■いたスト、弟が昨日はビアンカちゃんと戦ったらしいです。
曰く
「ビアンカ弱かった」
彼にとってBランクのビアンカちゃんはもう敵ではないらしいです。
私にとってのBランクは物凄い強敵なのに……。
まあ、いいけど……。
オイラの天空城はまだ進んでません。
 
 

■サラボナ 1 (テス視点)
サラボナについたのは、夕方だった。
サラボナは町をぐるりと壁が囲っている。町の入り口からはまっすぐ目抜き通りになっていて、広場には噴水がある。かなり大きな町なのに、とても綺麗で静かな、いい町に見えた。
町のすぐ隣には大きな塔が立っている。
 
いよいよ夏は本格的になってきているから、日が沈んでくるとかなり風が涼しくなってきて、それが嬉しい。
町の入り口のあたりまでくると、夕食の準備だろうか。どこからかイイ匂いが流れてきていた。
「じゃあ、ボク宿に泊まってから天空の盾の持ち主の人探してくるね。しばらく外で待ってて?」
「わかりました」
「上手に持ち主と交渉して来いよ?」
 
口々にいう皆に返事をしている時だった。
「誰か!」
綺麗な女の人の声が遠くから聞こえた。
かなり焦っているみたい。
「誰か! お願いです!」
その声はどんどん近寄ってきているみたいだった。
 
「なんでしょう? 女性の声ですね」
ピエールが少し緊張したような声で、町のほうを見る。
「助けて欲しい、とかかもよ?」
スラリンがボクを見上げていう。
「だったら、助けてあげなきゃ」
ボクも少し身構えて町のほうを見る。
女の人の声はどんどん近づいてきている。
「誰か! お願いです! その犬を捕まえてください!」
「……犬?」
ボクらは少し唖然として、町のほうを見てみる。
確かに、この町の入り口に向かって、白い大きな犬が走ってきていた。今は丁度噴水ぐらい。迷うことなく、コッチへ向かっている。
「……こっちへくるね。捕まえてあげなきゃ。皆馬車へ。あの女の人もコッチへ走ってきてる」
「わかった」
皆が馬車に乗り込むのと、犬がボクの腕の中に走りこんでくるのは丁度同じくらいのタイミングだった。
 
大きくて、人懐っこいカワイイ犬。
「どうしたの? なんで走ってきちゃったの?」
ボクは犬の首筋を撫でながら訊ねてみる。もちろん答えてもらってもボクには解らないんだけど、そんなことをいいながら女の人が来るのを待った。
女の人は、暫くすると走ってここまでやってきた。
大きく何度も息を吸ったり吐いたりして、息を整えている。
「ごめんなさい。この子が突然走り出して……。一体どうしたのかしら? さ、いらっしゃいリリアン」
女の人は腕を広げて犬を、リリアンを呼ぶんだけど、リリアンはくーんくーんと鼻を鳴らしてなかなかボクから離れない。
「まあ? リリアンが私以外の人に懐くのなんて初めてですわ。あなたは一体……」
 
女の人が、初めてボクをみた。
ボクも、女の人をちゃんとみた。
目が合う。
綺麗な人だな、って思った。
大きな水色の瞳。桃色の小さな口。水色の腰まで伸ばした髪を頭の後ろで大きな桃色のリボンで止めている。サラボナの民族衣装なんだろうか、肩を出す丈の長いワンピースを着ている。
清楚な雰囲気を持った、女の人。
しばらくぼんやりと見詰め合ってしまった。
 
先に我に帰ったのは、女の人のほうだった。
「あら、いやだわ私ったらお名前も聞かずにボーっとして。お名前を聞いてもよろしいですか?」
「あ、えーと。ボク、テスっていいます」
「そうですか。テスさんとおっしゃるのですね。本当にごめんなさい。またお会いできたらきっとお礼をいたしますわ。さあ、リリアン、帰るわよ。いらっしゃい!」
女の人はリリアンを連れて、町の奥へと消えていく。
夕日に照らされた彼女は、とても綺麗だった。
 
「綺麗な人だったな」
スラリンが馬車から顔を出して、ぼそりという。
「うん、綺麗な人だったね」
ボクもぼんやりと返事をする。
「主殿?」
「……あ、うん、何?」
マーリン爺ちゃんが馬車の奥で笑いをかみ殺している。
スラリンは呆れたようにボクを見上げている。
ゲレゲレは興味がないのか馬車の奥で寝転んだままで、ガンドフとコドランは困ったようにボクとマーリン爺ちゃんを見比べている。ホイミンはふよふよと漂ったまま、ボクをみてにこーと笑った。
「お気をつけて」
ピエールが静かな声で言った。
「……何に?」
「色々と」
スラリンがぼそりと言って、ボクに早く町に行けっていった。

 
町の入り口近くにあった宿はとても大きかったけど、かなり安く泊まることが出来た。
荷物を置くと、ボクは町を回ってみる。
広場の噴水のところは町の人の憩いの場になっているみたいで、沢山の町の人が夕暮れ時の涼しい風のなかで話をしたり、忙しそうに歩いていくのが見える。
 
聞くとはなしに聞こえてくる噂は、やっぱりこの町に戻ってきたフローラさんの話しが多い。
どうやらフローラさんは結婚のために町に戻ってきたらしいんだけど、そのお婿さん選びがそのうち始まるらしい。
ボクにとっては結婚はまだまだ先の話になるだろうから、なんだかピンと来ない。
たぶん、結婚するなら勇者が見つかるとか、お母さんを見つけた後、何処か一箇所にとどまることができるようになってからじゃないと出来ないだろうし、第一相手もいない。
「……ビアンカちゃんってもう結婚したのかな?」
考えてみればビアンカちゃんはボクより2歳もお姉さんだった。今まではただ、無事を伝える為に逢いたいなって思っていたけど、結婚してたら逢いに行くのは考え物だなあ。一応ボクは男だから、旦那さんが気を悪くするかもしれない。
「……まずはダンカンさんやおかみさんに会うほうがいいかも」
ボクはなんだか呆然とした気分で、空を見上げる。
随分蒼さを増した空に、一番星が光っていた。

 
犬を追いかけてくるお嬢さんの視点と、どっちにするかなーって考えたんですけど、とりあえずテっちゃんにしてみました。
テっちゃん、珍しく女の人をみて「綺麗」といいました!
テっちゃん、珍しく女の人を見て「ぼーっと」してしましました!
ヘンリー君が居たらいい突っ込みをしてくれたでしょうに!
何で居ないんだ! ヘンリー!(八つ当たり)
 
というわけで、暫く楽しくかけそうです。
サラボナ編は長いけど、楽しいぞー!

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