■弟はこの日記を読んでこそいませんが、書いているのを知っています。それで青年前期が終わったことを報告。
「いやー、ようやくテスが石になったよ」
「へー。何回くらい?」
「143回。一日原稿用紙5枚くらいかな?」
「……原稿用紙500枚以上!? あんた何やってんの!?」

換算されて気付きました。
ほんと、何やってるんでしょう。

一日一時間も書いていれば、こんなにかけたのか……。
オリジナル書いたら、今頃投稿できてたってこと?
……うわぁ(遠い目)

 
■はじまる不幸
グランバニアの玉座の間では、国の主だった者達があつまり、気が気でない時間をすごしていた。
王が信頼する仲間とともに出かけてから、もう一週間近くが立とうとしている。各地に放った兵も、次々と成果を上げられないまま帰還してきていた。
王も、王妃も見つからない。
オジロンはいらいらと歩き回りながら声を荒げる。
「ええいっ! テス王の行方はまだわからんのかっ!?」
温厚でコレまで声を荒げたところなど見せたことの無かったオジロンの苛立ちに、周囲の兵達は気圧される。
兵士長がなんとか一歩前へ踏み出し、成果を告げる。
「は……はい……。国中の兵士に探させておりますが、いまだ……」
オジロンは大きくため息をついた。
「それにしても大臣までいなくなるとはっ! 全くもって何がどうなっているのか……」
オジロンは大臣を信頼していた。その彼が姿を消したことも、オジロンを苛立たせる。
一体何が起こっているのか。本当に分からなかった。
「オ……オジロン様!」
一人の兵士が転がり込むように部屋の中へ入ってきた。
「はるか北の教会で王のお姿を見た者が!!」
その声に部屋に居たものは全員、はっとして兵士を見つめる。
「なんと! テス王を見た者がいたと申すかっ!?」
「はっ!」
兵士は頭を下げて返事をする。
オジロンの目に力が戻った。
「よし! 皆の者! 北の地じゃ! 北の地をくまなく調べるのじゃ! どんな些細な事でも見逃すでないぞ! さあ行けいっ!」
その声に、辺りに居た兵士たちが駆け足で慌しく部屋を出て行く。
「テス王も王妃も ご無事でおられると良いが……」
そういって、オジロンが天井を見上げた時だった。
突然、玉座で眠っていた二人の赤子が大声を上げて泣き出した。
王と王妃がのこしていった二人の子どもは、持ち主が消えた玉座で、それでも親のぬくもりを感じるようにと寝かされていたのだ。
その子ども達が、いきなり泣き出す。
あまりの泣き方に、サンチョは驚いて玉座に駆け寄った。
「おお! ソル様マァル様、どうなさいました!」
そっとソルを抱き上げ、サンチョはあやし始める。
同じ様にマァルを抱き上げ、彼らを守り抜いた女官も首をかしげる。
「まあまあ! こんなにお泣きになるなんて初めてですわ。もしやテス王と王妃さまの身に何か……」
思わず顔を曇らせる女官を、オジロンはたしなめる。
「これ! めったな事を言うでないぞ」
サンチョもそれに同意した。
「そうですとも! お二人はきっとご無事でございます! ですからソル様もマァル様もどうかご安心を……。父上と母上はきっと帰ってきます。帰ってきますとも!」
彼は腕の中の赤子に優しい目を向けた。
「おお、よしよしよし……」
あやしながら天を仰ぐ。
本当は厭な予感がして仕方がないのだ。
余りにも似すぎている状況に。
それを打ち消すことだけで、精一杯だった。

 
 
同じ頃。
グランバニアから遠く北に離れた土地で、競売が始まっていた。
壊れた遺跡で行われるこの競売は、もちろん正規のものではない。
盗品や真贋の不確かなもの、本来ならば売られるはずの無いもの、そういうものが売られるわけありの競売だった。
ここで売買されたものについては、来歴も行き先も告げられない。売り手も買い手も、商品については口を閉ざすのがルールだった。

男は、この競売に来るのは久しぶりだった。
家族や使用人たちは、ここの競売に来ることを嫌がっている。
出かけることも、物を買うことも危険だからだ。男も危険なことは承知していた。しかし、それを凌駕するだけの魅力的な品が出品されることもまた、事実だった。

男は長く続けられている競売を静かに見守っている。
お披露目で見せられた品に、気に入ったものがあった。
生きているかのような見事な石像だった。あれになら、幾らかけてもかまわない。そのために、他の品は全て見送ってきたのだ。
舞台に若い男が二人上ってくる。
目当ての品が出品された。
何度見ても美しい。本当に精巧な石像だった。
美しい青年と女性の像が舞台上にのせられる。一対だとなお良かったのだが、女性像には既に決まった買い手がいるらしい。男のほうだけが売りに出ていた。
男は気を取り直す。対で無くても、石像は価値を落とさないだろう。

「さあさあいよいよ今日の1番の売り物だよ!」
舞台の男が声を張り上げる。
男は落ち着くために深呼吸した。
何が何でも競り落とす。
「どうだい! 見事な石像だろう! これほどの物はめったによそじゃ手に入らないぜ! さあ一万ゴールドからだ! 一万ゴールド!」
舞台上の男の声に、男は少し眉を寄せる。
スタートは思ったより高かった。
しかし、石像の価値に比べるとかなり安い。
芸術の分からない男だ、と舞台上の男を心の中で批判する。
「12000!」
声が上がった。
まだだ、と男は思う。まだ声をあげるには早い。
「おっときたぜ! 12000! 12000! 他にないかっ?」
舞台上の男はキョロキョロと客席を見回す。
その動作に釣られたように老人が手を挙げた。
「15000じゃ!」
少し辺りがざわめいた。
舞台の男は嬉しそうな声をあげる。
「よ! じいさんお目が高い! さあ15000だよ! 15000!  15000……」
「16000!」
「おっと出ました16000! もうないかっ? 16000! 16000……! 早くしないと買われちまうよ! めったに手に入らない見事な芸術品だ! その上この石像は幸運を呼ぶという予言つき! さあさあ買わなきゃ損だよ!」
幸運を呼ぶなどということは今初めて聞いたが、そんなことはどうでも良かった。芸術品のあの石像の価値に比べて、意味は無いように思える。
この辺りが潮時だろう、と男は考えた。
そして手を挙げる。
「20000!」
「20000! よーし売ったあっ!」
男はあの芸術品が手に入った事に満足する。
「お客さんいい買い物をしたね。じゃあ支払いはそこの男によろしくたのむよ」
若い方の男がニコニコと自分を見るのをみて、男は微笑み返した。
そして声を張り上げていた方に金を渡す。
「確かに20000ゴールド受け取ったぜ。さあ持っていってくんな! みんなありがとうよ! オレたちお宝兄弟の売り物は これでおしまいだ!」
男は石像を受け取ると、すぐに帰る支度を始める。
その耳に売り手の兄弟の声が聞えてきた。
「あれれ? 兄さん。もう一つの石像は売らなくてよかったの?」
「ああ、こっちはちょっとしたあてがあってな」
「ふーん」
一体どこに売られていくのかしらないが、やはり対で欲しかった、そう思って男は振り返る。
みつあみの髪をした美しい女性の像は、自分の買った男の像を見ているような気がした。

その目は寂しげに見えた。

 
■やっぱり三人称は苦手な気がした今回。
双子まであとちょっと!がんばれ私!

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