫ぶ。
ゲマが腕を大きく振り上げた。その手の中に大きな炎の球が出来ていく。
雷の轟くような音と一緒に、その炎はイブールを包み込んだ。叫び声をあげながら、イブールは燃えていく。
ボクは何も言えずにただ、その様子を見ているしかなかった。
「ふん。役立たずは最後まで役立たずですね……」
呟くように言った後、ゆっくりゲマがこっちを向く。
「テスとその仲間たちよ。今は好きにするがいいでしょう。その方が後でいっそう悲しみを味わうことができますからね」
にやりと、嫌な笑い方をした後、ゲマはいつもの高笑いと共にボクらの前から姿を消した。

暫く何も言えなくて、ボクらはただ呆然と立ち尽すしかなかった。


■ハイハイ、大神殿も終わりに近付いてまいりました。
ゲマは本当に悪いですね。大嫌いです。
それにしても大神殿、長すぎ。もういや……。
ああ、でも次くらいには女神様が……!(笑)
一人飴と鞭で頑張っていきます。
 

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