■「日記書くのに塔に登らなきゃわかんなくてさあ」という話を弟にしました。
すると彼は「……そんな詳しく書く必要あるのか?」といいました。
ソレもそうだな、とは思ったけど。結局ちゃんと塔に登ってきました。ので、ちゃんと書きます(笑)

■天空への塔 1 (ソル視点)
塔は近付いてみると、思っていたより随分高い塔だった。
入り口までは長くて幅が広い階段が続いている。ちょっと朽ちてきていて、所々壊れているのが外からでも分かる。白い外壁もちょっと汚れていて、何だかちょっと薄気味悪い。
でも、もし壊れてなくて、汚れてなかったら、きっととっても綺麗で豪華な感じの塔だったんだろうなって思う。
「ああ、結構高いね、まあ、向こうから見えたくらいだしねえ」
お父さんもちょっと呆気に取られたみたいに上を見上げていた。
「……高い」
マァルはちょっと青ざめてつぶやく。
「えーと、どうしようか。マァルはいける? 恐いならいいけど」
お父さんがマァルに聞くと、マァルは首を横に振った。
「平気。一緒に行く。……けど、お父さん、手を引いていって」
マァルは小さな声でそんな事を言った。お父さんは嬉しそうに笑ってから「勿論」と頷いた。

「じゃあ、ボクとソルとマァル。それからピエールとで行こう」
お父さんがそういうと、スラリンがむくれた。
「またオイラ留守番ー?」
「スラリンを信頼してるから、安心して馬車を頼めるんだよ。勿論、サンチョやゲレゲレや、ホイミンもね」
お父さんはそういって、スラリンに笑いかける。
「……ちぇー、そのうちオイラも連れてけよ」
スラリンは口を尖らせてそんな事を言って、それから馬車の中に引っ込んでいった。
お父さんはちょっと苦笑いしてスラリンを見送って、それからぼくらの方を見た。
「じゃあ、行ってみようか。何にも無いかもしれないけど」

お父さんはマァルの手を引いて階段を登る。ぼくはその後ろを歩いて、ピエールはぼくの後ろを歩いていた。
塔の大きな入り口には扉が無くて、そのまま中に入れるようになっていた。お父さんはそっと中の様子を見てから、中に入る。ぼくらもその後に続いた。
高い天井と、がっしりした白い柱。
入り口近くの床には絨毯が敷かれている。少し向こうは柱と同じ白い石の床になっている。
「マァル、もう平気?」
お父さんが聞くとマァルは頷く。
「もう外が見えないから平気」
お父さんはマァルから手を離した。
ぼくらはお父さんを先頭に、ピエール、ぼく、マァルの順に歩き出す。

最初に入り口から右のほうに曲がって歩いてみた。
絨毯は水の張ってある小さな池みたいなところを通ったあたりで途切れて、そのあとは普通の床になった。床になると、ちょっと足音が響いた。
と、いきなり柱の影から大きな何かが出てきた。
ぼくらはそれぞれ剣を抜いたり、杖を構える。

出てきたのは、レンガを人の形に積み上げたみたいな魔物だった。ただ、ぼくの何倍もある高さをしている。お父さんの倍くらいはあるかもしれない。大きな石の怪物。
「ゴーレム」
お父さんがつぶやく。たぶんそういう名前なんだろう。
緑色の、半月のような形をした目が、ぼくらを捕らえたのが分かった。
「来ます! 気をつけて!」
ピエールの声にぼくらは身構える。大きい分、動きはゆっくりしているけど、石でできてる分、かなり固い。剣が当たっても、全然びくともしない感じ。
マァルの魔法も直撃しても、全然気にしてないみたいに見える。
結構強い。
ピエールの剣が、ちょうどゴーレムの足に当たった。そして、バランスを崩して倒れかかる。
お父さんがその隙にもう一本の足を狙って攻撃した。
ゴーレムはそれで倒れてしまった。そこにマァルの魔法がもう一回当たる。

勝負は付いたらしかった。

「手ごわかったですね」
ピエールがそういいながら、怪我をしたぼくにベホイミをかけてくれた。
「うん、随分強い魔物が居るみたいだね、ここ」
「気をつけねばなりませんね」
ぼくとピエールが話していると、マァルが驚いた顔をしてぼくの後ろを指差した。
「え? どうしたのマァル?」
ぼくはいいながら振り返る。
さっき倒したはずのゴーレムが、ゆっくりと起き上がってきていた。
「え?! 何で?! 倒せてなかったの?!」
ぼくとマァルは驚いてしまって、お互いに武器を構えなおした。

「ああ、心配しなくてイイよ」
お父さんののんびりした声がした。ピエールも何にも心配してないのか、剣を構えたりしない。
見てみると、お父さんはじっとゴーレムを見ていた。
ゴーレムは、立ち上がらないで片膝を付いた格好のまま、じっとしてお父さんを見ていた。戦う意思は全然無いみたい。
「……一緒に来る?」
お父さんはゴーレムを見てにっこり笑った後、そんな事を言った。
「!?」
ぼくとマァルは驚いて顔を見合わせる。
ゴーレムはゆっくりと頷いた。
「そう、じゃあ、一緒に行こう。……えーと、君の事は何て呼べばいいかな?」
ゴーレムは暫くしてから、首を傾げて見せた。
お父さんはその様子を見上げていて、それから「……もしかして名前とか無い?」って聞く。
ゴーレムはまた首をかしげた。

「お父さん、何してるの?」
ぼくはピエールに尋ねる。
「主殿が我々魔物と心を通じ合わせるのは知っていますね?」
「うん」
ぼくとマァルは頷く。
「そうやって、ピエールやスラリンや、皆と仲良くなったんだよね?」
「ええ」
ピエールが頷いた。それからお父さん達を指差して、「今、まさにその瞬間ですよ」って言った。

ぼくらは嬉しくなって、お父さんとゴーレムのやり取りを見る。
今度はゴーレムと仲良くなれるのかもしれない。

「えーと」
お父さんは暫くゴーレムを見上げていて、それから「あ!」って声を上げた。
「そうか。君、口が無いんだ」
言われてみてみれば、ゴーレムは目が光ってるだけで口が無かった。ゴーレムは頷いている。
「あー、あー、そっかー。じゃあ、名前をつけてもいいかな?」
お父さんが首を傾げて尋ねると、ゴーレムは頷いた。
「じゃあ、えーと」
お父さんは考えているのか、暫く黙ってしまった。

「ゴレムス!!!」

ぼくは叫ぶ。
ゴーレムとお父さんが一緒にぼくの方を見た。
「ゴレムスがいい!」
ぼくが言うと、ゴーレムが頷いた。お父さんはソレを見ていて「ゴレムスでいい?」と尋ねる。
ゴーレムが大きく頷いた。
お父さんがにっこり笑って、手を差し出す。
「よろしく、ゴレムス」
ゴレムスが人差し指を出してきたから、お父さんはそれをぎゅっと握り締めた。
「じゃあ、皆を紹介しなきゃね」
お父さんはぼくらの方を見て、それからにっこりと笑った。


■と、言うわけでゴレムスが仲間になりました。
ここで確か仲間にしたはず。そして子ども達の前では始めての仲間だったはず。

……さて、誰を抜こうかな。
その場でゴレムスを抜いたんだったっけかな?

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