■「今日のDQ5」で好きなセリフの人気投票やってます。
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微妙に得票増えてます。ありがたいことです。
「一つに絞れない」といわれてます。適当でいいですよ、こんなお遊びは。

■吐露 (サンチョ視点)
「失礼します」
声をかけて部屋に入る。
部屋はカーテンが締め切られ、薄暗かった。
坊っちゃんは部屋の真ん中のソファに、膝を抱えて、その膝に顔を埋めてじっとしていた。
「坊っちゃん」
声をかけると、坊っちゃんはのろのろと顔をあげて、かすれた声で「ああ、サンチョ」と言った。
顔には生気がなく、目が濁って見える。
「ごめん、もう大丈夫。行かなきゃね、ダメだから。次に行くところは……」
「大丈夫じゃないです!」
立ち上がってぼそぼそ言う坊っちゃんの肩を押さえて、私はたまらず叫ぶ。
「大丈夫な人がそんな顔をするもんですか!」
私が言うと、坊っちゃんは何を言われているのかわからない、といった顔をした。
「大丈夫だよ」
そう言って、弱々しく笑う。
無理矢理。
表情のない顔で笑うから、とても痛々しい。
坊っちゃんは、たぶん、私の知らないところで、こうして無理に笑うことでいろんな事を諦めたり、やり過ごしてきたんだろう。
「大丈夫」そんな言葉で全部まとめて、心の奥にしまい込んで、無かったことにして。
そしてマァル様の言ったように泣き方を忘れていったのだろう。
マヒしてしまったのだ、いろんな所が。

私は、坊っちゃんの事をほとんど何も知らないのだと気付かされる。
いや。
坊っちゃんの事を知っている者など、ここには誰も居ない。

「サンチョ」
坊っちゃんは私の顔色をうかがうような、少し恐れを持った瞳で私を見た。
「あの洞窟の奥底で、ボクらが見たもの、聞いたんでしょ?」
擦れた声で。
絞りだす。
「はい」
私はうなずく。坊っちゃんは「そう」と小さな声で言うと、がくんと力が抜けたようにソファに座り、また膝を抱えてその膝に顔を埋めてしまった。
「ねえ」
そのまま、小さな声で続ける。
「今まで黙っててごめん」
膝を抱える手の、指が白んでいる。物凄い力で、足をつかんでいる。できるだけ小さくなってしまおう、そんな気持ちのあらわれのようだ。

「本当にごめん、話さなきゃ、とは思ってたんだけど、話したら、サンチョに嫌われるんじゃないかって、不安で、だって、サンチョはお父さんが大好きだったから、それに、ボクはサンチョの事大好きだから、離れたくなくて、我儘で、ずっと言えないでいて」
混乱してるのだろう、思いついた端から話をしているようで、声をだすたび、自分の言葉で傷ついて。

「このサンチョが、坊っちゃんを嫌いになる訳がないでしょう?」
私はできるだけゆっくり、できるかぎり優しい声で言う。

「ボクが、お父さんを殺したのに?」

坊っちゃんは擦れた声で言う。息を吐くように、消え入るような声で。
「何を言うんです。旦那様は、パパス様は魔物に殺されたのでしょう? 坊っちゃんを守るために。坊っちゃんが殺しただなんて、そんな……」
「ボクが」
坊っちゃんは顔を上げる。
「ボクがちゃんとあの時逃げることができたら。ちゃんと逃げていたら、お父さんはあんな奴らに負けるわけ無かった」
必死な顔で、
「ボクが、逃げられなかったから。お父さんの言うことが守れなかったから。お父さんは……」
自分を責め続ける。
「お父さんはまだまだやりたいことが一杯あったはずなのに。ボクなんかのせいで、全部終わって、絶望して」
いいながら、どんどん傷ついていく。

「ボクがお父さんの未来を断絶した」

頭を抱えて、そのまま大きく息を吐いた。
「何でお父さんはあの時何もしなかったんだろう」
「それは坊っちゃんの……」
「お父さんはやりたいことが一杯あったはずだよ、お母さんにあって抱きしめたかっただろうし、この国にも帰ってきたかっただろうし」
「坊っちゃん、ちょっと落ち着いてください」
今にも泣きそうな顔なのに、坊っちゃんの瞳には涙の気配が無い。
息が荒くなり、興奮してきているのはわかる。
いい意味ではなく、悪い意味での、興奮。
このままでは何を言い出すか解らない。
「国の人たちだって、大好きだったお父さんに帰ってきて欲しかったに違いないんだ、ボクより、ずっとお父さんのほうが強いし、人望だってあるし」
「坊っちゃんはちゃんとやってくれてるじゃないですか、そんな事考えなくてもいいんですよ。ちゃんと国王としてしっかり出来てます」
私は必死になって言葉を繋げる。
しかし、その声は坊っちゃんに届いているのか、怪しいものだった。

 
「お父さんは、何でボクなんか助けたんだろう」

呟くような声で、でも坊っちゃんははっきりそういった。
「だってそうでしょ? お父さんはお母さんに会いたくて、勇者様を探してて、勇者様はビアンカちゃんの子どもだったんだから、まあ、知らなかったけど、待てばいつか勇者様に会えたんだよ、命を落とす必要なんてなかった」
坊っちゃんは頭を力なく左右に振った。
「お母さんに会えば、ボクの代わりなんてまた生まれただろうに」
私は、体の血が逆流するのを感じた。
「ボクなんかのために命をかける必要なんてなかったのに」
体の奥のほうが、熱い。
怒りがふつふつ沸いてくる。

確かに、坊っちゃんは目の前で旦那様を殺されて、そのことに責任を感じているんだろう。
自分さえちゃんと、逃げていることが出来ていれば。
自分より、お父さんはずっと人望があった。
皆に愛されていた。
そう考えてしまって、その考えに凝り固まって。
そのまま足踏みをしてしまっていて。
それは、解らないでもない。
私だって、二人が帰ってこなかったとき、どうして一緒に行かなかったのか、坊っちゃんだけでも引き止めておけばとか、色んなことを考えて自分を責めた。
だから、解らないでもない。

だけど。

坊っちゃんは大きく間違っている。

「本気でそういってるんですか?」
私は尋ねる。出来れば否定して欲しいと。
「そうだよ。ボクなんかのよりお父さんの命のほうが、ずっと大事だ。お父さんが、生き延びるべきだった。ボクなんかのために、命を落とす必要はなかった」
坊っちゃんは顔を上げて、きっぱりと言い切った。
「っ!」
かっとした。
そしてそのまま、坊っちゃんの頬を平手打ちしていた。
かなり大きな音が、部屋に響く。
坊っちゃんは無表情で私を見上げていた。
それから静かに言う。

「ね、ボクの事、憎らしいでしょ」


■胃が痛いです。
こういう話というのは、書くのが大嫌いです。
きっと読むのも大変でしょう。
すみませんねえ……(遠い目)

個人的に「生まれてこなきゃ良かった」とか「生まれたくなかった」って葛藤っていうのは、誰だって一回位は経験あると思うんですよ。
テっちゃんが陥ってるのはそういう方面です。
まだお若いですから。
ただ、そういう葛藤とかを吐き出す場所がこれまで無かったし、精神的な余裕もなかったので、変な形に昇華しちゃったって感じです。
上手く説明できないですけど。
さて、次で本当に立ち直るんでしょうかこのひと。
何か無理な気がしてきました。

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