■メリークリスマスで、ゲームの季節は、春。
 
 
 
■妖精の国4 (テス視点)
ボクはゲレゲレとベラと、三人一緒に妖精の村にもどった。
まだ、雪は降っているし、積もってるけど、村の皆はもうボクが春風のフルートを取り返したのを知ってるみたいだった。……なんでかな? ザイル君がさきに来て言ってったのかな?
みんな、口々にボクやゲレゲレや、ベラの事をほめてくれてる。皆嬉しそう。
いいことした後って、気分がいいなあ、って思った。
 
ボクらはポワン様のところへまっすぐ、一番最初に行った。
ポワン様は立ち上がってボクからフルートを受け取って、にっこり笑った。
「まあ! これはまさしく春風のフルート! テス、よくやってくれました。これでやっと、世界に春をつげることができますわ。なんてお礼をいっていいのやら……。そうだわ! 約束しましょう。あなたが大人になり、もしなにかに困ったとき再びこの国を訪ねなさい。きっとちからになりましょう。いいですか? よく覚えておくのですよ?」
「うん、わかったー」
ボクがにっこり笑って答えると、ポワン様はもう一回笑って、それからフルートを口元に持っていった。
綺麗な音楽が、流れる。
その音楽にあわせて、お城になってる樹の枝に、お花が咲いた。
ピンク色で、ふわってした花びらの、お花。
それが、次々と咲いていく。お城の樹だけじゃない。どんどん遠くのところのお花が次々咲いていく。
とっても綺麗。
「さあ、寂しいけれど、そろそろお別れの時です」
ポワン様の声が聞こえた。
「テス、あなたのことは忘れないわ。これ、今はまだ枯れ木に見えるけど、暖かくなったらお花が咲くわ。もって行って。……元気でね」
ベラがボクに、木の枝をくれて、それから手を振った。
「ボクも、忘れないよ、ベラ。ポワン様も、忘れないよ」
ボクも手を振る。
お別れは、やっぱり寂しいな。
 

気付いたら、僕はお家の地下室にいた。ゲレゲレも一緒に居る。
振り返ったら、黄色に光ってた階段がすーっと消えていった。
「あ、なくなっちゃうね、ゲレゲレ」
本当にあったことなのか、ちょっと疑っちゃうよね。
そうしたら、空から一枚、ピンクの花びらが落ちてきた。
でも、透けてる。
ボクの足元に落ちちゃう前に、消えちゃった。
「ゲレゲレ、楽しかったね!」
ボクがゲレゲレに笑うと、ゲレゲレはちょっとだけ頷いた。
 
ボクが一階に登っていくと、サンチョがちょっとびっくりしたようにボクを見た。
「坊ちゃん、ドコへ行ってらしたんですか? 旦那様にラインハットの城から使いが来て、出かけることになったんです! 坊っちゃんも連れていくつもりで、ずいぶんさがしたんですが……。見つからなくて、旦那様はたった今お出かけになりましたっ。すぐに追いかければ、まだ間に合うかも知れません。さあ坊っちゃん!」
サンチョがそういって、ボクをお家の扉の方へ連れて行ってくれる。
「ラインハットのお城って、遠いの?」
「そんなに遠くはありませんよ。それに、旦那様はまだ多分村の中でしょうから、すぐ追いつけますよ」
「そうなの?」
「ええ、そうです」
ボクが扉を開けようとしたら、サンチョが
「あれ? 坊ちゃん、ポケットから何かが……。おや、桜の小枝ですね。もう咲き始めてるじゃないですか。最近暖かくなったからですかね。……それにしても綺麗ですねえ。坊ちゃんたちのお部屋に飾っておきましょうか?」
枝をみてみたら、ベラがくれた時には何にも咲いてなかった枝に、もうお花が咲いてる。樹のお城で咲いてたお花と一緒。
「桜って言うの? じゃあ、飾っておいて?」
「そうですよ、桜です。じゃあ、飾りましょうね」
サンチョがそういって、二階に枝を持って上がっていく。
お父さんは、桜、好きかな?
「ねえ、サンチョ」
ボクは呼びながら二階にあがる。
「おや、どうされました?」
「お父さん、桜、好き?」
「ええ、好きだと思いますよ」
「じゃあ、これ、もって行ってお父さんに見せてあげたいの」
「それはいいですね。では持っていってくださいな」
「うん、じゃあ、サンチョ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
ボクはサンチョに手を振って、お家の外に出た。

確かに、ちょっと暖かい気がする。さっきまで雪の積もってた妖精の国にいたからかな?
「あったかいねえ、ゲレゲレ」
ゲレゲレがおおきくあくびをした。
「お父さん、探さなきゃ。どこかな?」
ボクは最初に、村の入り口の方へいってみた。いつも村の入り口を守ってるお兄さんは、今日もそこにいた。
「村の外はキケンだ。坊やいい子だから、おうちにもどりなさい。え? パパスさんが出ていかなかったかって? いや見ていないぞ」
「そっか、お父さん、まだ村の中に居るんだね。探してくる」
ボクは村の中にもどった。
探してたら、教会にお父さんはいた。
「あら、テっちゃん。良かったわね、間に合ったわよ」
シスターがにっこりと笑いながらボクに言ってくれた。お父さんは、教会の中でお祈りをしてた。
「それにしても、パパスさんを呼びつけるなんて、ラインハットの国王も、傲慢な人よねっ。用があるなら自分から来ればいいのに……」
「傲慢って、なあに?」
「偉そうってことよ」
「ふうん」
ボクがシスターとお話してたら、お父さんがお祈りを終わらせて
ボクの方へ歩いてきた。
「おおテスか! 今までどこにいたんだ!? 随分探したぞ。まあ、いい。父さんは旅立つ前に神にお祈りをしていたところだ。お前も祈っておくといいだろう。父さんは村の入口で待っているからな」
「うん、お祈りしたら行くね。待っててね」
ボクが答えると、お父さんはボクの頭を二・三回ぽんぽんって叩いてから外に出て行った。

今度の旅が楽しくなりますようにって、ボクはお祈りしてから、お父さんが待ってる村の入り口まで、ゲレゲレと一緒に走った。

今度はどんな旅になるのかなあ、ってわくわくする。
 

 
あああ、テっちゃん、わくわくしてる場合じゃないよー。
という事で、妖精の国編終了です。
次はラインハット編。
……あああああ。
先を知ってるって、とってもつらいです。
 
 
 

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