■テスは現在レベル13。
最近の趣味はゴールドマンを狩ること。
そのおかげで最近はお金に困る事が少なくなってきた。
それにしても鉄の盾とやらはどこに売っているのであったか。
記憶が曖昧だ。もう皮の盾では守備力的にきつい。
どういうことだ。

……以上携帯電話版DQ1の報告。
 

■チゾット 2 (ビアンカ視点)
目が覚めたら真夜中だった。
首をゆっくり動かして窓の外を見ると、夜空に星が瞬いていた。
その一つ一つがどれもきらきらとしていて、宝石みたいに見える。
それだけ空気が澄んでいて、空に近い村なんだろう。

すぐ近くで、寝息が聞こえる。
テスはもう眠ったんだろう。
逆の方向に首を動かすと、向こうのベッドにテスは居なかった。
じゃあこの寝息はどこから聞こえてきてるんだろう。
視線を部屋の中に彷徨わせる。
右手が、テスの左手に握られていた。
ゆっくりその腕をたどっていく。
テスは、私のベッドの傍の床にひざを抱えるようにして座ったまま眠っていた。多分、ずっと傍についていてくれて、ついに眠ってしまったんだろう。

随分心配をかけてしまった。
とても気分が悪かったのは本当だけど、心配かけたくなかったから、何も言わなかったのに。
これじゃあ、本末転倒。
あんなところで倒れちゃうなんて思ってなかった。
思っていた以上に、身体の変化が激しい。
テルパドール以降、凄く疲れやすくなったし、ちょっとしたことで気分が悪くなる。
……心当たりが、ないわけじゃない。

どうせ動けなくなるなら、何が何でもテスの故郷で。グランバニアで動けなくなればいいのに。
でも実際は、私が思ってるよりずっとはやく、進行してきてる。

もうちょっと。
もうちょっとだけ私に猶予を頂戴。
決して、否定してるわけじゃないの。
いい子だから。
もう少しだけ、お父さんとお母さんに時間を頂戴。

私は左手でそっとお腹を触る。
もう2ヶ月くらい、女性特有のあの日が来ていない。

……ということは。
つまり、そういうことだろう。
私の中に、新しい命が、存在してるんだ。

本当は、今すぐにでもテスに報告したい。
きっと喜んでくれると思う。
でも、そうしたら、きっとテスは子どもがある程度大きくなるまでこの村にとどまるって言い出す。旅を中断してしまう。
すぐ近くに、熱望してやまない故郷があるのに。
きっと我慢してしまう。
そんなのは、私が嫌だ。
 
……黙っていよう。

もうちょっとお互い我慢しようね。そうしたら……きっと私達、祝福して貰える。
 

 
「……テス、起きて」
声をかけると、テスがのろのろと頭を上げた。
「……あ、ビアンカちゃん。どう? 調子は?」
かすれた声だった。
「随分寝たから、もう平気。ごめんね、心配かけて。明日にはきっと大丈夫だから。……それよりテス、ベッドに寝にいきなよ。そんなところで寝ちゃってたら、今度はテスが風邪で倒れちゃうわ」
「……うん、わかった……ビアンカちゃん、もうちょっとゆっくり眠ってね」
私は頷く。
テスは私の額に手を当てて、熱がないかだけ確かめてから向こうのベッドにもぐりこんだ。
私はそれを見届けてから、目を瞑る。
明日には、きっと動けるようになっている。
 
 
目が覚めると、窓から朝日が差し込んできていた。
窓の外には、透明な空気。
起き上がってみる。……なんともない。
伸びをしてみたり、体を軽く動かしてみる。……なんともない。
大丈夫。
まだ動ける。
私は着替えてからテスを起こしに行く。
「テス、起きて」
いつもならなかなか目を覚まさないテスが、すぐに起き上がってきた。
「おはよう」
にっこり笑って、元気なのをアピールしてみる。
けどテスは私をまじまじと見つめて「……大丈夫なの?」ってすぐに言った。
微妙に不信そうだ。
そりゃまあ、仕方ないのかも知れないけど……。
「私、もう元気が出たわよ? だってもうすぐテスの故郷が見られるんだもん。コレで元気がでなかったら、何で元気が出るって言うのよ! さ、早く行きましょうよ!」
私は半分ムキになって元気だと主張する。
けど、テスは首を横に振った。
「しばらくここにとどまって、ちょっと体調を整えてから行こう。これから寒くなるんだし。まだ心配だよ」
 
……参った。
心配してくれるのは分かる。
けど、しばらくとどまったりしたら、ますます私は動けなくなる可能性が高くなる。

「テス! 逆よ! 寒くなるんだったら、その前に山を下りなきゃ! だって雪が降り始めたらすすめなくなるわよ!?」
「だったら、来年の春にでも降りればいいよ」

来年の春なんて、もっと動けない!
 
「私は一刻も早くグランバニアに行きたいの!」
「ボクはちょっとでも長くここにいて、ビアンカちゃんに体調をしっかり元に戻してほしいの!」
私達はお互いにらみ合う。
考えてみれば、ここまで本格的に意見がぶつかって喧嘩するのは初めてかもしれない。
「……ともかく、絶対今日は動かないから。もう一日しっかり寝て、ちょっと頭冷やしてよビアンカちゃん」
「頭を冷やすのはそっちのほうでしょ!? 私が元気だって云ってるのに、何で信用しないわけ!?」
「……大丈夫って云って倒れたのは誰?」
テスが低い声で言った。
それを云われると、私は何も言い返せない。
テスは大きく息を吐いた。
「何をそんなに焦ってるのか分からないけど、とりあえず落ち着いて。ボクはビアンカちゃんを失いたくないんだ。グランバニアにたどり着けなくなるより、ずっと嫌だ。お願いだから、無茶をするようなこと言わないで」
「……けど、なるべく早く行きたいの。だから、来年の春なんていわないで。せめて……そうね、お互い妥協して長くても3日くらいにして。ここにとどまるのは」
テスは私をじっと見た。
「……分かった。そのかわり、この三日間はおとなしくして、身体の調子を整えるのに専念して」
「わかった。約束するわ」
私は頷く。
「朝ごはん、ここで食べる事にしよう。……宿の人にもらってくるよ」
テスはそれだけ云うと部屋を出て行った。

私はその背中に、ひたすら謝る。
ごめんなさい。
我が侭云ってごめんなさい。
隠し事しててごめんなさい。
気持ちはとても嬉しいの。
私を気遣ってくれるのは分かってるの。
結局折れてくれてありがとう。
本当に。
ごめんなさい。
グランバニアに着いたら、全部全部白状するから。
きっと怒るだろうけど。
でも、それ以上に喜んでくれるよね?
だから。
本当にごめんなさい。
私はテスの優しさにつけこんで、こんな我が侭言ってます。
本当に。

ごめんなさい。

 
■ゲーム中で、ビアンカが倒れたときにすぐに駆け寄らないために色々云われてる主人公ですが、私はビアンカちゃんが倒れた次の朝に、ビアンカちゃんに起こされるまで寝ている主人公のほうが問題あると思います。
実際貧血とかで倒れた人は下手に動かしちゃいけないんだしね。
 
で、とりあえず。こういう理由なら、次の朝寝てても許そうかなと思って書いてみました(笑)
 
ビアンカちゃんの御懐妊については、ゲームではもっと後にならないと分からないわけですが、本人が分かってないわけないので、ささーっと先に持ってきてみました。
まあ、その辺は「小説風」なので。プレイ日記だけど。

考えてみればテっちゃんとビアンカちゃんの喧嘩って初めて書くよ。そんなにたいした喧嘩でもないけど。
 
次もまだチゾットに…

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