今日のDQ5(175)
2005年7月28日 今日の「DQ5」■めずらしく、今回のエピソードは短く終われそうです。
■天空への塔 3 (ピエール視点)
■久々にピエール視点にしたら、最初こそ書きづらかったけど途中から何だか楽しかった。
書きやすいかもしれない!
■天空への塔 3 (ピエール視点)
暫く休憩した後、我々は主殿を先頭に広場を抜け、突き当たりを左に折れて歩く。すぐに突き当たり、低い手すりの細い通路が右に伸びている場所に出た。
「すぐ右に入り口があるからそれに入るしかないけど、皆落ちないように気をつけてね」
主殿はそういってから角を曲がり、全員が部屋の中に入ったのを確認してから入り口をくぐった。
マァル殿が外が見えなくなったためか、少し安心したように息を吐く。
奥と手前に階段がある。部屋の中央には赤い絨毯が敷かれている。これまでと同様、少しホコリが積もっていて、色が褪せている。その絨毯の四隅には背の低い石でできた人の像が置かれていた。ただ、少し奇妙なのはこの石像たちは全員、背中に鳥のような翼を持っていることだ。
「……お城にいる天空人みたいなかんじ」
マァル殿がつぶやくと、ソル殿は石像まで走っていってソレを見上げて頷く。
「うん、似てるね」
お城というのは、グランバニアであろう。その城の一角に昔主殿の父上が助けた天空人が居る、という話は聞いたことがある。
残念ながら私は会ったことがないが、多分こういう風に背中に翼を持っているのだろう、と思った。
「あの人と同じような石像があるってことは、もしかしてここは天空にあったお城とかに関係があるのかな?」
主殿も石像をまじまじと見てから、首を傾げる。
「あ! お父さん、もしかしてこの塔が、空に続く塔なのかも知れないよ?」
ソル殿が主殿を見上げて少し興奮したように言う。
「だって、ここ、凄く綺麗だし、きっと天空人が建てたんだよ!」
「何のために?」
マァル殿は首を傾げる。
「だって、天空人ってお空を飛べるのよ? お城に居た人は翼を怪我してそれからとばないみたいだけど。飛べるのに塔を作る必要ってある?」
「だから、怪我した人が歩いて帰るためとか、ぼくらみたいに飛べない人がお城に遊びに行くために」
ソル殿は言いながらも何だか不思議な気分になってしまったらしく、首を傾げる。
主殿は二人が喋っているのを微笑んで見守っていた。
石から戻ってグランバニアに帰ってきた頃は、少しギクシャクとしていて、父親らしくしよう、と気負っている部分があったが、最近は随分自然と子どもを見守っている時が多いように思う。
多分、暫く二人と接するうちに、色々な事を学習し、吸収したのだろう。
二人が「大人びた子ども」から、自然に「甘えるときには甘えられる」ようになったように、多分、主殿も父親としての距離感というものをつかんだのだろう。
「とりあえず頂上まで登ってみれば分かる事もあるかもね」
主殿は二人の終わらない言い合いに終止符を打つように手を叩きながらそういった。
「まあ、分からない可能性もあるんだけど」
苦笑しながら言うと、二つの階段を指差す。
「近場から登ってみようか」
入り口に近いほうの階段を登る。
登った先の部屋は小さな部屋で、奥に階段が見えた。
床の両脇には浅く水を張った池があり、その中央にまた向かい合うように翼を持った人間の像が飾られていた。
「なんかちょっと神聖な感じ」
マァル殿のつぶやきに、我々は頷いた。
「もしかしたらソルの言った事は、当たったるのかもしれないね」
主殿は笑顔で言う。
「きっとそうだよ!」
ソル殿は嬉しそうに言うと、目の前にある階段を駆け上る。
「ころばないでよ」
主殿はいいながらゆっくり後を付いて歩いていく。
階段を登った先は少し広い部屋で、また浅く水の張られた池があった。階段はその池の端にあり、真っ直ぐ池を突っ切った先の左手側に出口があるのが見える。
どこからか光が漏れてきているのか、通路に向かって光の筋が出来ているのが見える。その光を反射して水面がキラキラと光り、とても美しい。
「すごーい、綺麗!」
マァル殿が歓声を上げる
暫くその景色に目を奪われていたが、やがて我々はまた歩き出した。
出口の外は二・三段の下りの階段があって、また塔の外周部分に出るようになっていた。
随分登ってきていたらしく、地上は少しかすんで見える。遠くの山々は小さく、圧倒的な空の青が眼前に広がっていた。
主殿がつぶやいたのが聞こえた。
「マァルはちょっと辛いかも」
結局主殿はまたマァル殿と手をつなぎ、外に出た。
すぐ左手には登り階段があって、そのままその階段を登る。
登りきったところは、何も無い広場だった。
先ほどの部屋の、屋根の部分に当たるのだろう。コレまでどおり、低い手すりがあるばかりで、後は何も無い。落ちたら終わりだろう。
マァル殿は足がすくんだらしく、ほとんどまともに歩けない。
結局主殿はマァル殿を背負い、それからソル殿と手をつないだ。
「ぼくは平気だよ?」
ソル殿が少し不思議そうに主殿を見上げる。
「ボクが平気じゃない」
主殿の返事に、ソル殿は首を傾げる。
「お父さんも高いところ苦手?」
「いや、高いところは問題ないよ。ただ、ソルがここで走り回ったら、ちょっと流石に心臓が痛いかも」
「走ったりしないよ」
ソル殿は口を尖らせて見せたが、それでも主殿と手をつなぐこと自体は嬉しいらしい。すぐに笑顔になって歩き出す。
広場を横切ると、柱だけが立つ手すりも無い部分を経て、向こう側の塔に出られるようになっていた。
下りの階段と、小さな部屋への入り口があったが、主殿は小部屋のほうを選んだ。
「この際だから、先に高いところから片付けよう」
小部屋の中には、ただ登るだけの階段があるだけだった。
その階段を登ると、小部屋の天井部分に出られるようになっている。
頂上だ。
正面には、どこにも繋がっていない登り階段がある。
そしてその前には、背中に羽を持った一人の男性が立っていた。
彼は我々を見て、目を丸くする。
「何と! この荒れた塔をここまでのぼってくる者がおったとは! かつてはこの塔から天空の城に行けたものだが、今はこの有様……天空の城も今では湖の底じゃ!」
その言葉に我々は驚く。
「え? この塔、天空の城に繋がってたの!?」
「天空の城って本当にあったんですか?」
「お城、落ちちゃったの?」
それぞれ言った言葉は違ったが、彼は頷いただけだった。
「もしそれでも行きたいと言うなら、そこのマグマの杖を持ってゆくがよい。その杖を使えば、洞窟をふさぐ岩をもどかすことができようぞ!」
彼が指差した方向には、一振りの杖が床に突き刺さっていた。
主殿がソレを引き抜きに行くのを我々は見守る。
やがて少しの掛け声と共に、主殿は杖を引き抜いた。
「これ、いただいていいんですか?」
言いながら主殿は振り返り、そして言葉をなくす。その凍りついた表情に我々も彼が居たところに視線を戻した。
彼はどこにも居なかった。
「……もしかして、幽霊?」
「……さあ? まあ、くれるっていうんだし」
暫く我々は無言で、背中を嫌な汗が伝っていくのを感じた。
「と、ともかく帰ろうか」
主殿は無理やり明るい声を上げて、彼が居たところに一度手を合わせ、それから脱出のためにリレミトを唱えた。
■久々にピエール視点にしたら、最初こそ書きづらかったけど途中から何だか楽しかった。
書きやすいかもしれない!
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