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■秘密 (サンチョ視点)
坊っちゃん達が洞窟をでて来た時から、嫌な感じがしていたのだ。
マァル様は泣きじゃくっていたし、ソル様は黙りこくっていたし、なにより、坊っちゃんの表情が無かったから。
顔色は真っ青を通り越し、紙みたいに白かった。
洞窟の奥底で、私の知らないところで、何か途方も無く悪いことが起こったのだろう。
そのまま、何の説明もないままグランバニアに帰ってきて、何の説明もないまま坊っちゃんは城のなかへ消えていく。
泣いたままのマァル様を放ったらかして。
それを咎めようとしたら、当のマァル様に止められた。
「何があったのか、全部言います。だからサンチョ、お父さんを怒らないで」
と。
この時私は覚悟した。
たぶん、とても辛い話を聞くことになるのだろうと。


私はソル様とマァル様に手をひかれ、城の外にある自分の家に戻った。
「どこから話せばいいのかな?」
ソル様は少し困ったようなことを言う。
「とても辛くて淋しい話なの」
マァル様も顔を曇らせる。
暫らく二人はお互い小さな声で話し合って、それからぼつぼつ話しだす。
「ぼくらね、洞窟のなかで、プサンさんって天空人に会ったんだ」
「皆で水に沈んだ天空城に行ったの。とっても綺麗な所だったわ」
思い出しているのか、二人は少しうっとりしたような目をする。
「それなのに辛いんですか?」
私が聞くと、二人はうなずく。

「天空城ね、何で沈んだのかって言うとね、お城を浮かべてた力の源が無くなったからなの」
「ぼくら、何で無くなったのか、今どこにあるのか、プサンさんの力で調べたの」
「わたしたち、夢を見るみたいに不思議なものを見たの」
「ゴールドオーブがどうなったのか、ずっと見たんだよ」
「それで、わたしたち、お父さんの小さい頃を見たわ」

「ゴールドオーブはね、天空城から落ちて、雷の酷い中、どこかの建物に落ちるの。そこで小さい頃のお父さんと、女の子がオーブを拾うのよ。それでずっとお父さんはオーブを持ってた」
そういわれて思い出す。
「そういえば、坊っちゃんはなんだか随分奇麗な丸い宝石を持ってゲレゲレと遊んでましたねえ、アレでしょうか?」
「お父さんは、そのオーブをずっと持っていて、それでおじい様と何処かへ行ったみたい」
「……ラインハットでしょう」
私が言うと、二人はそこでしばらく黙った。

「ねえ、サンチョは、おじい様がどうやって亡くなったか、知ってる?」

唐突に言われ、私は面食らう。
それから、首を横に振った。
「存じません」
二人は、息を吐いた。
「ぼくらも知らなかった。多分、お父さんは、話したくなくて、これからも話すつもりも無かったんだと思う」
「凄く、辛かったと思う」

 
「どこか、暗い洞窟だったわ。お父さんは背の高い魔物に、ゲマって名前だったみたいだけど、その魔物に捕まってた」
「人質にされてたんだ、それで、おじい様は戦うことが出来なかった」
「おじい様は、お父さんの目の前で魔物たちに殺されてしまったの。しかも、背の高い魔物に、大きな火の玉で燃やされてしまった」
「何にも残らないくらいに」
辛そうに、二人はぼそぼそと呟くように言う。
「物凄い悲鳴だった……」

「な……んてこと……」
私は言葉を失う。
この小さな二人が、そんなものを見てきただなんて。
旦那様が、そんな最期を迎えただなんて。
坊っちゃんは「ボクを守って死んでしまった」としか教えてくれなかった。
坊っちゃんは。
この二人より小さかったはずで。
何をどういっていいのかわからなかった。
そして坊っちゃんがいるであろう、城の三階を見上げる。
「お二人とも、辛かったでしょうね……それで、お泣きに……」
私は何とか、搾り出すように言う。

 
「違うの」

  
「わたしは、お父さんの代わりに泣いたのよ」
マァル様はきっぱりとそういった。
「お父さんは、おじい様の最期を見て、一時的に子どもの気持ちに戻ってしまったの。とても辛くて、悔しくて、寂しくて、でもお父さんは泣けないの。本当は泣き叫びたいくらい辛いのよ。でもね」
マァル様も、坊っちゃんがいるであろう方角を見上げた。

「お父さんは、泣き方がわからないのよ」

  
「え?」
私は聞き返す。
「サンチョはお父さんが泣いたところを、見たことある?」
「ありません」
「お父さんはね、わたしたちよりずっと小さい時、おじい様を目の前で亡くしたわ。でもその時、泣けなかった。そのせいで、泣き方を忘れてしまったの」
マァル様はそういって大きく息を吐くと、そのまま机に突っ伏してしまった。
「お父さんは今、子どもの時の気持ちに戻ってる。でも、泣けない。だからわたしはかわりに泣いたの。あのままじゃ、お父さんの心はバラバラになってしまうところだったから。お父さんはわたしの泣き声を聞いて、何とかしなきゃって思って、それで踏みとどまってくれた」
私は、マァル様を見つめた。
ソル様も驚いたようにマァル様を見つめている。
「マァルって、それで泣いてなの?」
「そうよ。……うん、確かにおじい様が亡くなる時の話はとても悲しかったし怖かったから、それにも泣いたよ。けど」
そこで暫く言葉を探して、少し黙ってからマァル様は続ける。
「わたしに出来ることはそのくらいしかなかったから」

マァル様が私を見た。
「サンチョ。お願いよ。お父さんのところへ行ってあげて? それでお父さんを助けてあげて」
「私で務まるでしょうか?」
「サンチョだから出来るの。わたしたちでは無理だわ」
マァル様はそういって寂しそうに笑う。
「だって大人じゃないもの」

 
私は二人を家に残し、城の中に入る。
そのまま坊っちゃんの居室に向けてまっすぐ歩いた。
ノックすると、暫くして返事があった。

私は大きく息を吸って、部屋に足を踏み入れた。


■テっちゃんサルベージの巻・スタートです(苦笑)
さてさて、立ち直るまで何回かかるかな。予定は2回。

今回漸くばらせますが、実はテっちゃんは「泣けない」という設定がありました。これまで何回「コイツここで泣いてくれたら話がスムーズなのに」と思ったことか。
割と面倒な設定付けちゃったなあと後悔しました。
え?
泣いてないですよ。この時点までのテっちゃんは。
調べてもらっても全然かまわない。
だってその設定作ったの、ヘンリーが仲間にいるころだもの。
ずーっと前だもの。気をつけてやってきたもの。
うふふふふ。だからなんだって?

自己満足って言うんですよ。

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