■最近ビアンカ「ちゃん」ビアンカ「ちゃん」と呼んでいるせいか、周りの友人たちが「ビアンカちゃん」と呼ぶようになってきました。
破壊力満点だよ、テっちゃん!(笑)
伝染しまくってるよ、テっちゃん!(大笑)
 
 
■友との再会 4 (テス視点)
懐かしい、と云うにはあまりにも嫌な思い出が多い部屋。
小さな部屋の中央には、あの日と同じように宝箱が置かれている。
コレをあけて。
中には何もなくて。
戻るとヘンリー君が居なくて。
まだ、かくれんぼだと思ってのんびりしてて。
 
そうだ。
長い長いかくれんぼだったのかもしれない。
ただ、探してくれる人が居なかっただけで。
 
ボクはゆっくりと宝箱に近づく。
長い時間掛かったけど、ようやくこの宝箱の中身を見つける日が来たんだ。
「さてと」
ボクは宝箱の前にしゃがむと、その蓋を持ち上げた。

 
中身はなかった。
 
「……やられた! また空だ!」
悔しいわけじゃない。
ただ、笑いがこみ上げる。
 
ボクはいつまでたってもボクのままで。
ヘンリー君もいつまでたってもヘンリー君のままで。
これからもボクはきっとヘンリー君に騙され続けるんだろう。
 
「あーぁ。やられたなあ」
ボクはため息をつくと、立ち上がろうとして宝箱をもう一度見る。
その底に、何かが書き付けてあった。
よくよく見ないと、解らないように書いてある。
それは、ヘンリー君からの手紙だった。

 
『テス、お前に直接話すのは照れくさいからここに書き残しておく。

お前の親父さんの事は、今でも一日だって忘れたことはない。
あのドレイの日々に、オレが生き残れたのは、いつかお前に借りを返さなくてはと……。
そのために頑張れたからだと思っている。

伝説の勇者を探すというお前の目的は、オレの力などとても役に立ちそうにないものだが……。

この国を守り、人々を見守ってゆくことが、やがてお前の助けになるんじゃないかと思う。
 
 
テス、お前はいつまでもオレの子分……
じゃ、なかった。
友達だぜ。
 
 
 
ヘンリー』
 
ボクは何度もその手紙を読んで、内容を覚える。
ボクはヘンリー君に生かしてもらったと思ってるように、ヘンリー君はボクに生かされたと思ってくれていたんだ。
 
宝箱の底に書き付けたのは、誰にも気付かれないようにっていう事と共に、きっとボクが持っていかないように、何度も読み返したりできないようにするために、こんなところに書いたんだろう。
コレこそが『オレの愛』だったんだろう。
 
ボクは、そのままヘンリー君の部屋へ向かう。
足取りは軽い。自然と笑みがこぼれるのが解る。
 
 
 
ヘンリー君の部屋に戻ると、ヘンリー君とマリアさんは相変わらず紅茶を楽しんでいた。
ボクが持ってきた花束が、もう花瓶に生けられている。
「おう、帰ったか」
ヘンリー君が軽くボクに手を挙げた。
「あのさ、ヘンリー君。何にもなかったよ?」
「え? 宝箱に何にもなかっただと?」
そういうと、ヘンリー君はゲタゲタと声をたてて笑った。
「お前は相変わらず騙されやすい奴だなー!」
「……まあ、子分のしるしはあったけどね。持ってこなかったけど」
言い返すと、ヘンリー君はぐっと言葉に詰まった。少し顔が赤い。ボクだって騙されて負けてばかりいるわけには行かないんだよ、ヘンリー君。
 
「……今回は引き分けだな、テス」
ヘンリー君は笑ってそういうと、立ち上がって戸棚の方へ行くと、少し大きめの木箱を持ってきた。
「今度こそ本当に渡すよ。これが記念のオルゴールだ」
ボクは木箱を受け取ると、早速中を確かめてみる。
ヘンリー君とマリアさんの人形がのった、綺麗なオルゴールだった。
「うわあ。人形のってる。恥ずかしい」
「なんて事言うんだ。出来がいいだろう? でな、実は蓋のところに宝石を埋め込むはずだったんだけど、職人が見つからなくてな。まあ、その辺はカンベンしてくれ」
「ボクの人生にこんな大きな宝石を埋め込むような余裕ができるのがいつかわからないけど、いつか完成させるよ」
ボクは大きくあいている空洞を見つめながら笑った。
 
 
「そうだ、中庭に皆も連れてきたんだ。会ってあげてよ。スラリンとか、とっても会いたそうだったんだ」
ボクはヘンリー君とマリアさんを連れて、中庭に出る。
あの頃と違って、花が植えられていて綺麗になっている。
皆は馬車の中でのんびり待ってくれていた。
「おう、お前ら元気か?」
「あ、馬鹿ヘンリーだ」
「馬鹿は余計だ」
ヘンリー君とスラリンは早速言い合いを始める。
「皆さんお元気そうで良かったわ」
マリアさんがニコニコと笑いながら、ガンドフの頭を撫でてくれている。
「なんか、ちょっとメンツがかわったな」
「うん、マーリンとホイミン。二人とも魔法のエキスパートだよ」
「へー」
ヘンリー君は二人と握手をしながら
「テスは結構色んなところ抜けてるから、よろしく頼むぜ」
なんていう。
「わかったわかった。任せておけお若いの」
なんてマーリン爺ちゃんも受け答えしている。
 
ボクってそんなに頼りないだろうか?
 
結局、このままお城に泊めてもらうことになった。
ボクはヘンリー君に、ここを出てから何があったのか話して聞かせて、ヘンリー君は最近あった色んな事を聞かせてくれた。
「そのルーラっていうのは体験してみたいなあ」
って、ヘンリー君が言うから、「アレはちょっとつらいよ?」とだけ答えておいた。
 
 
話は尽きなくて、結局ほとんど夜は眠らないままになった。

 
朝になって、別れる時間が来た。
やっぱり、ちょっと別れるのはつらいなって思う。
今日も、ヘンリー君は町外れまで見送りに来てくれた。
本当はそんなに身軽な身分でもなくなっただろうに、本当に嬉しいことだと思う。
「また、いつでも気軽に来いよ? 土産なんかいらないんだからさ」
「わかってるよ、今回が特別だったんだから」
ボクらは一回笑いあうと、がっしりと握手した。
「元気でな、テス」
「ヘンリー君もね」
 
ボクはヘンリー君から離れると、皆を呼び集めてからルーラを唱える。
一瞬のうちに、ラインハットが遠ざかる。
 
別れるのには、いい魔法なのかもしれない、と思った。

 
妙に長くなった「ラインハットにぶらり旅」もちょっと駆け足気味におしまいです。
次は遂にあの「大きなネコ」を引き取りに行って来たいと思います。
 
大きなネコは、どのくらいかかるかなー。
ふー(遠い目)

コメント

nophoto
名無しです
2012年4月11日22:08

こういうサイト待ってました!いろいろな小説サイトはめぐったけどヘンリーの手紙があるのが無くて・・・
いい小説をありがとうございました!

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