■今日のテーマはコミカルです。
うそです。
親分(ヘンリー君)が微妙にひどいです。
そういうの、平気な人だけどうぞ。

 
 
■ラインハット・リベンジ 6 (テス視点)
中庭で待ってくれていたピエールとスラリンと合流してから、ボクらはヘンリー君の案内で書庫へ入った。
途中、時々城の人とすれ違ったけど、もう城の人たちは多少魔物を見たくらいでは驚かないみたいで、ボクらは誰にも呼び止められなかった。麻痺してる。ちょっと心配だった。
 
書庫は、普段は誰も入らないらしく、ホコリっぽい。本が傷まないようにか、窓一つなくてとても薄暗かった。
「どのあたりかな?」
「デールは結構旅行記とか好きなんだ、自分が外出できないからさ」
「じゃあ、その辺から探してみようか」
探し始めて一時間くらいたったころ、漸くそれらしい本を見つける事が出来た。
 
それは昔ラインハット城から旅立った一人の旅人の話。
城にある「旅の扉」から、南の地へ向かう話だった。どうやら、その旅人の目的地は南の地に立つ塔で、そこに「真実の鏡」が収められているらしかった。
ただ、その入り口は修道僧が持っている鍵が必要らしい。
結局、この旅人はその鏡は手に入れることができなかった、とかそういう話だった。
 
「結局そういう鏡が本当にあるのかどうか、全然分からない記述だな」
「見つけてても書かないっていう方式なのかもしれないよ、ほら、後々の争いを避けるためにあえて書かないっていう話もあるみたいだし」
「ま、どのみちこれにすがるしかないわけだしな。……この城にある旅の扉から旅立った先祖が居るわけだよな。意外とロマンチックじゃないか」
「……そう思えるヘンリー君が
そこまで言った時、ヘンリー君が力いっぱいボクの額目掛けてチョップしてきたから、最後まで言う事は出来なかった。
「さ、気を取り直していこうぜ!」
ヘンリー君がこぶしを突き上げて勢いをつけて言う。ボクは痛む額をさすりながら、その後ろで小さくこぶしを上げた。
 
旅の扉は、書庫の隣にあった。
青い光が渦巻く、不思議な入り口。
「これかな?」
「だろうな」
「どうやって使うのかな?」
「さあ?」
「あの光の中に入って見ればいいじゃないかー」
「恐くないわけ? スラリン」
「別にー」
「でも、そのくらいしかできそうな事はありませんよ」
「……だよねえ」
ボクらは、その光をしばらく見つめながらそんな話をした。
 
結局、ヘンリー君がスラリンをいきなりその光に投げ込むっていうかなり横暴な作戦を決行した。そうしたら、スラリンが見えなくなった。
「うわ! ヘンリー君の人でなし!」
「お前を蹴り込むって言う方法も考えたんだが」
「ひどい! 先に自分から入るって言う猛者っぷりとか見せてくれればいいのに!」
「そんなオレはオレじゃない!」
「ヘンリーの阿呆!」
スラリンの声が急にした。
「スラリン! よかった無事だったんだね!」
「テス! オイラのかわりにヘンリーの事思いっきり蹴り飛ばせ!」
ボクはとりあえず、さっきのチョップの恨みもついでに、ヘンリー君を蹴り飛ばす。
「で、光に入ったらどうなったんですか?」
ピエールがスラリンに訊ねた。彼はいつだって落ち着いてる。
「ん? なんかな、知らない建物に出た。向こうにも同じ光があって、オイラそれに飛び込んで帰ってきたんだ」
「では、どこかにつながっているのは確かなのですね」
「そうだぞ」
「主殿」
ピエールがボクを見上げた。
「うん、行かなきゃね。こんな風にはしゃいでる時間、実はあんまりないしね」
ボクはヘンリー君を見た。
「じゃあ、ヘンリー君からどうぞ。スラリンのおかげで無事は証明されてるから平気だよね?」
「根に持ってるな?」
「持つよ」

結局ヘンリー君は光の渦に飛び込む瞬間、ボクの腕をつかんで一緒に入るように仕向けてきた。
ヘンリー君は強かだと思った。
 
光の向こうは、がっしりとした石造りの建物だった。
周りは森になっていて、ものすごく静かだった。
遠くに、かなり高い塔がたっているのが見える。
「あれが目的の塔かな?」
「ちょっと遠いな」
「入り口の鍵は修道僧が管理してくれているんだっけ」
「どこの修道僧だっていうんだよなあ」
ボクらは、遠くにある塔をもう一度見つめる。
「とりあえず、知ってる修道院は助けてくれたあそこしかないし、居るのは女の人だから修道女だけど、まあ、聞きに行ってみようよ。あの人達の知り合いの修道院が鍵を持ってるかもしれないし」
「そんなにうまくいくかよ」
「どのみち、そのくらいしか方法は残ってないよ」
「……ま、そうなんだけどさ」

ボクらはそこで顔を見合わせる。

「で、ここ、どこなんだろうね」

しばらく地図と方位磁針とを見比べて、とりあえずラインハットの南ということと、塔がたってるところを比較して「たぶんここだろう」っていう見当をつけてみた。
「とりあえず、北上してみようか。うまくいけば、お世話になった修道院につけるし」
「そうだな」
そう答えると、ヘンリー君は少し遠い目をした。
「マリアさん、元気かな」
「ボクら程度には元気なんじゃない?」
「会えるといいなあ」
「会えるよ、普通に考えたら」
「……なあ、お前マリアさんのことどう思う?」
「どうって?」
首をかしげると、ヘンリー君が大げさにため息をついた。
「オレが悪かったよ。行こうぜ」
「え? 一体何!?」
先に歩き出したヘンリー君の後を追いかけながら、ボクは聞いてみたけど、結局答えてくれなかった。
ただ、スラリンが「マリアは美人なのか?」って聞いてきたから「うん、まあ」と答えたら、何だか深く納得したようだった。
ピエールは首を傾げて「なんでしょうね?」と不思議そうに答えてくれた。
 
正直なんだかよく分からない。
けど、まあ、分からなくてもいいような気がしたから、それ以上追求するのはやめることにした。

 
「親分、暴挙に出る」の巻(笑)
1・実際、初めて旅の扉を見たら結構ひるむと思う。あんなのに飛び込めっていわれてもねえ?
ヘンリー君がひどい子になっちゃった。昨日はあんなに格好良かったのに(笑)
でも、掛け合い漫才みたいで個人的には楽しかったよ。
 
2・ゲームでは、地図が簡単に参照できて、行き着いた先もわかりやすいけど、実際はどこに出たのか分からないはず、ということでああいう表記にしてみました。
……どうやって見当つけたんだろう。海岸線の延び方とかか?
 
3・恋愛ごとに関して、テっちゃんとピエールは非常に鈍い設定です。スラリンは鋭い。ヘンリー君はもう心ここにあらずな感じで。
 
次からはマリアさんが登場です。
女の子は華やかでいいなー。楽しいなあー。
……あ! この表記で行くと、どらきちとブラウンまだラインハットじゃないか! まあ、連れてきたことにしよう。ゲームではそうだし。見逃せ!

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索