■そろそろDQ8を解禁してもいいんじゃなかろうか、そんな事を考えている今日この頃。
……コレ終わるまで駄目かね?ご友人達?
 
 
■テルパドール 2 (マァル視点)
女王様はすごい早足で歩いていく。わたしはお父さんに手をひかれて、女王様を見失わないように一生懸命歩いた。
お父さんは、さっきからずっと黙ったままで、真正面をじっと見つめたまま歩いている。
何だか、とっても恐い感じがした。

階段をあがって外に出る。そのままお城の周りを囲んでいる回廊を通って、小さな建物に案内された。
女王様はその建物の鍵を開けて、すたすたと階段を下りていく。
お父さんはどこに連れて行かれるのか知ってるみたい。ちょっと淋しそうな顔をしていた。
「ああ、足が速い方ですね……」
サンチョさんはわたしたちよりちょっと後ろを歩きながら、ふうふうと息を吐いている。

階段をおりきったところは、小さな部屋だった。
外の暑さが嘘みたいに、すごく涼しい。……ちょっと寒いって言ってもいい感じ。
さっきの地下庭園と一緒で、綺麗な花や緑に覆われた綺麗なところだった。
石版があって、その向こうに銀色の綺麗な兜が置かれているのが見える。
「ここにまつられているのが、我が国に代々伝わる天空の兜です。伝説の勇者であれば、かぶることが出来るはずです。さあソル。この兜をかぶってみてください」
女王様はソルを見てにっこりと笑った。
「かぶるの?」
ソルは不思議そうに兜を見た後、ソレを手にとってかぶって見せた。
「ぶかぶかー」
面白そうに、頭の上でぐらぐらと揺れる兜を、ソルはつついてみせる。
「ぼくには大きいよ?」
そう言って、ソルが振り返った。
「あれ?」
言ってる間に、どんどん兜が縮んでいって、いつのまにかソルの頭の大きさにちょうどいいサイズになっている。
「うわ、すごいや! ぼくの大きさにぴったりになったよ。このカブト」
ソルは目を丸くしてる。

いいなあ。
私も勇者だったら、あれがかぶれたのに。

そう思ってたら、女王様が嬉しそうな顔をしてソルを見つめてるのに気づいた。
「ああ……。なんという事でしょう……。とうとう……。伝説の勇者が私たちの前に現れたのですね。ソル様……。世界を覆う闇を必ずぬぐって下さい。
女王様は嬉しそうにそんな事を言った。
それとは反対に、お父さんは凄く辛そうな顔をしていた。
「この国に来た時から、なにかに呼ばれてる気がしたんだけど。天空の兜が呼んでたんだね」
ソルが嬉しそうに言いながらお父さんを見上げたときだった。
お父さんが両膝をついて、ソルと目線を合わせる。
「お父さん? どうしたの?」
ソルも、お父さんがあんまり嬉しくない顔をしてるのに気づいたみたい。少し困ったようにお父さんを見つめてる。

「ごめん」

お父さんはそういうと、ソルの両肩に手を置いた。
「ごめん。本当にごめん」
「どうしたの? ねえ? お父さん?」
ソルは困ってしまって、わたしとサンチョさん、そしてお父さんをかわるがわる見つめた。
「ごめん、ごめんね」
お父さんはそういうと、ソルをぎゅっと抱きしめる。
「坊っちゃん……」
サンチョさんはお父さんに声をかけると、そっと立ち上がらせる。そして、その耳元に何かを囁いた。お父さんが頷く。
何をサンチョさんが言ったのかわからなかったけど、お父さんがそれで少しほっとした顔をしたのがわかった。

お父さんは、一体ソルに何を謝ったんだろう?

 
 
わたしたちは、女王様に連れられて玉座の間に向かう。
天空の勇者が現れたということは、すぐに国中に知らせをだしたと言っていた。
お父さんは、ここに来てからずっとわたしとソルの手を握ったまま離さなかった。
「ソル。まだ若いとはいえ、あなたには勇者としての使命が当てられたのです。その勇者としての力で世界をおおう闇をふりはらってください。あなたがたをお助けすることはできませんが……せめてあなたがたのご無事を祈らせてください」
女王様はそういうと天を仰ぐ。
「おおいなる天空の神よ。主の御子たるこの者たちに祝福を……」

 
 
その日は女王様と一緒に、勇者が現れた事を祝うパーティーに出席した。
パーティーの間、ずっとソルだけがちやほやされて、何だか凄く淋しい気分になった。
そういう事を思うって、わたしは嫌な子だなって思う。

なんでソルだけなんだろう?

パーティーが終わって、わたしはベッドの中にうずくまって暫く泣いた。すごくすごく、嫌な気分。
ソルだけがちやほやされること。
それがうらやましい事。
でもいえないこと。
全部が嫌だった。
自分が嫌な子なのが嫌だった。

なかなか眠れなくて、夜のお城をお散歩することにした。
すごく静かで、窓の外には大きくて綺麗なお月様が浮かんでいるのが見えた。

「うん、なんだかね、複雑だよ」
お父さんの声に気づいて、わたしは立ち止まる。
サンチョさんと、お父さんがテラスでぼんやりとお話しているのが聞こえた。
「ずっと勇者様を探してたでしょ? その時は、どこかに勇者様がいて、その人を冒険に連れ出すんだと思ってた。『助けてください』って言ったら、付いてきてくれるものだと思い込んでた」
お父さんは静かな声で言いながら、月を見上げる。
「凄く身勝手な話だよ。勇者のほうは旅に出たくないかもしれないのに。家族だっているだろうに。全部すっ飛ばして考えてた。自分の身内から勇者が出て、初めて自分が考えてた事が、どれだけ都合のいい話だったか思い知らされた」
お父さんは淋しそうに笑う。
「あんな小さな子に世界中の期待が寄せられて、それに応えるためにあの子は必死だ。本当はさ、普通の旅だって連れて行きたくないんだ。怪我されたくないし、魔物とはいえ、相手の命を奪って生きていく旅だし。なのにボクはあの子を連れて行かなきゃならない。ボクは駄目な親だね」
お父さんは大きく息を吐く。
「確かに、勇者さま勇者さまって……あんな小さな子に、ちょっと気の毒ですね」
サンチョさんもため息をついた。
「それにね。マァルも可哀想だ。同じ親から生まれたのに、自分は選ばれなかった。選ばれないって辛いよ。ボクも剣にも兜にも否定されたからわかる。『どうして自分じゃ駄目なんだろう』って。あの子はボク以上だよ。目の前に居る兄弟が選ばれて、自分は選ばれなかったんだ。……何でボクは二人とも連れてきたんだろう?」
「坊っちゃん……」

わたしはまた、泣きそうになった。
お父さんは勇者を探してた。
自分が違ったことにがっくりしてた。
自分じゃない。
子どもを危険にさらす。
ソルが選ばれた事は、本当は叫びだしたいくらい辛いんだと思う。わたしよりずっと。

「お父さん」
わたしは声をかける。今歩いてきたばっかり、そんな顔をして。
「あれ? マァルどうしたの? 眠れない?」
「うん。ちょっと淋しいの」
わたしは正直に言う。
「そう」
お父さんはそういって、わたしのところまで歩いてきてくれた。そのあとわたしを抱き上げて、しっかりと抱きしめてくれた。
「少し泣いた? 目が赤い」
わたしは答えないで、お父さんの首に手を回して、ぎゅーっと抱きしめ返す。

嫌な気分は忘れてしまおう。
お父さんは、わたしのことも見てくれている。
「お父さん、ごめんね。ありがとう」
言ったら、お父さんは不思議な顔をして、それからにっこりと笑ってくれた。


■テっちゃんもマァルも、心中複雑。
そして今日も文字数ギリギリ。

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