■Q・テっちゃんとドリスちゃんの間に何が起こったのですか?

A・
「子ども放っておいて一人で帰ってくるとはどういう了見だー!!!」
ばちーん!(頬を叩く音)
「誤解! ドリスちゃん誤解!」
「早く帰れ! 今帰れすぐ帰れ! 用事済んだんだろ!」
「まだお昼ご飯のバスケット貰ってない!」
「んなもんいいからとっとと帰れ!」

テっちゃん無抵抗。

こんな感じだったかと思います。
聞かれる前に答えておこう。

■山奥の村 1 (テス視点)
フツルさんにもらった宝石付きのオルゴールは、それはそれは見事な出来だった。
ボクらはソレを受け取って、朝早くエルヘブンを後にする。
まだ霧がかかったような時間帯で、コレまで見たどんな時間帯よりも神秘的に見えた。ここでお母さんはいつも美しい景色を見てたんだ。

ボクは振り返って祈りの塔を見上げる。
村の中で一番高いところに、お母さんは居て。
お父さんに連れられて広い世界を見に行った。
お父さんが情熱家なのは何となくわかってたけど、もしかしたらお母さんも負けず劣らず情熱家だったのかもしれない。
「言ってきます」
心の奥で言って、ボクは歩き出す。

村の外で皆と合流して、ルーラと船を使って山奥の村へ向かった。

相変わらず、のんびりした空気の流れる村だった。全然変わってない。相変わらず村の人は自分の仕事をきっちりこなしているし、入り口近くの畑もしっかり植物が育っている。
かすかに硫黄のにおいが風に乗って運ばれてくるのも変わってない。
村を囲む森も、相変わらず残っている。
「ぼく木のぼり大好き! お父さんのぼってきていい?」
「後でね。先におじいちゃんに挨拶してから」
「あ! 木のところリスが走った!」
「え! どこどこ!」
ソルもマァルも見慣れない村にはしゃいで、あちこち見回しては歓声を上げる。
「のんびりした良い村ですね」
サンチョは目を細めてあたりを見回した。
「温泉が湧いてるんだよ、良い温泉でね、ダンカンさんの療養のために越してきたって言ってた」
「へぇ。私は坊っちゃんに教えていただくまで、ここに村があることも知りませんでしたよ」
そういって、またあちこちきょろきょろと見る。
「ぼく知ってる! 温泉って、お湯の湧く池でしょ!?」
「……あってるんだけど、微妙に違う気がするのは何でだろう?」
ボクは苦笑しながら答える。
「さて、お母さんのお家は一番奥にある、床の高いお家です」
ボクは村の奥のほうを指差してから子ども達を見る。そしてにやっとわらうと、
「競争!」
叫んで、ボクは走り出す。
「お父さんずるい!」
「スタートって言ってない!」
二人は口々に言いながら追いかけてきた。サンチョは笑ってから、ゆっくりこちらに歩いてくる。

やがてダンカンさんの家が見えてきたところで、女の人に声をかけられた。
「おやおや! まあまあ! ずいぶん久しぶりだねえ!!」
ボクは立ち止まる。
「えと……、あ、宿のおかみさん。お久しぶりです」
ボクは頭を下げる。
ビアンカちゃんがお手伝いしてた、宿のおかみさんだった。

ビアンカちゃんはお母さんみたいだって言って慕ってて、おかみさんのほうもビアンカちゃんを娘みたいに可愛がってくれてた人。

「ちっとも顔を見せないでどうしてたんだい? テスさんもビアンカちゃんも危ない旅をしてると思うと、全く心配でしょうがないよ」
ボクは笑う。
「色々何だかせわしなくて。漸く暇が出来たんでここに来られたんですよ」
そういってる間に、ソルとマァルが駆け抜けていった。
そしてダンカンさん家の階段に足をついて「優勝!」とか叫ぶ。
「あ……やられた」
ボクが向こうを向いて苦笑すると、おかみさんもそちらに目を向けた。
「子どもかい?」
「ええ」
「幸せそうで良かった」
おかみさんは笑うと、仕事があるからと言って宿の中へ戻っていった。
「先ほどの方は坊っちゃんのお知り合いで? 先に言ってくだされば、おみやげのひとつも用意してまいりましたのに」
サンチョが宿のほうを見る。
「うん、ビアンカちゃんの大事な人だよ」
ボクは答えると、サンチョと一緒にダンカンさんの家に向かう。
「お父さん、ビリ!」
ソルがボクを見上げてにーっと笑った。
「仕方ないよ、知ってる人に声かけられたんだもん」
ボクは苦笑してドアを指差す。
「ここがお母さんのお家だよ。さ、行こうか」

 
ボクは大きく深呼吸してからドアをノックする。
返事がなかったから少し心配になってドアノブをまわすと、軽くそれは回った。
ドアをくぐると、大きなテーブルのところでダンカンさんが居眠りをしていた。
「こんにちは」
声をかけると、ダンカンさんが顔を上げる。
「……ああ、いかん! うっかり眠ってしまった」
照れ笑いしながらそう言って、ダンカンさんはボクらのほうを見た。
「……ん? おおっ! テス! テスじゃないか! 何年も顔を見せずに一体どうしてたんだね? 大分前にグランバニアに住むことになったとか、そんな手紙をくれたっきりじゃないか? おや、それにサンチョさんじゃないか。よかったなあテス、再会できたんだね?」
「すみません、随分ご無沙汰して……。あの、手紙では書けなかったんですが、実は……あの、ボク本当のところ、グランバニアの国王になりまして……」
「え?! じゃあ、あのパパスが王子だったとか言うのは本当で、その跡を継いだって事か!?」
「ええ、まあ」
「はー、それじゃビアンカは王妃か……嘘みたいな話だな」
「嘘みたいな本当の話です」
ボクは笑って、それから大きく深呼吸してダンカンさんを見つめる。
「今まで黙っていてごめんなさい。それから、実は……」

ボクはグランバニアについてからの事を話す。
ビアンカちゃんと一緒に居られて幸せだった日々。
それが一瞬で壊れた、ビアンカちゃんがさらわれた時のこと。
助けに行って、返り討ちにあって二人とも石にされてしまったこと。
ボクだけが、助けられてしまっている事。

「……な、何だって? 石にされて?! そんな危ない目にあっとったのか!!」
ダンカンさんは絶句する。
ボクの顔をまじまじと見て、それから大きく息を吐いた。
「うーむ……なんてことだ」
「……ごめんなさい、ビアンカちゃんを巻き込んで……こんな事になるなら、ボク……」
「……ああ、ビアンカの事は言わんでもいい。必ずやテスが助け出してくれるのだろう? わしは信じとるよ」
「けど」
「何年かかってでも、助けてくれるんだろう? もし、諦めたりしたら、その時こそぶん殴ってやる。ビアンカはきっと、石になってもテスのことを信じて待ってるに違いないんだ」
ボクはダンカンさんをじっと見る。そして、にっと笑った。
「信じないで、ここでテスを殴ったりしたら、後でビアンカに怒られちまうよ」
そういって、視線を動かして、ソルとマァルを見る。
「……ところでその子どもは? もしや……」
二人はにっこり笑ってお行儀良くお辞儀した。
「おじい様こんにちは。マァルです」
「ソルです!」
二人の挨拶に、ダンカンさんは凄く嬉しそうな顔をした。


■……1回で終わる予定だったのにな。
ま、いつもそんな事言ってますけどね。
ダンカンさんが凄く怒るという方向も考えてみたんですけど、ゲーム中のダンカンさん、そんなに怒ってなかったしね、怒らない方向で書いてみました。

というわけで、次回は祖父と孫の話です。
……たぶん。

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