■タイミング悪いなあとか思いながら書いてます。
ナニについてタイミング悪いとか聞かないでください。
それが親切心ってもんです(笑)

■遠い町で 1 (テス視点)
一体何が起こったんだろう。ボクは辺りを見回して途方に暮れる。
ここは、サンタローズ。それは間違いない。見間違うわけがない。
けど、ここはあまりにも記憶のとおりすぎて。
今の、あの打ち壊れたサンタローズではなくて。
「……」
それにしても肌寒い。太陽はずいぶん高いところにあって、まだ昼間みたいだ。なのに、この寒さはなんだろう。さっきまで夏が近くて、かなり暑かった。それが今は寒くてくしゃみが出そうだ。
なんだか、季節がよくわからない。一瞬で冬になったみたい。一瞬でサンタローズが元に戻ったくらいだ、季節くらいかわるかもしれない。ボクは変なふうに納得してしまうことにした。

ボクは仕方ないから宿屋に向かって歩き始める。
川にかかった橋が、ずいぶん低い気がする。川はこんなに浅かっただろうか。澄んだ水の奥に川底が見える。
宿に入ってボクは面食らう。店番をしてる人を、ボクは知っていた。まだ子どもだった頃、宿で毎日店番をしていた、宿屋の息子さんだ。
「あぁ、すいませんね、まだお部屋を掃除中なんですよ、お客さん。もうちょっと外で時間つぶしてきてくれませんかね?」
ボクをみて彼はそんなことを言って、申し訳なさそうに頭を下げる。
「それにしても、この落書きはいつされたのかなぁ」
外に出かかっていたボクは驚いて足を止める。
「宿帳に……落書き……ですか?」
「えぇ、一体誰でしょうね、困ったもんです」
「……あの、最近ほかにもかわったことが?」
「パパスさんとこのテスが変な猫連れて歩くようになったね」
「……その子、いくつですか?」
「確か、六つじゃなかったかな」

ボクはお礼を言って宿を出る。
ここはサンタローズ。
昔の、サンタローズ。
ボクがまだ小さい頃、ベラと一緒に妖精の国に行った、ちょうどその頃だ。
なるほど、「時の流れを変えることがテスにはできるかも知れないのです」って妖精の女王さまの言ってたのはこういうことだったのかも。

思い出した。
昔、小さかった頃。
ボクは、ボクに会ってた。
教会前。
きれいな宝石をみたいって言う「お兄ちゃん」に会ったんだ。
あれは、きっと。

「……」
ボクは空を見上げてため息を吐く。

ここですることが、すべきことが、しなきゃいけないことが。
わかった。

たぶん、ここにくることはもう二度とないだろう。
ボクに出会うまで、村の中をゆっくりみて回ろう。
ボクは村の真ん中でぐるりと見渡す。
川も、木々も、建物も、すべてが懐かしくて、すべてが淋しい。
もう少ししたら、なくなってしまう景色。
けど、言えない。
今言ったところで、誰も信じない。今言ったら、ここの幸せを壊すだけ。不吉なことを言って、みんなを不安にしても仕方ない。

ボクは、今ここでも、何もできない。
いつも、助けたい人は助けられない。
無力だ。
いつだって、なんだって、後手にまわって。

……結果がわかるのに。

何も言えないなんて。

ボクは村の中をゆっくり歩く。いろんなものが記憶より小さい。高かった壁も、深かった川も、村の広さだって、全部違って見える。。
こんなに小さくて、狭かったんだ。
あの頃、すごく広かったこの村は。
いろんな思い出がつまってて、そのままの形で残ってて。
……今はもうない。

もし。
脱走して辿り着いたサンタローズが、この姿と同じだったら。
ボクはどうしていただろう。
あの時思ってたように、やっぱり家を拠点に旅をしていたんだろうか。
そうしていたら、どうなっていたんだろう。
ビアンカちゃんには会えただろうか?
グランバニアには辿り着いていただろうか?
ソルやマァルは居ただろうか?

たぶん、今のようにはなってなかった。
サンタローズがなくなったのは淋しいけど、だからこそボクは旅を続けられたんじゃないだろうか。
あの時はどこにも居場所がなくて、ずっと居場所を探していた気がする。
ビアンカちゃんのそばがボクの居場所になって、
二人での居場所がグランバニアにあって、

今は

家族でその居場所で笑って暮らすために、旅をしてるんだ。

ボクは、自分の家をみあげる。今頃は、きっとお父さんが二階で本を読んでいる。
お父さんは、お母さんを探し出したら、どうしたんだろう。
もしかしたら、グランバニアには戻らないで、ここにずっと住むつもりだったのかもしれない。
ここは、本当に住みやすくて居心地がよかったから。
きっとお母さんに、いろんな世界を見せたかっただろうから。

「……」
ボクは大きく息を吐いた。
少し視界がゆがんでる。
胸の奥のほうがざわついてる感じ。
なきそうだ。
ごめんねヘンリー君、今だけラインハットを恨ませて。

ボクはしばらくの間、橋の欄干に座って時間がたつのを待った。
ときどき吹き抜けていく風はやっぱりつめたい。
今のボクには見えないけど、今頃ベラは誰かの気を引くために一生懸命いたずらをしてるんだろう。
もしかしたら、この橋を今走り抜けて行ったかもしれない。
ここはここで、時間が流れてる。
たぶんボクにできることなんて、ほんの少しだ。
ボクから、今のボクに必要なものを受け取るだけ。
きっとあがいても、決まったことはかえられない。
みんな、今を必死に生きてる。
だから、ここでこの先起こることがひどい事でも、ボクに邪魔する権利はない。

そう思うと、気持ちが少しだけ楽になった。
ボクはボクに出来ることを精一杯しよう。
そしていつか、今のサンタローズに出掛けていこう。
少しでも、復興の手伝いをしよう。
それが、ここで育ったボクに出来るたったひとつの恩返しだろう。
全部終わらせたら、ここに戻ってこよう。
今の壊れる前の姿を、全部覚えていって、そして。

ボクはゆっくりと立ち上がる。
記憶が正しかったらそろそろだ。
教会の前で、ボクはお兄ちゃんに会わなきゃいけない。


■わかっていて引き伸ばしています。
ここ、山場ですからね。ながーく引き伸ばして書いていこうかと。
そのぶん自分の首をしめることになるのはわかるんですけどね。
期待とかはしないでください。きっと裏切ります。

で。
どっかで読んだ話だったと思うんですが、サンタローズって大人になってから行くと、少しマップが小さいそうですね。
言われてみればそんな気がしないでもないというか。
というわけで、今回テっちゃんにはサンタローズをやけに小さく感じてもらいました。

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