■「マァル」と打つとき、かなりの確率で「まざる」とかいてしまします(笑)
小さい「ぁ」をXAで打つので。Zが近いんですね。
……ゴメンネ、マァル。

■エルヘブン 4 (テス視点)
皆にじりじりと迫られて、ボクは曖昧な笑みを浮かべつつ階段のほうへ逃げる。
階段からは誰か上がってきている足音が聞えてくるし、どうやら逃げられそうにない。
「お父さん」
マァルはにこりと笑う。
「ヒミツだってば」
ボクもにこりと笑って答える。
下から歩いてくる足音はいよいよ大きくなってきてる。
「ほら、誰か来るしね」
ボクが階段を指差した時、ちょうどその足音の主が部屋にやってきた。

「あら、にぎやかですわね」
やってきた人は、白い服をきたほっそりした品のよさそうな落ち着いた女性だった。
「あ、お邪魔してます」
ボクはちょっとほっとして挨拶する。
「こんにちは。下まで楽しそうなお声が聞えておりましたよ。初めまして、テス様」
その人は深々とお辞儀をする。よく見ると、手にホウキを持っている。
「こんにちは。初めまして……この部屋のお掃除に?」
女の人はうなずいた。
「ええ、マーサ様のお世話をずっとさせていただいていたのです。今でも、なんだか呼べばすぐお返事をしてくれそうな気がして、どうしても掃除をやめられないんですよ」
そういって、恥ずかしそうに笑う。
「それにしても、テス様はマーサ様によく似てらっしゃるわ」
「そうですか?」
ボクはお母さんの顔を知らないから、どこかちょっとピンとこない。それがなんだか悔しい。
「そうだ」
女の人は笑うと、持っていたホウキを階段のそばの壁に立てかけて、それから小さな本棚の方へ歩いていく。
なにかの本を探しているらしい。暫く本棚を見つめていて、やがて深い青の表紙に金の文字が入っている分厚い本を出してきた。
「これ」
探してきた本を、ボクに差し出す。
「マーサ様がよく読んでいらした本です。『天の詩篇集』というんですよ。エルヘブンの民は皆これを読んで大きくなるんですよ」
ボクは本を受け取ってそのページをパラパラとめくってみる。
奇麗な文章が並んだ、なんだか難しそうな本だった。
よく読んでいたんだろう、すこしページの端が黒くなっている。
お母さんが大切に、何度も読んでいた跡だ。

「頂いても?」
「もちろん」
ボクはその本をしっかりと袋にしまう。
少し暖かい気分。
暫く女の人と話をして、それから掃除のジャマにならないようにその部屋を出た。

塔を出て、振り返る。
すっかり夕方になって、赤い陽が白い塀を赤く染めていた。
全く違う村みたいに見える。
「うわ、奇麗」
ボクは思わず声をあげて、目を細める。
「ホント、奇麗だね!」
ソルはそういうとボクの手を握る。そしてにっこりと笑う。
「来て良かった?」
「うん。こられて良かった」
ボクは頷いて大きく息を吐く。

「でね?」

ソルは続ける。
「今日寝るとき、ちゃんとお母さんの話してね?」
「……覚えてたんだ」
「わすれないよ、ねー?」
「ねー?」
ソルとマァルは首を傾げあって、お互いに確認しあうように笑いあった。
「……坊っちゃん、もうあきらめるべきですよ」
「……うーん、期待されるような話は全然ないよ」
ボクは恥ずかしくなって、ちょっと遠い目をした。


宿でゴハンを食べている時だった。
一人のお爺さんがボクらを尋ねてきた。
「おや、あなたは」
サンチョが知っている人みたいで、立ち上がってその人を迎え出る。
「こんばんわ、久しぶりだの、サンチョさん。グランバニアから旅人がきたと聞いて思わず会いにきてしまったよ」
「これはこれは……! こんなところでお会いできるとは思いませんでした」
サンチョはお爺さんの手を引いて此方へやってくる。
「坊っちゃん、こちらはグランバニアが誇る宝石の名工、フツルさんです。フツルさん、こちらテス様。現在グランバニアの国王様です」
「おお、これはこれは……。陛下、お目にかかれて光栄です」
お爺さんはボクの手をとって深くお辞儀をした。
「お噂はかねがね」
ボクはにこりと笑ってお爺さんを見て、それからふと思い出す。

「あの、今でも宝石を加工することはできますか?」
「ええ、もちろん」
お爺さんはきょとんとボクを見る。
ボクは道具袋からその石をだす。
まだ小さい頃、サンタローズの洞窟を探検した時に拾った、すこし大きな硬い石。
「これ、サンタローズで拾った石なんですけど」
「おお、コレは凄い。サンタローズの聖なる宝石! こんなに大きなものは久しぶりに見ます」
お爺さんは目を輝かせて、その原石を見た。
「いつまでかかってもいいので、加工していただけませんか? 宝石をはめ込みたいオルゴールがあるんです」
ボクが言うと、お爺さんは大きく頷いた。
「こんな宝石を加工できるなんて幸せです。すぐかかれば、二日もあれば作れるでしょう。……オルゴールがあれば似合うカットが出来るんですが……」
お爺さんは少し残念そうにため息をつく。
「オルゴールなら、明日にでも持ってこられますよ、どうせなら似合うように作っていただいた方がいいですし、明日持って来ます」
「グランバニアは遠いでしょう?」
お爺さんが驚いて目を丸くする。
「色々方法はあるんですよ」
ボクはにっこり笑い返すと、石を渡した。

お爺さんが帰っていって、ボクらは部屋に戻る。
「じゃあ、お父さん、お母さんの話をしてね」
マァルはにこりと笑うとベッドの端を軽くポンポンと叩いた。
「……はい」
ボクは観念して首を縦に振った。


■テっちゃんがどんな話をしたのか、それはヒミツです。
というか、読んでる人皆知ってるし。
テっちゃんのビアンカちゃんに対する、独占欲とか嫉妬心とか。
 

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索