■昨日、友人に「大神殿5」にミスがあることを指摘して貰いました。
直しておきました。
格好ワルい。
でも、私らしくてちょうどいい、とも言う。

……その後、他の話にも目を覆いたくなるようなミス発見。
もう、穴に入るどころでは済まなさそうだ。

他にもミスを発見された方は、どんどん突っ込みいれてやってください。

■大神殿 6 (テス視点)
隠し階段をおりた後、暫く見覚えのある構造の部屋が続いていた。
向かい合わせになった広くて長い下り階段。
土がむき出しになった、広い空間。水が流れているのは、多分あの水牢の名残だろう。
ボクは一番前を歩きながら胃の辺りをさする。
気分が物凄く悪い。
この広い空間を作るために、毎日大きな岩を動かした。邪魔な岩を砕き、おろす作業で下敷きになって人がいっぱい死んだのは、この辺りじゃなかったっけ。
足元を見ても、もう血の色なんて残ってないけど、今でも生々しく目の奥に焼きついている。

辺りはとても静かで、次の部屋に行くための入り口のあたりには篝火が焚かれていてとても神秘的に造られている。
この空間の、この静けさは嘘だと思った。

怒声と悲鳴と、作業の音。
土ぼこりのニオイ。血のニオイ。
あれがここの本当の姿なのに。

全部覆い隠して、嘘で固めて、ここは存在している。

「お父さん大丈夫?」
ソルがボクを見上げる。
「……うん、大丈夫」
無理やりでも笑う。
不安はどんどん伝播する。だからどれだけ辛くても、ボクはソレを表に出しちゃいけない。
それじゃなくても、子どもは敏感だ。
「大丈夫」
もう一度言って、ボクは深呼吸する。
ここで負けてるわけには行かないんだ。

 
ここから先は本当に知らない場所だ。ここに居て神殿を作らされていた時だって、どのくらいの規模のものを造るのかは教えられなかった。ただ、命令通りに動いていただけだったから、最終形がどうなるかなんて、全然知らないで動いていた。
ただ、多分複雑怪奇な建物になっているだろう。
そして、その一番奥に、憎むべき相手が居る。
深呼吸してから篝火の横をすり抜けて、次の空間に入る。

眩しかった。
「うわぁ……」
後ろでソルとマァルが驚きの声を上げている。
無理もない。
神殿の奥は、とても綺麗だった。
白い床、白い壁、白い柱。
そのどれもが、ピカピカに磨き上げられている。柱には金で装飾がされていて、それも妙に品がいい。
眩暈がした。
嘘の積み重ね。
血も、悲鳴も、命も。全部塗り固めて綺麗に磨き上げられている。何も無かったかのように。
「主殿」
ピエールの声に、ボクは少し下を見る。
「少し休みますか? 顔色がとても悪いです」
「……長く居たら居るほど、多分悪くなるから、行こう」
ボクは胃を押さえてうめくように言う。さっきから吐き気が止まらない。そんなボクを見て、ピエールは何か言いたそうだったけど、すぐに頷いた。
「では、急いでまいりましょう」

目の前には幅の広い登り階段があって、その両脇には禍々しい翼を持った醜い像が置かれていた。
「気味が悪いね」
マァルはその像を見て首をすくめる。
「ホントだね」
ボクは頷くと、目の前の階段を上がる。随分広い空間で、どうやらこの場所は二層構造になっているみたいだった。奥のほうが良く見えない。
正面には、ボクの腰辺りまでの低い壁があって、奥の通路とこちら側を分けていた。入り口にみなされているのは二本の柱で、その柱の間を通って向こう側の通路に出てみることにする。
右も左も、随分長く続いているようで、先がどうなっているのかわからなかった。
「どっちがいい?」
ボクが聞くと、ソルが「じゃあ、右」と答える。その言葉に従って右に進んでみたら、突き当りで左に曲がったところで通路は行き止まりになっていた。
仕方が無いから元の場所まで戻って、今度は左の通路を進む。こちらもやはり突き当たりで右に曲がって、少し進んだところで行き止まりになっていた。
「……どこか見落とした?」
ボクが尋ねると、皆が首を傾げる。
「どうやら奥へ進めば正解ってわけでもないみたいだね」
ボクらは仕方なく元来た道を戻る。
低い壁のあった場所に戻って、階段に腰掛ける。
「えーと、ここの階段から向こうの通路は全部行き止まり」
ボクは言いながらメモを書き始める。
「あ、ねえお父さん、あっち側もいけそうだよ」
マァルの声に顔を上げると、彼女は低い壁のこちら側、階段を上ってすぐを右に曲がった通路の先に立っていた。
「すぐ行き止まりみたいだけど、階段が付いてる」
「ホント?」
ボクは言われたとおりメモに書き加えてから立ち上がる。
行ってみると、確かにすぐ行き止まりになっているけど、その端っこに隠れるようにして下りの階段が付いていた。
「きっとあれだね」
ボクが言うと、マァルが頷く。
「最初の隠し階段とか、ここでのわかりにくい階段とか……きっとここの教祖は恐がりなのね」
「臆病者だよね!」
ソルも頷く。
「さらに言うと卑怯者です」
ピエールが付け加えると、ソルもマァルも深く頷いた。
「さあ、行こうか」
ボクは階段を下りる。

 
階段の先には小さなL字型の部屋に続いていて、すぐに次の部屋に続いていた。
次の部屋はすぐ隣の小部屋に続く入り口が右側にあって、左側には登りの階段が造られていた。
どうやらここも二層構造になった広い空間を無理やり仕切っているみたいだ。
階段をのぼると、暫く一本道の通路が続いていた。通路を隔てているのは、やっぱり腰辺りまでの低い壁になっている。
行き止まりまで歩いて、突き当りを右側に曲がると、通路は唐突に終わって、下の層へ続くはしごだけが作りつけられていた。
ソレを使って下の層に降りると、また狭い部屋になっている。
「狭かったり広かったり登ったり降りたり大変だよね」
ソルがげんなりしたような顔で言う。
「ホント。凄くややこしいよね」
ボクは同意してから、ここまでの地図を簡単にメモ書きする。
はしごのすぐ左側に、隣に続く入り口があった。覗き込んでみると、向こうの部屋もすぐまた次の部屋に続くらしく、入り口が見える。
「どうやら、奥へ進めそうだね。このまま行こう」
ボクはメモをしまうと、皆の顔を見る。
別に疲れた様子はないし、まだ大丈夫そうだ。
今、一番大丈夫じゃないのは多分ボク自身だろう。
「お父さんは大丈夫?」
マァルの言葉にボクは頷く。
「大丈夫。心配要らないよ」
マァルに向かって頷くと、ボクは隣の部屋への入り口をくぐった。

この一歩一歩が、ビアンカちゃんの無事に繋がっている。
この道のりが、憎いここの教祖を倒す事に繋がっている。

そう、ボクは前に向かって進んでいる。
過去を忘れる事は出来ないけど、もう、恐がってばかりの時間は終わるんだ。

きっともうすぐ、この手で全部を取り戻せる。


■……何か、やっぱり迷宮系はどうやって書くものか迷いますね。道には迷わないんですけど。

とりあえず、次はちょっと盛り上げていきたいです。
……盛り上がるかなあ?
 

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