■前枠、何書こうかな。

いいか、一回くらい書かない日があっても。

■ガルナの塔 2
たどり着いた部屋は何もない小さな部屋で、ただ下りの階段だけがあった。つまり、ガルナの塔本体の1階に戻ることになる。
「また1階に戻るの? 何にもなかったのに」
チッタがうんざりした口調で言うと、カッツェは笑った。
「いや、場所から言ってココは普通に入った1階の、壁の向こう側になるはずだ」
「え?」
「最初にでかい入り口から入って、右手側の通路を歩いたろ? で、奥側の裏口から出た」
暫く考えて、その通りだったから頷く。隣でチッタも真剣な顔をして頷いている。
「外に出てちょっと進んだところにさっきの小さな建物があって、そこから塔内に戻ってきたわけだ。立地的には、通路の外側だろ?」
カッツェは床に簡単な地図を書きながら説明する。地図を見ると、さらによくわかる。
「今のところ、1階は右手通路外側と、中央部が全くわからない状態だ。とりあえずこの階段を下れば不明点が減る」
「そうですね」
リュッセが頷いた。
「お前説明聞かなくても大体わかってたな?」
「ええ、まあ」

階段を下りると、少し広めの部屋に出た。部屋の隅っこに旅の扉が設置されている。部屋に窓はないけど、旅の扉から沸きあがる光で十分明るかった。何もなくて旅の扉だけある、入り口近くの部屋と似たようなつくりだ。この旅の扉は塔の中だけを移動するように作られているんだろう。あちこち塔の中を飛ばして、方向感覚をなくさせるための罠なのかもしれない。
「まあ、一本道だし悩んでいても仕方ないね。進もうか」
たとえソレが罠だとしても、結局進むしか選択肢はないわけで、私たちは旅の扉をつかって先に進む。たどり着いた場所は部屋ではなくて、通路と言うほうがいいような場所だった。細い通路の行き止まりに、私たちが使った旅の扉が設置されている。そこを背にして立つと、正面は暫く行くと行き止まりで上り階段がある。途中十字路になっていて、その左右に走る通路も細くてすぐに行き止まり。同じように上り階段があるのが見えた。
「どの道行く?」
「じゃあ、右手から順番に」
全ての階段をとりあえず上って、どうなっているのかを確かめてみる。
旅の扉の反対側の階段は大きな部屋に、あとの二つは小さな部屋に繋がっていて、また階段があった。小さい部屋のほうから順に確かめてみると、最初の階から2つ上ったところで行き止まりになっていた。どちらも宝箱がおいてあって、いくらかのお金を手に入れた。カッツェはとりあえずソレで元をとったつもりになる、と宣言してチッタにまた「だからリュッセ君を助けようの会だってば」と訂正されていた。
なんだかちゃんと進めている気が全然しない。

今度は大きな部屋のほうを見てみることにした。大きな部屋といっても、他の二つに比べて大きいだけで、実質はそんなに大きいわけでもなく部屋は見渡すことができる。登ってきた階段を背に立つと、丁度部屋の左右に上りの階段がある。それ以外には何もない。いつもどおり右手側に進んで、階段を上ってみたけどそちらはどうやらはずれだったらしくて小さな行き止まりの部屋にたどり着いただけだった。
「はずれだったね」
「何でこんなに袋小路ばっかりなの!? 嫌がらせ!?」
私が力なく笑うと、チッタが耐えかねたのか叫び声をあげる。
「やっぱりお前は悟れないタイプだよ」
そんなチッタを見て、カッツェがため息をついた。

もう一方の階段を上ると、狭い部屋に出た。すぐ目の前に上り階段がある。階段を上ったり降りたりしなきゃ駄目だし、行き止まりも多いし、旅の扉で現在地は分からなくなるし、綱も渡らなきゃいけないし、賢者になるっていうのは本当に大変なことだ。そう思ってリュッセを見たら、何だかとても生き生きと嬉しそうな顔をしていた。やっぱる当事者ともなると「近づいているんだ」って意識があるのかもしれない。
「楽しい?」
「ええ」
思わず尋ねると力いっぱい肯定されて、なんだかちょっと不思議な気分になった。

目の前の階段を上がると、再び小さな部屋に出た。形こそ違うけれど、やっぱり目の前すぐに上り階段がある。今どのくらいの高さなんだろう。窓は明り取り用の小さなものがあるだけで、あまり外は見えない。おかげで高さが全く分からない。ありがたい話だ。けど、少なくとも旅の扉を抜けてから4階分は上ってきているはずで、かなりの高さに到達しているはずだ。
……考えるの、よそう。
カッツェに続いて階段を上って、私は再び硬直する羽目になった。

正面に壁がない。綺麗な青空が広がっている。そしてその壁のないところから、向かい側に向かってロープが一本。
「……ああ、流石に参りましたね」
背後でリュッセの声がしたのを、私は呆然と聞くしかなかった。

死ぬ思いでそのロープを渡ったにもかかわらず、向かった先にあったのは階段とその次の行き止まりの部屋で、まあその部屋では凄く綺麗な銀製のティアラなんか手に入れたりしたんだけど、そんなことは瑣末なことで、つまりリュッセの探し物はなかったわけで、だったらロープを渡った私の根性とか覚悟とか返して欲しい気分で一杯になった。神様私のこと嫌いなんですか。

「しかし、参ったな。塔のいけそうなところは全部まわっちまったよ」
ロープの先の、小さな行き止まりの部屋でカッツェは今までの地図を見ながら爪をかむ。確かに、地図は見る限り完結した感じがする。
「あの爺さんがガセをつかませたとは思えない。悟りの書ってのが本以外の形態してないかぎり、見落としようがないと思うんだが」
「書って言うくらいだから本だよ」
私が言うと、「まあ、そうだろうけどさ」とカッツェは答える。それからまた地図に目を落とした。
「何処かに隠し通路とか隠し階段とかあったのか? でも、それだとしてもそんな空間もうなさそうなんだが」
「一回戻りませんか」
「なんで!?」
リュッセの提案に私は思わず悲鳴めいた声を上げる。見つかっては居ないけど、とりあえずここに居ても仕方ないからリレミトで脱出するつもり満々だったからだ。
「ちょっと……気になる場所がありまして」
「調べてみたいんだ」
「ええ、まあ」
チッタの質問にリュッセは頷く。
「じゃあ行こうか。今回はお前が主役だ」
カッツェがリュッセの肩を叩いて立ち上がる。
「すみませんね、リッシュ」
「……いいよ……がんばる」
私はリュッセと目を合わせないようにしてぼそりと答えた。

帰り道もあのおっそろしいロープを渡りきることができて、私は胸をなでおろす。先に渡りきっていたカッツェに「よくやった」なんて褒められてちょっと嬉しい。単純なのかもしれない。後はリュッセとチッタが渡ってくるのを待つだけ。二人とも高いところは平気だし、バランス感覚もいいから安心して待っていれば大丈夫。

リュッセが渡り始める。
彼は暫く進んだところで、立ち止まって私を見た、様な気がした。

「      」

何か言ったのか、口が動いているのが見える。
そして。



リュッセはロープから落ちていった。


■いやな感じで来週に続きます。
が、ご存知な方は大していやな感じでもない引きです(笑)

これからどう書こうかなー。
■ハレ晴れユカイ。

……京アニさんのサイトで振り付けコンテをまじまじと見ました。
踊れるかこんなの。
しかし普段から体を動かしていない私には、いきなりビリー隊長のところに入隊するよりは、SOS団に入団するほうがまだ運動強度は軽いかも、と思わないでもない。
ビリー隊長のところには友人が入隊してるし。
SOS団に入団のほうがいくらかネタ的にはいいかも。カラオケで踊れるし。ビリー隊長は映像あってなんぼだもんな。
気のせいかもな。

■ダブルクロス

とりあえず、ルールブックを一度読みきりました。
んー、何だかよー分からん。
でも、練習としてフルスクラッチで適当に作ったキャラに既に愛を感じられる。凄いな生まれ表。あれサイコロで振っただけでめさめさ愛を感じるぞ。設定を深く考えちゃうぞ。
というわけで全員で遊ぶ時はフルスクラッチで1日かけてキャラ作ろう(笑)
でも慣れてる人の間で一回くらい遊んでみたいな。GMするまでに。
でもこればかりはどうしょうもないから、適当に独自解釈でGMするよ。PL募集。5人まで。仲間内限定私信。
詳しくは日曜に言う。


■シフォンケーキ

日曜に集まるときに持っていこうかな、ということで、昨日練習に焼いてみた。17センチ紙型で。前回は20センチ金属型で大きすぎたから。

……紙型って難しいぞおい!

ちょっとだけ凹んで出来まして、ちょっとがっくり。
でも美味しかった。
んー、バナナシフォンとかレモンシフォンとかメイプルシフォンとか焼いてみたいです。
シフォンケーキは簡単で美味しい。

■ではそんな感じで。
もう金曜ですね。何か変な感じ。
■寝てまして、2時間遅れでアップですー。
「あー今日やっぱり無理だったのかー」とか思わせて、実はただの寝坊です。うはははは。

拍手でマップ付き攻略サイト様を教えてくださった匿名の方!
ありがとうございました!
あなたのおかげで今日のはかけました!(つまり昨日はプレイせず諦めて寝ました)

……コレでもう、プレイしてないからお休み、という言い訳はできなくなりますね(いや昨日の時点では言い訳ではなく事実だったんですよ)

電脳世界って、すごいねー。

■ガルナの塔 1
塔の入り口は開け放たれていた。
開かれた扉は、随分雨風にさらされているのか、朽ちかけている。苔むしていて、動かしたら確実に壊れる。そんな扉だった。
中に入ると、天井が高い。茶色のレンガが敷き詰められた床と、灰色がかった白っぽい壁。柱が左右に並んでいて、正面の部屋まで続いている。まるでその部屋まで案内するための通路のようにも見える。エントランスの左右にも部屋があって、それぞれの内部は暗くてココからでは良く見えない。エントランス部分の床には何かの紋様が描かれていたみたいだけれど、ここも雨風にやられたのか、半分はかすれていて元はどういうものが書かれていたのかよくわからない。入り口近くには灯りのためか火が焚かれている。誰かがこの中で暮らしている、ということだ。
ダーマのお爺さんの話では、賢者になりたい人はココで瞑想して書物を持ち帰るというしきたりがあるってことだったから、そういう賢者志望者の人が今まさにここにいるんだろう。
「中も雰囲気抜群だねー、これはもう悟っちゃうしかないって感じ」
チッタは感心したような表情で床の模様を見たり、天井を見上げたりと忙しい。
「アンタは悟りからはかけ離れて見えるよ、アタシには」
カッツェがチッタに苦笑しながら言う。チッタはむ、と頬を膨らませた。
「そんなことは! ……ないんじゃないかなあ」
「断言しなよ、そこは」
私は思わずため息混じりにチッタに言う。チッタは気にしているのか居ないのか、そこでくるりと一回転して見せた。長いスカートが翻る。
「わたしは今のままでいいの。リュッセ君みたいにさらなる高みにのぼるのも良いし、尊敬する。できたらチャレンジしてみたい、とも思う。けどわたしは魔法使いとしての高みに上りたいから、いいの。リュッセ君のいく道は、僧侶も魔法使いもこなす道。わたしの行く道は魔法使いを極める道。別なんだからいいの。わたしはそういう意味ではちゃんと悟ってるのー」

そんな話をしつつ、塔をすすむ。
塔の一階には旅の扉と、階段が二箇所。けど、どの方法も先は行き止まりになっていた。片方の階段はどうやっても先に進めないような広くて大きな割れ目の向こうに宝箱があるのが見えてとても悔しい思いをしたし、旅の扉の先の小部屋のお爺さんには「じゃまするな!」とまで言われる始末で、ちょっと途方にくれる。流石に「悟るための塔」というだけあって、一筋縄ではいかない。
「全部見て回ったよね? どこか見落とした?」
「外にいけるようになってましたから、そちらも確認しておきましょう」
リュッセの言うとおり、塔の一階、入り口から一番遠い場所にも出入り口があって、そこから外に出られるようにもなっていた。ただ、そちらは後回しにした。普通は塔って、内部完結してるものだから。
「まあ、ためしに色々行くものいいかもな」
カッツェも頷く。これで方針が固まった。
裏口から出ると、左手側に塔に比べると随分細い、けど柱とはいえない円柱形の建物があった。せいぜい二階建てというくらいの高さで、屋根に相当するだろう場所から太目のロープが塔に向かって張られていた。ソレは地面と水平で、猛烈に嫌な予感がする。
「あれ、渡れってことかな?」
「……そうかもね」
チッタがぽん、と私の肩を叩いて首を力なく横に振った。

予感はまさに的中で、円柱形の建物の二階、つまりは屋上には見事に何もなく、ただ塔に続くロープだけが張られていた。向かいに建つ塔の壁は、ご丁寧にもロープの到達点だけは壁がなく、何処かの部屋に繋がっているのだけが見える。つまり「先へ進みたくばこのロープを渡って来い!」ということだ。さすが悟りを開こうって塔だけある。一筋縄ではいかない。というかもっと穏やかに悟ってもいいんじゃないかなあ。
ロープはまず最初にカッツェが渡った。真っ直ぐ前を見て、カッツェはすたすた渡っていく。見ている間に危なっかしいことは一度もなく、難なく塔にたどり着いていった。
「いいかー! ともかく前だけ見てあるいてこーい!」
向こうのほうから声がする。
「どうします? 先に行きますか? 後からにしますか?」
リュッセが私を見た。
「もちろん、ココで待ってるという選択肢もありますけど」
「行く! 行くよ! 一人でココで待ってるなんてソレはソレで怖いよ!」
「で? 順番どうします?」
「もう行く! 先に行く! 二人は綱渡り経験は!?」
「ありませんよ、そんなの」
「ないよもちろん」
叫ぶように言うと、リュッセもチッタも困惑したような顔で答える。
「何でそんなに落ち着いてるのー!?」
「え? 楽しそう」
なんてチッタが平然と言う。
「まあ、何事も経験ですよ。多分落ちても死にません」
「二人とも絶対変だよ」
私は言うと、ロープの前に立つ。綱渡りなんて、人生でチャレンジする日がまさか来ようとは。
バランスを取って、ゆっくり歩いていく。言われたとおり、なるべく前を見て、前だけを見て、そーっとあるく。風がないからか、それともロープが太いからか、全然違う理由があるのか、その辺は分からないけど、ロープがあまり揺れなかったから時間はかかったけど、私は向かいの塔にたどり着く。疲れきったけど、何とかなってよかった。

……ちなみにリュッセとチッタは私の半分以下の時間で塔にたどり着いた。
なんだかとても悔しい。


■人気投票、今日チッタちゃんにコメントがついていた!
うれしい!
素直に嬉しい!

そんな人気投票は此方から。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html
■えー、取り合えず明日の「DQ3」の更新は微妙です。
出来るかなー?
というのも、あれだ。

「ガルナの塔のマップがわからん」

というわけで、今日の夜(今から……)攻略できればいいのですが、いま、ものすごーく眠くて、攻略不可能っぽいのです。

さて、明日どうなるでしょうね。ふふ。

■ガルナの塔へ
ダーマ神殿を出て北に向かう。
神殿の北は山道が続いていて、東西には高く聳え立つ岩の山脈が見えている。岩の山脈にはさまれて、細長い土地をしているわけだ。地図で見てみると、大地は北に暫く細長く伸びて、最終的に大きな湖にたどり着く。その先にももちろん陸地はあるけれど、今の私たちにそっち側に行く手立てはない。ただ、「まだまだ世界は広いんだな」という実感だけだ。
ダーマ周辺も、聖なる神殿とはいえもちろん魔物は出る。ギラやベギラマを使う大きなヤギだとか、アッサラームの近所に出た大猿の、もっと力の強いやつだとか。幻術を使う魔物の呪文にカッツェが思いっきり引っかかって、私に向かってきたときが実は一番怖かったけど、それはまあ、黙っておく。

北に向かう最中、スライムが出た。
と、言ってもソレはアリアハンで見慣れた青い体じゃなくて、太陽の光を反射する金属の体を持っていた。そして物凄く素早く動いて、結局であった瞬間に逃げられた。
「……今の何」
「スライム」
「いやそれはなんとなく見て分かるけど。スライムだった?」
「金属色に光るスライム」
「うん、まあ、そうなんだけど」
結局その時は全員呆気にとられたのは事実で、何だかよく分からなかった。
が、奴は二度目も現れた。
今度は不意をついて先制攻撃でギラを唱えて逃げていった。
「今のはさっきのメタルなスライム」
チッタが逃げていく後ろ姿を見つめてぼそりと呟く。
「逃げ足速いですね。あれ、現れてはギラを唱えて逃げていくことによって、相手へのダメージを蓄積して、やがて敵を倒すっていう遠大な計画なんでしょうか」
リュッセがホイミを唱えながら言う。
「ちまちまとセコイことだ」
カッツェがため息をつく。
「でもちょっとむかつくよね。あいつ逃げるとき笑わなかった?」
「気のせいだよそんなの」
チッタを宥めながら私は笑う。

が。

三度目にあれが現れて逃げていくとき、私たちは確かにヤツが笑うのを見たのだった。

「やっぱり笑ってた」
「笑いやがったな」
「うん、笑ってた」
「ええ、笑ってましたとも」
一緒に出てきたヤギからはベギラマを喰らったし、結構こっちはボロボロだったことも手伝って、何だかとっても腹立たしかった。リュッセのべホイミで傷を治してもらってから、私たちは低い声で言い合う。
「今度でたらヤツを真っ先にたたっ切ろう」
「笑ったことを後悔させてやるってことだね姉さん」
「魔法は効きそうな感じじゃなかったよね、チッタも殴って」
私たちはお互い大きく頷きあう。

今に見てろよメタルスライム。

そしてヤツはまたもややってきた。
ギラを唱えた後の隙を狙って、まずカッツェがナイフで切りつけた。金属同士がぶつかる、甲高い音がした。
「効いてるのかどうかわからん!」
カッツェがいらいらした声で叫ぶ。たしかに、今の音ははじかれた音にも聞こえる。相手の体は傷一つない。
次のリュッセの攻撃は相手に避けられた。やっぱり素早いんだ、あいつ。
次に動いたのはチッタだった。カザーブで、カッツェがどこからともなく手に入れてきた毒針を持っている。確かに、ああいう感じの体だったら、切りつけるより刺したほうが効きそうな気はする。
「えい!」
あんまり戦い慣れてないチッタの、ちょっと気合の足らないような声。それとともに針が振り下ろされる。
意外にもソレはきちんと相手の体に突き刺さって、そして。
魔法生物らしくスライムは形を保てなくなってしゅるりと大地に融けていく。
「あれ? 倒した?」
「ナイスファイト!」
一番ビックリしているのは実はチッタ自身で、自分の手やら、メタルスライムが解けていった地面やらを見比べている。
「倒せちゃうと呆気ない感じだね」
「でもちょっと素早い動きについていけるようになった気がする。その分だけ強くなった、かな?」

その後も何回かメタルスライムに襲われたり逃げられたり倒したりしつつ、北に向かう。2勝7敗くらいだった。逃げられてばっかり。

そんなこともありつつ、北に向かう。
長く続いた山道の終わりに、塔が見えてきた。
塔は大きな湖をバックに、聳え立っている。遠くから見ると、丁度湖面が光を反射してキラキラ光っているのも手伝って、とても神秘的な塔だ。でも、上のほうは亀裂が縦に走っていて、そのせいで左右に分かれている。少し崩れたようにも、建設途中で作るのをやめたようにも見えた。
「アレがガルナの塔……」
リュッセが呟くのが聞こえた。
「嬉しい?」
「そういうのを感じるのは、もう少し先でしょう」

近づくにつれて、塔の様子だ分かってきた。
ガルナの塔はかなり古いようで、地面に近い壁は苔むしている。あちこちに蔦も絡まっていて、これまで見たことのある塔とは雰囲気が違う。
「何かいかにもそれらしい! って感じ。やる気出るよね」
チッタが塔の上のほうを見上げてわくわくしたような声を出す。
「でも宝にはあんまり期待はできなさそうだ」
「だから、リュッセ君のために一肌脱ぐんだって! 賢者の高みに近づくための塔! 苔むして蔦が絡まって霧がたちこめて雰囲気抜群!」
「最後のほうはなんとなくホラーにも適用されそうな単語でしたね」
リュッセが苦笑する。
「ああ、塔……でもがんばる……リュッセのために」
私は少し重い気分で呟く。
「ありがとうございます」
リュッセがぽん、と私の肩を叩いて少し困ったように笑った。

この時はまだ知らなかった。
というか知っていたら絶対登れなかった。
そう。
この塔はリュッセへの試練というよりは、むしろ私への試練だったといっても過言ではないような塔だったのだ。


■投票まだやってます。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html

とりあえず、○票に達したらやめ、とは決めてあるのですが、まだまだそこまでたどり着きそうにないです。

では、皆様。
明日をお楽しみに!
高月は「なし」に1票!
■あー、また月曜が来てしまった。
書かねばーかかねばー。
何かもう楽しんで書いてるのか義務感で書いてるのかよーわからんようになって来ました。

……うん、いや、楽しいんだけどね。

■ダーマ神殿 2
神殿の中は、正門から奥に向けて石造りのがっしりした柱が等間隔に並んでいて、とても広い。入り口側の前半分はほとんど広場と言っていいようなスペースで、柱だけが立っている。そこでは何人かの人が思い思いの場所で座って瞑想をしていたり、素振りをしたりと修行らしいことをしていた。
「リュッセ君もあんな感じに広場に座り込むわけ?」
「さあ? どうなんでしょうね?」
なんか見世物みたい、とチッタは言いながらリュッセを見上げる。リュッセは苦笑して首をかしげた。確かに、今現在、まだこれからどういうことになるか全然想像がつかない。
話しかけて邪魔をしても悪いから、そのまま柱の間を進んでいく。奥は左右にいくつか部屋があって、中央に数段高い祭壇のような場所があった。上っていくと、祭壇には炎が焚かれていて、とても綺麗な法衣を着たお爺さんが立っていた。
「転職を希望するものは?」
お爺さんが鋭い目をこちらに向ける。全てを見透かされているようで、何だかちょっとドキドキする。
青い、透き通った、でも深い色の目。
「僕です」
リュッセが少し緊張したような声を上げて返事をした。
お爺さんはリュッセを頭から足までゆっくりと見て、その後首を横に振った。
「お前はまだ、僧としての経験が十分ではない。転職は許されない」
「……」
リュッセは言い返すことができないで、ただお爺さんを見ている。
「どのくらいで十分って判断するの? リュッセ君、回復魔法とかちゃんと使えるし、わたしたちはとても心強いんだけど」
チッタが思わずお爺さんに反論する。
「十分ではない」
お爺さんは冷たく答える。
「あと、何年くらいでしょうか」
リュッセが漸く声を取り戻す。
「経験は年月だけではない。年月に裏打ちされたものもあるだろうが、それだけではないのだ。この意味が分かるか」
「……確かに、アリアハンを出るまでの19年間と、旅立ってからの時間では、圧倒的にアリアハンのほうが長かったにも拘わらず、魔法の力が増したのは旅立ってからでした」
「良い答えだ。今一度、経験をつみなさい」
「どのくらい経験をつめば賢者になれますか」
リュッセは真っ直ぐな瞳でお爺さんを見た。
お爺さんは少し驚いたのか、目を見開いてリュッセを見つめる。
「そうか、お前は賢者になりたいのか。そういう希望を持った者の訪問は久しぶりだ」
お爺さんはそういうと、少し笑ったようだった。
「ココから山を越え、北に向かうと、湖のほとりにガルナの塔と呼ばれる塔が建っておる。賢者になるものはそこへ行き、瞑想し、書をとってくるのが慣わしだ。行けるか」
「行きます。……一人ででしょうか」
リュッセの質問に、お爺さんは初めて一緒に居る私たちに目を向けた。
カッツェ、チッタ、そして私とゆっくりとした時間をかけてじっと見る。
「ほう、ほう。なかなか面白くも不思議な運命の持ち主よ。……本来ならば一人で行くものなのだが、塔へ行くことは全ての者に経験となるだろう。全員で行くことを許可する」
「誰の運命がそんなに面白くて不思議なの?」
チッタが尋ねると、お爺さんは目をすっと細めた。
「全てだ。一人ひとりとしても、全体としても、面白くも不思議な運命を持っておる。お前たちはこの世界で様々なものを見、体験し、そして力に変えるだろう。その中にはガルナの塔も含まれる。やがて光に近づくのだ」
「……豪華な運命だ」
「では、行くが良い」

「そういえば似たような話、イシスでも聞いたよね」
とりあえず、ダーマ神殿の外にある宿に部屋を取って、今後の作戦を練ることにした。
「そういえば、そうだ。皆買いかぶりなんじゃないかなあ」
「でも、オルテガの娘だとか言ってないですよ、今回は」
「むー」
「まあ、ともかく、これからのことだ。北の塔だったな」
「そうだよ、むしろソレだよ。塔なの! ううう、ずっと先の不思議な運命より、すぐそこの塔が今はむしろ大問題!」
「リッシュ、取り乱しすぎ」
「そもそもは一人で行くべきところみたいですし、僕一人でも」
「それはちょっと嫌。力になれるなら、なりたい」
「高いところではリッシュは足を引っ張る可能性が高いよ」
「それはそうなんだけど」
私はぼそぼそと返事をする。
「でも、リッシュは僕よりよほど戦いの腕が上なのは間違いないですし、一緒に行ってくださるなら、それは心強いです。カッツェも塔や洞窟の探索ではエキスパートですし、チッタのように広範囲の攻撃魔法はほとんど操れませんから、来ていただきたいのは本音ですね」
「リュッセ君てば正直者」
「じゃあ、一緒に行くか。宝があるかもしれないし」
「姉さん、今回はウソでも『リュッセのために一肌脱ごうじゃないか』とか言わなきゃ」
「ウソでもか。宝は二の次だぞ、今回は」
「そういうのは先に言っとかなきゃ」


■前々回、「この辺の名産だというちょっと酸っぱくて甘い飲み物」っていうのをだしたら、「元ネタなんですか?」と聞かれました。

えーと、取り合えず個人的にバハラタ=インドだと思っているので、あの飲み物はインドの飲み物「ラッシー」を想定してます。
ラッシー大好き。
すごーく単純に説明すると、ヨーグルトのミルク割り、みたいな飲み物です。
夏ごろ、モスバーガーでこっそり飲み物ラインナップに入ってます。
私は大好きですが、友人たちには軒並み不評です。

↓ラッシーの作り方のページ
http://ayur-indo.com/ayur/ayurveda6-5.htm

最近は普通にお店でも売ってます。
もっと広まれ、ラッシー!
■金曜日

この日は職場の「お食事会」で、近所にあるステッキーなビュッフェスタイルのお店で食い倒れでした。
目玉は有機栽培野菜をメインとした料理と、手作り豆腐です。
いやあ、とってもとっても美味しかったです。
食べすぎで気分が悪い、吐きそう、というところまで食べたのはホント久しぶりでした。

……いや、普段はそんなに食べるタイプではない、と、思いたい。

特に絶品だったのが、「新じゃがの煮っ転がし」「にんじんの醤油煮」、そしてもちろん「手作り豆腐」。
「ジャージー牛乳ヨーグルト」と「わらび餅」も絶品でございました。
うう、書いていたらまた行きたくなってきた(笑)

今度は自重する!
食べ過ぎない!

……いやあ、本当はね、最初にとってきた2皿分でおなかは一杯だったんだけどね(最初っからそんなに取って来るなという至極まっとうなご意見はスルーする方向で)
上司の人が「もっと食べなさいよ若いんだからー!」とか言うてニコニコしてたらとりあえずとりに行かねばなあという気持ちになるじゃないですか。ご好意で連れて行ってくれてるんだしさあ……。(←実はおごりでした)

は!
もしかして遠慮して食べないほうが良かったのか!?

まあ、ともかく食べすぎで気分が悪く、家に帰ってからずっと倒れこんでいたのでした。

■土曜日

前日の食べすぎがさわやかにたたって、昼が来ても食欲がない状況に。
しかーし! それでも食卓に素麺が出たときにはちゃんと食べました。人間っておそろしいい!
いや自分の食い意地が恐ろしい。

そして普通に食べただけでもやっぱり「食べすぎなのじゃ?」と思う程度に昨日の夕食は後を引いておりました。

お昼寝しました。

お昼過ぎに唐突に誘ったにも拘わらず、全部で6人(自分含む)でカラオケに行ってまいりました。
皆フットワーク軽いな! 当日誘ってちゃんと来れるって、フットワーク軽すぎてむしろちょっと心配だな! 含む自分!
唐突にカラオケに行きたくなったんだもん。朝の情報番組でカラオケ制作会社なんて特集してたからだ。

19時集合で、すぐに部屋が取れまして、23時半まで居ました。
まあ、ほら、5人歌う人がいたし(1人は歌わない)妥当なのでは?? 最後のほうなんて歌う曲なかったけど(笑)
何かともかくマニアな大会にしてきました。
とりあえず、次回までに「ハレ晴れユカイ」の振り付けを完璧にしようと思いました(笑)

■日曜日

この週の水曜だったかに、くるりが新譜を出していたので購入に隣のS市まで行ってきました。
ついでにちょっと欲しかったサン=サーンスの「動物の謝肉祭」の一緒に購入。
そんな散在ついでに、やっぱりS市にあるマニアな本屋M書店に行って「ダブルクロス」のルールブック購入。ついでに前回読んだ「ダブルクロス・リプレイ」の2巻も購入。
しかし相変わらずマニアな店だよM書店。
バブリーズが普通に並んでた。へっぽこさんたちも全巻ならんでた。ダブルクロスも並んでた。R&Rのバックナンバーも4号から並んでた。……12号を買うかどうかで悩んで、結局買わなかった。浜田よしかづさんが歴代のSWリプレイメンバーを書いてるって噂が本当か、表紙からでは分からなかったから。目つきの悪いエルフが見てみたかったんだけど。
しかし欲しくなる本が増えて駄目だわ。あのコーナー魔界。

ところで、ダブルクロスの「サプリメント」は買わなかったんだけど、必要だったんだろうか。

で、この日漸く7月のTOP絵を描いたんですけど、まだ副管理人(苦笑)のところに持っていっていないので、UP自体はまだ先になります。
ついでにあれとかこれとかも描いとかなきゃ。もって行くまでに。

■週末日記はここまで。
■今日は食べすぎで気分が悪いです。
人間、逆上しちゃだめですね。

……バイキングって、おっそろしいね。

■ダーマ神殿 1
目が覚めると、窓の外からは既に太陽の光が差し込んできていた。今日も強烈に晴れて暑くなるんだろう。
「で? これからどうするんだい? ポルトガか、ダーマか。それとも別のところかい?」
朝食の席でカッツェが言う。テーブルには朝食と共に地図が置かれていて、皆でソレを覗き込む。食べながらだから行儀は悪いけど、なるべく早く次の進路を決めたほうがいいということで、反省しつつこういう方法をとることにした。
「ポルトガは後でいいって!」
「感情論排除」
チッタの声にすかさずカッツェがこたえる。チッタはむぅ、と頬を膨らませた。
「王様の気持ちが変わる前に胡椒を届けたほうが良くないですか?」
「イシスの女王様から便宜を図ってね、って頼まれてるんだよ? ここで言ったことを覆したら、色々問題あるんじゃない?」
「足元見るなよ」
チッタの主張にカッツェが苦笑する。「でもそうでしょ?」という反論には、カッツェは笑いながら頷いていた。

「ダーマ、行こう」

私はぽつりと言う。
「リュッセはずっとダーマに行ってみたいって思ってたんでしょ? だったら折角近くに居て、行けるチャンスがあるんだから、行かないと」
「僕は別に」
「後悔しないためにも行こうよ。私はお父さんの情報集めるときに何回も皆に我侭聞いてもらったし、チッタだってノアニールとエルフの村のとき主張が通ってるし、カッツェもカンダタのことに決着ついたし……まあカッツェのは私たちは勝手についてったんだけどさ、でも、こうやって考えたら私たちは皆大体、これまで一回くらいは我侭とおしてきたんだよ。でも、リュッセは何にも言ってない。一回くらい『こうしたい』って言ってもいいよ」
リュッセは困ったように私の顔を見た後、チッタとカッツェの顔を見た。
「んー、まあ、そういわれればそうだよね。リュッセ君は賢者になるのが夢なワケだし。近くに居るのに行かないのは後悔の元だよね。それにポルトガ行きも遅くなるし」
「アタシもそれでいい。やれるときにやれることをやったほうがいいさ。船を手に入れたら、こっちのほうへは来ないかもしれないんだし」
「後悔はしちゃ駄目だよ」
リュッセは暫く黙って、自分の指先を見つめたり、天井を見上げたりしていた。随分迷っているようだった。
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
リュッセはそういうと、私たちに深々と頭を下げた。

「ダーマ神殿へ、行かせてください」


話がまとまると、準備は早かった。
荷物を持って、必要なものだけ買い足してから、グプタさんとタニアさんに挨拶をしてから街をでる。
目指すのは街から北東にあるダーマ神殿。地図で見る限り、凄く遠いわけではない。
「案外早くつけるかも知れないね」
「早く着けても、すぐに希望がかなうとは限りませんよ」
「でも、スタートが早ければ、ゴールも早いよ」
チッタがリュッセを見る。彼は頷いた。
「まあ、せいぜい頑張ります」

バハラタの街から東に進む。
川を越えて、洞窟があった森を左手に見ながら暫く東を目指すと、やがて半島の東端に出た。地図から言えば、この海岸線に沿って、森をぬけつつ北に行けば、やがてダーマ神殿が見えてくるはずだ。
カンダタの居た洞窟は、ココからだともう西側になる。
時折襲い掛かってくる魔物は、バハラタの西にある草原とここでは随分強さが変わってくる。ダーマにはある程度力のある人しか行けないように、こんな場所に造られたのかもしれない。
何回か夜営をしながら私たちは確実に北へ進む。
森をぬけて、山道をずっと進んでいくと、やがて遠くに木々に囲まれた建物が小さく見えてくる。
「あれかな?」
「そうかもしれないね。森の中だとか言ってたし」
目的地が見えてくると、疲れていても足取りは軽くなる。新しい、知らない土地なら期待もあってとても嬉しい。
遠くに建物を見ながら歩くようになって、半日ほど。
その間にどんどん建物は大きく見えるようになってくる。
「いよいよって感じがするね」
なんてチッタの声も弾んでくる。

ダーマは古めかしい石造りの、かなり大きな神殿だった。
正面の入り口は大きな扉で、まだ中がどうなっているのか分からない。入り口には男の人が立っているのが見える。
正面入り口から見て右手側には、小さな二階建ての建物があって、そこが宿屋になっていた。
ダーマはその二つの建物しかなかったけど、何に驚いたって建物の外回りも、かなりの範囲にわたって石畳が作られていたってこと。
これまでの街や村にも、石畳の道はあったけど、所謂「庭」にココまで力を入れた建物を見るのは、お城以外では初めてだった。
「凄い建物だね、何か『他所とは違います!』ってアピールしてるよね」
チッタの言うとおり、確かに神殿はとても神秘的だった。少し古ぼけているところが、歴史を感じさせる。とても静かで、荘厳。
「なんか、そりゃこんなところなら修行だってできるよね」
「凄い力とか身につけちゃいそうだよね」
「そのために来たんだろう?」
チッタと私の会話にカッツェは突っ込みつつ、神殿を見上げた。
「まあ、確かに、何か底知れない感じはするな」


■さて、ついにダーマ編突入です。
おめでとうリュッセ君!
そしておめでとう私!!!

■人気投票継続中。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html
■夕飯を食べ過ぎて気分が悪いです。
ああ、反省反省。
反省だけならサルだってできるんじゃー!

■黒胡椒
バハラタへ戻って、真っ先にお爺さんの胡椒問屋さんに向かう。お店のドアは大きく開け放たれていて、入り口には開店中を示す看板が立てかけられていた。中に入ると、グプタさんがカウンターの中で商品のチェックをしていて、タニアさんがフロアでせわしなく動き回っていた。
「こんにちはー」
声をかけながらお店にはいると、カウンターのグプタさんが顔を上げる。
「いらっしゃいませ!」
「お店、継いだんだ」
チッタが店の中をきょろきょろと見ながら尋ねる。
「はい。前からずっと店を継ぐ用意はしていたんですけど、漸く」
グプタさんがニコニコ笑って返事をする。もともとこういう仕事がすきなのかもしれない。
「助けていただいて、ありがとうございました」
グプタさんとタニアさんが深々とお辞儀をする。
「自分の力だけではなんともならないことって言うのは世の中に沢山ある。今回のことで学習して、もっと冷静に周りを見ることを覚えな」
カッツェが少し低い声でいうと、グプタさんの体がびくりとした。私は曖昧に笑うしかない。
「そりゃもちろん、何にもしないで助けだけを待つのも根性の無い話だけどな。餅は餅屋って言葉もあるだろ。アタシが商売に向かないように、あんたは荒事には向かないんだよ。そのへんのことを考えもしないで突っ走るだけじゃ駄目だ。アンタが死んだら、そこにいるタニアが悲しまないわけが無いだろう? その辺考えたのかい?」
「……」
「まあ、説教はここまでにするか。本当はまだ言いたいことは山のようにあるんだけどね」
カッツェは大きく息を吐く。
多分本当にまだまだ言い足りないんだろうけど、言うのをやめてくれたんだろう、多分。
「それより」
私はグプタさんを見る。
「胡椒を分けて欲しいんだけど、いいかな? いくら?」
「そもそもはそのためにポルトガのほうから来たんだよ」
私に続いて、チッタが言う。
「胡椒ですか? もう、差し上げます! そんな、お金を頂くなんてとんでもないですよ!」
そういうと、グプタさんは素早く胡椒を袋に詰めてくれた。
「食べる直前にすりつぶすほうが美味しいんですよ」
「……私が食べるわけじゃないんだ」
私は苦笑しながらソレを受け取った。袋の大きさとは不釣合いなくらい軽い。
「そうなんですか」
グプタさんは残念そうな顔をする。
「では、本日はうちで夕食を食べていってください。胡椒を使った料理をご馳走しますよ」
「それ、作るのタニアさん? いいの? 簡単にそんなこと言っちゃって」
チッタの指摘に、グプタさんはすこし引きつった顔で笑った。


初めて食べた胡椒の料理は、どれもぴりっと辛くて、最初こそ驚いたけれど、とても美味しかった。お肉の味が全然違う。偉大だ、胡椒。そりゃ王様だって欲しがる。全員で相談の結果、自分たちの旅の食事用にも少し胡椒を買うことにした(流石にこっちは小さなビンだし、お金は払った)
食事を終えてから、漸く落ち着いて、色んな話をする。
「そういえばさあ」
チッタは食後に、この辺の名産だというちょっと酸っぱくて甘い飲み物を頂きながら首をかしげる。ちなみに私も貰って飲んでるんだけど、不思議な食感。私は好きだけど、リュッセには不評だった。
「どうせだから、ちょっとこの辺観光していかない?」
「は? 何で? 胡椒手に入れたんだから、王様に渡しに行こうよ」
「あの我侭な王様に? ちょっと位時間かけたほうが価値が上がるってもんだよ」
「ポルトガからココまで歩いてきて、割と時間はかかってると思うけど」
「帰りはルーラ一発じゃない。きっと帰りが早すぎるって疑われるわ」
「どこまで王様嫌いなのチッタ」
「すっごく嫌い。あの王様嫌い」
「あ、そう」
チッタが凄く苦い顔をするから、思わず私は笑ってしまった。
「あ、じゃあ、北の山脈のほうはどうでしょうか」
そういってタニアさんは首をかしげる。
「そこ、何があるの?」
有益な情報だと判断したのか、チッタが身を乗り出した。よっぽどポルトガの王様嫌いなんだ。まあ、気持ちは分からないでもないだけどさ。
「北の山脈には、転職をおこなうダーマの神殿があるそうですよ。なんでも山奥だそうで、色んな知識を持った人が各地から集まっていて、様々な修行をしているとか……」
「それ、どこですか」
それまで話を聞いているのかどうかも分からなかったリュッセが地図を広げてタニアさんに尋ねる。
ずっと前、リュッセは賢者になりたいとか、ダーマ神殿に行ってみたいとか言っていたのを思い出す。
「えっと」
タニアさんが地図で指し示したのは、カンダタが根城にしていた洞窟よりももっと北だった。洞窟があった森をぐるりと迂回して北へ向かったところ。丁度半島になっているような場所を北に進んで、入り江の近くの森を指差した。
「確か、この辺って聞いたんですけど」
「そうそう、何か周りを山に囲まれた森だっていう話ですよ」
タニアさんとグプタさんがお互いに確かめ合って頷く。
「そうですか」
リュッセは暫く地図を見つめた後、「ありがとうございます」とお礼を言って地図をしまいこんだ。


「行きたいの?」
宿への帰り道、私はリュッセに尋ねる。リュッセは暫く黙ったまま歩いて、それから「ええ、まあ」とだけ答えた。
前をカッツェとチッタが歩いていくのを追いかけながら、私とリュッセは暫く黙ったままだった。
「そっか」
私は何とか答える。
「行こうか」
「無理に寄ってもらわなくてもいいですよ。ポルトガ王の気持ちが変わらない間に胡椒を届けるべきでしょうし」
私はリュッセを見上げる。
「夢、だったんだよね」
「過去形じゃないです」
「夢なんだ」
「どっちかというと野望ですかね」
リュッセはそういって笑う。
「なれたところで、何も変わらない可能性のほうが高いんですけど」
「……お、父さん?」
「否定はしません。けど、それよりもうちょっと規模は大きいです」
「そっか」
多分、家全体をさすんだろう、と思ったけど聞かなかった。
聞けなかった。
「僕、僧侶としてはちょっとガツガツしすぎなんですよ。ほの暗いというか。……だから賢者にも向いてないかもしれませんね。ああいう方々は悟りの境地でしょう? だから無駄足になる可能性が高いですから、僕のことは気にしないでいいですよ」
リュッセはそう言って私の頭をぽんぽん、と軽く撫でるように叩くと、ソレっきり黙ってしまった。


■黒胡椒といえば、挽き方で味(というか辛味)や香りが違うんですよね。
今日買い足してきた胡椒はちょっと粗引きで、ちょっと使いづらい感じです。
だってミル付きの胡椒もあるわけで、もっと細かく挽いたのじゃないと辛さが変わんないよ。
……今日のフライドチキンにはよかったかも知んないけどさ(とても美味しかったので食べ過ぎました)

■人気投票継続中
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html
■あー、前枠に何を書くか決めてあったはずなんですけど、編集画面を見た瞬間に忘れ去ってしまいました。

きっと暑さのせいです。

なんじゃったかのうー。

■人攫いの洞窟 3
「で」
カッツェがテーブルに足を組んだ格好で腰を下ろして、冷たい瞳でカンダタを見下ろす。カンダタは床に土下座状態だ。
「色んな状況が重なって煮えくり返ったこの気持ちは、とりあえずコイツにぶつけたらいいかね?」
「当初の相手にも、今後のことも考えてぶつけたほうがいいと思います」
カッツェの言葉に、リュッセは平然と返事をする。
それって、つまりグプタさんも一発ぶんなぐっとけ、ってことだよね。確かにまあ、ちょっとむかっと来ないでもないけど。
「まあ、とりあえずはこれだな。どうしてくれよう」
カッツェは足でカンダタの顔を指す。腕組みをして、かなり機嫌が悪そうだ。積もり積もって爆発したんだ、きっと。
「参った! やっぱりあんたにゃ敵わねえや……。頼む! これっきり心を入れ替えるから許してくれよな! な! な!」
カンダタは、最初からカッツェとは交渉しないつもりなのか、私を見てそんなことを言う。まあ、確かにカッツェに許してもらえる可能性はかなーり低いわけだけど。
「許す必要なんて無いよリッシュ、再起不能なまで叩きのめしてやる」
カッツェがギッとカンダタを睨む。もう「キッ」くらいの睨み方じゃない。
「うああああ、悪かった! 悪かったって! 反省してる! この通りだ! な! な! 許してやってくれよ!」
「あの時せっかくリッシュが許してあげたのに、こんなことしてたら姉さんが怒るのも無理ないよ」
チッタが口を尖らせる。
「本気だよぉう、今回こそ心を入れ替えるって!」
カンダタは少し情けない声を出した。
「まあ、再起のチャンスを無下に奪わなくても、とは思いますけどね」
「おお、兄さん話が分かるな!」
「けど、そのチャンスを既に一度踏みにじったわけですし、何を持って信じるかですよね」
リュッセが冷たい声で言いながら、遠いところを見るような目をした。
「俺にも色々あったんだよ……聞いてくれるか?」
「作った転落話なんて聞きたかないね!」
カッツェは鋭い声でいうと、机から降りてカンダタに歩み寄る。そしてがっとその頭をつかんだ。
「アンタいい加減にしな」
そのままカンダタがかぶっていた覆面を剥ぎ取る。中からは黒髪の、なかなかハンサムな男の顔が出てきた。ちょっと目つきは鋭いけど。
「うわ、姉さん面食い!」
「終わった男との事を言うな」
「ごめんなさい」
冷たい声に、チッタが縮こまる。カッツェは剥ぎ取った覆面を床にたたきつけると、ソレを踏みつけた。
「覚悟はいいかい?」
「手加減してくれ」
次の瞬間、カッツェの見事なまでの平手打ちが炸裂した。またもや、なんだかとっても鈍いいやーな音がした。音の正体は追求したくない。
「リッシュ!」
「な、なに?」
「後はアンタの好きにしな」
カッツェの言葉に私はカンダタを見る。左頬を押さえてかなり痛そうにしていて、うめき声まで上げている。
……グプタさんのときは、もっと手加減してくれるかな、カッツェ……。
「ええと」
私はカンダタの前にしゃがむ。
「もうしない?」
「しない! 誓う!」
「何に誓う?」
「カッツェに……」
「のろけ?」
私は思わずカッツェのほうを見る。カッツェは舌を出して気分悪そうな顔をした。
「仕方ないから、許してあげるよ。でも、今度また何か悪さしてるのを見つけたら、もう許さない」
「ありがてえ! じゃあんたも元気でな! あばよ!」
カンダタは物凄い速さで立ち上がると、まだ床で伸びている子分たちを掻っ攫って走っていく。
「甘い?」
「許せるのは強さですよ。優しさとともに」
リュッセが答える。
「そっか」
「そうですよ」


「あ……ありがとうございました」
部屋の隅でずっと成り行きを見守っていたグプタさんが、タニアさんと一緒にこちらに歩いてきた。ちょっとおびえてる感じなのは、気のせいだと思いたい。
「このご恩は一生忘れません! さあ帰ろうタニア!」
「先に帰るのは勝手だけど……」
チッタが歯切れの悪い返事をする。
「どうか後でバハラタの町へよってくださいね」
「寄るさ。アンタには言いたいことが山ほどある」
「手加減してあげてくださいね」
カッツェの言葉と、ソレに続くリュッセの言葉に、一瞬グプタさんは固まった。けどすぐに気を取り直したのか、「では」と頭を下げてタニアさんと歩いていく。
「カッツェ、やっぱり殴るの?」
「そっち方面はカンダタをぶん殴って多少すっきりしたから、説教だけだ、心配しなさんな」
「信じてるからね」
「おう、まかせとけ」


■おおっと、思い出した。
後枠で間に合いました。ミラクル!

人気投票。
DQ3に限定して見てみると、
リッシュ 59票
リュッセ 26票
チッタ   8票
カッツェ  4票

……なん、か。激しくないっすか、差。
やっぱあれですか。カッツェ姉さんはリッシュと喧嘩することが多いからですか?
チッタちゃんはふわふわしていて未だどういう人かわかりにくいからですか?
魅力的にかけてないのかなあ。

そして相変わらずリッシュの人気が何処から来ているのか判りません。

そんな人気投票は未だ継続実施中です。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html
■スイフリーの

素敵な二次創作が読みたいです。

策を張り巡らしているのでも、
はとこの子と漫才しているのでも、
クレア姉ちゃんと色々してるのでも、(←本命)
どんなのでもいいから素敵な二次創作を読みたいです。

もうヤフーさんとかグーグルさんで検索したところで自分の日記かブログが最初のほうに引っかかるというどうしょうもない状況に陥ってきてるんだよ!

そりゃ10年も前の作品だからさあ、そんなに多くは求めないよ……。
ただ素敵なお話だったら文章でも漫画でもいいから読みたい……。

もう自分で脳内創作してもつまらないんだ(苦笑)
だって自分の想像の枠を絶対に超えないんだもん!
自分と違う毛色のものが読みたいのだ。

■ダブルクロスの。

DQの前枠でも書きましたが、初期ダブルクロスのリプレイを読み終わりました。

おもしろおかしすぎだよ上月兄弟!!!

なんで4年も放っておいたんだろうもったいない!
これから2巻以降を探して旅に出たいと思います。
普通に見つからなかったら密林で探します。

このルールで遊んでみたいです。
10面ダイスを10個20個ころがしてみたいです。

近所のコンベンションで遊ばれてたりしないだろうか。
ルール知らない初心者でもオッケー!とか言うてくれるのなら、朝早くてもちょっと行って遊んでみたいぞー!
でもコンベンションって最近やってるのかどうかすら知らないぞー!(笑)
まずはルルブを買うところからですかねー。
(いやその前にリプレイリプレイ)

■コンベンション

と、言えば。
昔一回だけやった「ギアアンティーク」が忘れられません。
もう一回遊びたいなあ。
ギアアンティークなのに、思いっきり仕込みブーツでドアけり破るようなキャラをやったんですけどね。
もういっかい遊びたいTRPGの筆頭です。

次点は妖魔夜行。
アレはキャラを作るのが楽しいんだけどさ。

■まあ色々言うてみたが

なによりもTRPGを遊ぶ時間が欲しいです。
うっかりそういえばGMやるような話にもなってるらしいですけどねえ、私。
あのシナリオは何のルールで遊べば楽しいんだろう。
SWじゃないのは確かだし。

■今日は此処まで。
■あっちーなーもうー!

明日はまたこれ以上に暑いらしいですよ勘弁してください。

ここ2日くらい「ダブルクロス」の一番最初のリプレイを読んでました。
おもしろおかしすぎました。
なぜ私はアレを買ったっきり4年も放っておいたのでしょう。
ああ、詳しいことは感想文を書きます。
へっぽこの感想もまだなのに(苦笑)
もう感想かいてないけど読みきった本がすでに7冊くらいあって正直読み直さないとかけない感じでホントもうおばかさんね! って感じです。

■人攫いの洞窟 2
階下は、さっきまでと打って変わって単純な造りだった。階段を下りたところから通路が真っ直ぐに伸びている。途中で左手側、つまり南への通路がある。階段を下りたところからは、そういう丁字路が見えていた。床や壁、天井なんかの造りは上と同じ。作った人が同じなんだろう。もしかしたら、上の階をデザインしたところで、洞窟のデザインに飽きたのかもしれない。
「随分あっけないね、上と比べて、手抜き?」
「最初だけかもしれませんけどね」
リュッセの返答を聞きつつ、私たちは前へ進む。南側の通路は、暫く少し行ったところにドアがあってその向こうは見えなかった。とはいえ、階段からの直進通路は、向こうが行き止まりになっているのがココからでも見えていて、進む道は南にしか残っていなかった。
「向こうがどうなってるのか分からないのがネックだね」
カッツェが肩をすくめる。
「けど、とりあえず行ってみるしかないよね? 上ではグプタさん見つけられなかったし」
「そうだね」
話し合いは短く終わらせて、私たちはドアを開けて先へ進む。短い通路が終わると、少し大きな部屋に出た。
部屋の中にはテーブルが2つと、そのテーブルに椅子が4脚ずつ。テーブルの上には空のワインボトルやグラス、食べ残しがあるお皿なんかが散乱していて、お世辞にも綺麗とはいえなかった。床にも色んなものが放置されている。
何より、そこには目つきのわるい男が4人。
お世辞にも、いい人には見えない人。
「なんだおめえらは? ひょっとしてオレたちの仲間になりてえのか?」
一人が立ち上がりながら言う。他の三人もがたがたと椅子を鳴らして立ち上がった。
「そんなわけ、ないでしょう」
リュッセがため息混じりに言う。これはたぶん、諦めの境地の声だ。
「じゃ通すわけにはいかねえな……。やっちまえ!」
リーダー格の男の声とともに、四人がそれぞれ武器を片手に襲い掛かってきた。
「ひるむんじゃないよ! こんな奴ら雑魚だ!」
カッツェの声に、一瞬相手側がぎくりとしたようだった。けどすぐに体勢を立て直して襲い掛かってくる。身のこなしは、不慣れな感じが一切しない。戦いなれている。
とはいえ、こっちも随分強くなっていたし、最近チッタがまた強力な呪文を覚えてくれたおかげで、たいした被害を受けることなく、男たちを蹴散らすことができた。
「おぼえてろォ!」
なんて負けた悪役のお決まり台詞を口にしながら、男たちは通路から逃げていく。
誰も追わなかった。
追う必要も感じなかった。
「アレが人攫い、だったのかな?」
「可能性は高いでしょう」
そんな会話をしている間に、カッツェは部屋をあちこち見て回る。
「姉さん、どうしたの?」
チッタがカッツェに尋ねると、「や、なんでもない」とカッツェは短く答えた。とはいえ、かなり目つきが鋭い。不機嫌なんだろうか。
「とりあえず、まだ南に進めそうだ、行ってみよう」

カッツェの言うとおり、部屋には更に南に進む通路が一本だけあった。他に道もないし、この部屋でも何も見つけられなかったから進むしかない。
南への通路は少し進むと左右に分かれていた。
「どっち?」
「右から行こう」

右手側の通路は、すぐに突き当りが見えた。けど、今までとは全然違う。なぜなら、通路に沿って鉄格子が取り付けられていて、部屋、というよりは牢屋が作られていたからだ。中には男の人。グプタさんだ。
「突き当たりの壁に、このとびらをあけるレバーがあるはずだ! どうかそのレバーをっ!」
グプタさんは鉄格子にくっついて、腕だけ出して突き当たりの壁を指差した。
「……あんた、先になんか言うことないのかい?」
カッツェの低い声が飛んでも、グプタさんは気にしてないようだった。
ウン、確かに、いまならちょっとカッツェの主張が分かる気がする。
「まあ、お説教は後でいいでしょう。色々皆さん言いたいことはあるでしょうけど」
「リュッセもあるんだ」
「ええ、まあ」
言いながらも、リュッセは突き当たりにあったレバーをがしゃんと引きおろした。鈍い音とともに、鉄格子に取り付けられていた扉が開く。
「ああ! タニア!」
グプタさんは私たちに何も言わず、扉をするりと抜けてもう一方の通路に向かって叫ぶ。
「ああグプタ! あたしたち帰れるのね!」
どうやら向こうにも、牢屋があったらしい。女の人が走り寄ってくる。どうやら、彼女が言っていた胡椒屋の孫娘さんらしい。二人は通路の真ん中でしっかりと抱きしめあった。
「ああ行こう! ありがとう勇者さん」
グプタさんはタニアさんの手を引いてすぐに私たちの視界から消えた。
「ぶん殴り損ねた」
「あとで裏庭か何処かでがつんと」
意外にもリュッセが答えながら、右手をぶん、と下に振り下ろして返事をした。

気持ちは、分からないでもない。

「きゃーっ!」
悲鳴に私たちはハッとして顔を見合わせる。
「タニアさんの声だったよね?」
「さっきの男たちが帰ってきたのかな?」
私たちは走ってきた道を戻る。部屋にはさっきの四人を引き連れた大柄の男が立っていて、タニアさんとグプタさんを部屋の隅に追い詰めていた。
「ふっふっふっ。……オレさまが帰ってきたからには逃がしやしねえぜっ!」
「どっかで聞いた声だよね」
チッタが私を見る。その声で男がこちらに気付いた。
「うん? 何だ? こんなヤツをさらってきた覚えは……」
「久しぶりじゃないか、カンダタ。今度は何ボケたことしてんだい? 堕ちるトコまで堕ちたのか!」
カッツェが叫んで壁を拳で殴りつける。埋められていた石が少し欠けて床に落ちる。
「うぬぬ! 誰かと思えばまたお前たちかっ! しつこいヤツらめ」
「改心したんじゃなかったんだ……」
呆然と私はカンダタを見る。どこをどうみても、改心したとは思えない。実際ココでは人攫いなんてやっていた。
「だが! 今度は負けはせんぞっ!」
カンダタは前と同じ、大きな斧を担ぎ上げる。
戦闘は避けられそうに無かった。


■こんなところですが切番のお知らせ。ほぼ私信。

U様

切番承りましたー。
正直10年後の彼らを創造したことが無いので、リクエスト完遂はいつも以上に遅いと思います。
きながーにお待ちいただけると嬉しいです。


■ところで。
昨日へま太、落ちてましたね。本当は昨日あたりに出る予定だったんですけどね。切番。
いや、まあ、いつ出てもいいですけどね。

次、いつにしようかなあ。
■最近オリジナルの話に脳内の大半が持っていかれています。
ダメだしを喰らいまくりです(笑)
もう何をどうしたらいいのかさっぱりわからなくなってきました。

■人攫いの洞窟 1
色々思うところはあったけど、確かにリュッセやチッタが言うように、急がないと色々問題が起こることは間違いないから、カッツェととりあえず喧嘩をすることはやめる。
カッツェと、私と、最終目的は違っても、やることは一緒だ。
グプタさんと、タニアさんを助ける。
それだけ。

私たちは急いで町を後にする。
おじいさんに教えてもらった洞窟は、町の北東方面にある。
川を渡って草原を歩き、更に森に入っていく。森の中は薄暗くて、かなり足場も悪い。よくこんなところを、何の準備もなくグプタさんは行けたな、と思う。
誰かを好きになるっていうのは、そういうことなんだろうか?

私にはまだよく分からない。

足場の悪い森を暫く行くと、突然視界が開けた。
森の中には湖があって、その真ん中に大きめの島が一つある。その島も木々が鬱蒼と生い茂っている。こちらから見ると、少し中央が高くなっていて、島全体がなだらかな山のように見えた。湖には一箇所だけ橋がかけられていて、その島に渡れるようになっている。
「あれかな、言ってた場所」
「島に洞窟があるとおっしゃってましたね」
チッタとリュッセが頷きあう。地図を見せてもらうと、確かに島はバハラタから見て北東方面にあった。
「それじゃいくよ」
「うん」
カッツェの先導で私たちは橋を渡る。橋から下を覗くと、緑の湖面は波がなくて、鏡のように平らだった。周りの深い森と、静けさで別世界のように見える。
とても静かだった。
橋を渡ってすぐから、島は緩やかな傾斜の山になっていて、その斜面に洞窟が口をあけている。洞窟の口は石で四角く補強されていて、人目で人工物だというのが分かった。
「綺麗なトコだね。人攫いとか居るってウソみたい」
「人攫いは確定じゃないですよ。グプタさんがいる可能性があるだけで」
チッタの言葉をリュッセが訂正する。チッタは「分かってるよ」と頬をふくらませて、それからリュッセのむこうずねを軽く蹴った。
「まあ、ともかく、洞窟ですからね。なにがあるか分からないですから、用心はしましょう」
リュッセは顔を顰めて片足立ちで蹴られたすねをさすりながら言う。軽く蹴られたわりに痛かったらしい。
「人攫いがいても居なくても、用心に越したことは無いってのには賛成だ。魔物は居るかもしれないしね」
カッツェの言葉に私たちは深く頷くと、洞窟に足を踏みいれた。

洞窟の中はひんやりとした空気が充満していた。壁も床も天井も、長方形の石が埋め込まれている。入り口は四角い部屋になっていて、向かいの壁に次へと続く入り口が見える。その入り口も壁に綺麗に四角く作られていて、もともとあった洞窟に人の手を加えたという感じではなかった。
「これはちょっと……厄介だね」
あたりを見て、入り口から次の場所を覗いていたカッツェが深いため息とともに戻ってくる。
カッツェが厄介と表現するくらいだから、よほどのことだ。
「どうしたの?」
「周りを見た感じ、どうやら碁盤目状に同じ形の部屋が配置されてるみたいだ。用心しないと、自分がどこにいるかあっという間に見失う」
「うわあ、陰険」
チッタがげんなりした声をあげる。
「問題は、グプタさんがどこにいるか、ですね。行き違わなければいいんですが」
「下手に動き回られたらいつまでたっても探し出せないな」
リュッセの言葉にカッツェが頷く。そして二人は深々とため息をついた。
「発見したら一発ぶん殴りそうだ」
「見ない振りをしておきますね」

カッツェが厄介と言うだけあって、洞窟の中はいつまでたってもどれだけ歩いても同じような景色でしかなかった。
どうやら入り口は東の端だったらしく、東側の壁は全て行き止まりだったけど、一つ西隣の正方形の部屋に移動すると、東西南北全ての壁に隣の部屋への入り口があって、それと同じデザインの部屋がただひたすら続いている。
かといって、全部が同じなのではなく、北限と南限はただ行き止まりの狭い部屋があるだけだったし、時折入り口には鍵のかかったドアもあった。とはいえ、基本は全部同じデザインなのには変わりない。
「基本的に、同じデザインの部屋が延々繋がっているって考えればいいんだよね?」
「そう。それで配置は正方形に近いみたいだ。目印がほとんどないのが迷路としては厄介」
「部屋も正方形ですしね。ココを設計した人は、感覚を狂わせるということを考えたんでしょうね」
「感心してないで、ココが何処か考えて」
私たちは何度か入り口を通って、時々出てくる魔物と戦っているうちに、完全に現在地が分からなくなっていた。チッタのリレミトで外に出て、最初から仕切りなおしてもいいんだけど、それは最終手段にとっておくことにして、もうすこし粘ることにして、現在に至る。
「とりあえず、東隣の部屋が東限でしょう? 東に壁が見えます。ということで、現在、東から一つ西に寄った列ですね」
「南にドア、と」
リュッセとチッタの声に合わせて、カッツェが地図を書く。大体、正方形の洞窟の、南東側あたりにいるみたいだ、という結論に達した。
「とりあえず、このドアあけてみようか」
「そうだね」
私がドアを指差すと、カッツェが頷いた。
「とりあえず、状況を変えていかないとどうしようもないね」
ドアの先には、今までと同じような正方形の部屋があった。ただ、違ったのは、部屋の真ん中に下りの階段があるということ。今まで、一度も無かったその変化に私たちは思わず顔を見合わせた。
「てっきり、この階しかないんだと思ってた」
「こんな造りの洞窟がまだ続くんですか。製作者は絶対陰険ですよ」
「この怒りもグプタにぶつけていいよな?」
「それはとばっちりだよ」
全員がそれぞれ全然違うことを口にしたけど、基本的な感情は同じ。

まだつづくのか。

「まあ、先があるんだから仕方ない、進むか」
カッツェが深々とため息をつく。私たちは力なく頷いた。


■人気投票まだやってます。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html

此処まできたらやめよう、というラインはあるのですが、一体そのラインにいつ到達するのかまったく見当付きません。
■21日に約1時間半遅れての更新です。
20日に更新しなかったのは、私が「よしアップするぞ」と決めた時間に、だいありーのーとさんにつながんなかったから。

また落ちてんのか(冷笑)

って感じですね。もう慣れました。
でも引越しはしません。面倒だから。

まあ、なんていうの? コレもだいありーのーとさんのしょーもないかわいいところだよ、とか思えばいいのだよ。

■バハラタ 3
「で、だ」
カッツェは眉間の辺りを押さえながらおじいさんを見た。
「一体そもそもどういう話なんだい?」

おじいさんの話はそれはそれはあっちこっちに飛びながら随分長い間かかったので、簡潔に話をまとめると、つまりはこういう話になる。
おじいさんはあの問屋さんのご主人で、孫娘さんがさらわれて、犯人からの要求があるため店を開けない。さっき走っていったのは孫娘さんの恋人でグプタという。ちなみに彼には戦いの技能は全く無い。犯人からの要求は店の明け渡しと権利の譲渡であるため、ソレを手放したくはないのだが、孫娘の命には代えられないと思っている。本当は孫娘の結婚を機に、彼らに店を譲って隠居をするつもりだった。

「犯人に心当たりは?」
「全く無い。何せ初めて見るような男たちだった。もしかしたら他所から流れてきたのかもしれない」
「相手からの連絡はどうやって取ってる? 潜伏場所とか分かるか?」
「最初は向こうから連絡があったんだが、最近は無い。どうやら街の中に潜んでるわけではなさそうだと思う。街では最初の連絡の時以来全く見ていない」
「じゃあ、グプタさんはどこへ走っていったんでしょうか」
「街の東に、大昔からある洞窟がある。かなり複雑なつくりになっていて、街の者は誰も近づかん。そこが怪しいとグプタは言っておった」
「人攫いが真にいるかどうかは別として、グプタさんの保護はそこに行けば完了ですね」
「助けに行ってくれるのかね?」
「ココまで聞いておいていかなかったらちょっと酷いでしょう。そこにグプタさんの言うとおり人攫いが居たら交渉もしましょう」
カッツェとリュッセがおじいさんとどんどん話を進めていく。私とチッタはソレを見守っているだけだった。ちょっとなさけない。
「で、洞窟っていうのはどの辺りなの?」
チッタが持っていた地図を広げておじいさんに見せる。おじいさんは街の東を流れる川を通り越して、少し北に入った森の中を指差した。
「このあたりに湖があってな、その真ん中に島がある。島までは橋がわたしてあるんだが、そこに洞窟がある」
「じゃあ、がんばってきます」

「それにしてもー」
おじいさんと別れて、宿に戻りながらチッタが言う。
「姉さんが積極的に人助けって珍しいよね? ノアニールのときはややこしいことに首を突っ込むな、ってスタンスだったのに」
「あの時と今では色々違うだろ」
カッツェはクールな声でチッタに返事をした。
「違うって?」
「前回は無報酬」
「今回だって何にもそんな約束してないよ?」
私とチッタは首をかたん、と傾ける。カッツェは私たちの顔を見てにやりと口の端を吊り上げて見せた。
「いいか? あの爺さんは胡椒の元締めだ。で、アタシたちは胡椒が欲しい。そんな爺さんの今一番の願いは孫娘とその婿の無事だ。ソレをアタシたちが叶えるとする。そうすると爺さんはアタシたちに恩を感じる。そうするとどうなる?」
「胡椒が、お安く手に入る?」
「そういうことだ」
「打算なしに助けてあげなきゃ! って気分にはならないの?」
思わず私は言う。だって、なんか、そういうのは嫌な感じだ。
「恋人のピンチに、力不足が分かっていても立ち上がる美しい愛に感動して力を貸せって?」
カッツェは私を見て鼻で笑ってから「甘いね」と詰めたい声で言う。
「己の力量も考えないでただ感情に走って突っ込んでくのはただの馬鹿だ。自己犠牲が美しい? ……冗談じゃない」
「……」
私は無言でカッツェを見返す。馬鹿にされたのも悔しいし、言い返せないのも悔しい。
「いいかい? もしグプタが突っ込んでった洞窟に、ホントに人攫いがいたらどうだ? 孫娘は交渉材料だから無事かも知れんが、グプタは利用価値がないんだよ? 殺される」
「殺されてもいいっていう……
「恋人である孫娘の目の前で殺されたら? 助けが来たっていう希望が打ち砕かれ、自分の恋人が目の前で殺される。ソレは優しさか?」
「……」
「アタシはああいう、自己陶酔だけの男が大っ嫌いだ。それでも行くのは実入りがあるからだ。何がおかしい?」
「でも」
「急ぎましょう。議論は後で。最悪パターン、交渉決裂のためグプタさんも孫娘さんも殺される可能性だって有ります。グプタさんが考えなしなのは同調しますが、割り切れない感情にも投票しましょう。日和見とでもなんとでもどうぞ」
リュッセが私とカッツェの間に手を入れて言う。私とカッツェはほとんど同時にリュッセを睨んだけど、彼は全く動じない。
「け、決裂なんてしてないよ! だっておじいさんはグプタさんを止めてた!」
「どう解釈するかは相手側です」
「行こうリッシュ、リュッセ君の言うとおり、話は後だよ。姉さんが胡椒のために、リッシュはおじいさんやグプタさんのためにがんばればいいよ。今は。納得できないのは分かるもん、あとできっちり話し合おう」
チッタが私の手を引く。
「チッタは? どういう考え?」
「わたしはね、皆が正しいと思う。何が大切なのかとか、何を重要視するかっていうのは、違って当たり前だもん。ちなみに私は孫娘のタニアさんが一番重要。助けなきゃ」
「実のところ、全員の優先順位はほぼ一緒でしょう。タニアさんの無事、グプタさんの無事、人攫いの確保」
リュッセは指を立てていきながら説明する。確かにそうだ。
「リッシュ、あなたのその、優しさであるとか素直さは美徳です。時には今のようにそれが人との衝突を生むこともあるかもしれませんけど、これからもその感情は忘れないで、自分の気持ちに正直に生きてくださいね」
リュッセは私の頭を撫でて言う。
「駄目だよリュッセ君」
聞いていたチッタが口を尖らせる。
「そういうの、死ぬ前の台詞」
「ははは、殺さないでくださいね」


■ゲーム中はそんなに気にしてなかったんですけどね、書いてて気づいた。
なんとグプタは面倒かつややこしいムカつく野郎なのかー!
ちうかゲーム中に気づけ私。

■人気投票まだやってます。
日時で切る、というよりかは、得票数が規定(機械的問題ではなく、私が決めた数)に達したら終わるつもりです。
まだまだしばらく安泰ですが、「こいつの順位を一つでも上にあげるのだ!」という使命感をお持ちの方は頑張って投票したってください。
1位とっても何も無いですけど。
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■バブリーズさんに再ハマリして、そろそろ4ヶ月ですか。
よく熱が冷めずに居ますな。ちょっと自分で振り返ってびっくりしちゃったですよ。

それどころか、加熱してないか。
妄想とまんないもんな。恐ろしい。

先日からパラサ視点のクレア姉ちゃんの話やらを考えていて、なんだか随分切ないお話になってしまって、
「いやいやいや、グラランだから!」
とセルフ突っ込みな日々です。
上手くまとまったらいいなあと思いつつ、どうかなあ。

ネットの海を徘徊していて、もうどこで見つけたか忘れたけど、清松さんが、読者さんからかの質問に答えてて。
Q:小説版のアーチーは、フィリスに対してまんざらでもなさそうですが、これはPLさんと相談して決めたのですか?
A:プレイを見ていればわかります。
……確かこんな内容だった。
と、いふことは。

小説版ではスイフリーとパラサがそれはもう激しくクレアさんを取り合いして(半ば嘘)「恋の鞘当」とまで表現されていたことを考えれば。
リプレイではその辺省略されてるだけで実のところスイはクレアさんにめろめろ!?(笑)

いやあ、妄想って、何でも出来て便利だなあ。

まあ、実際リプレイでも言葉の端々に「あの女はわたしのだ」的な匂いはあるんですけどね。妄想力で読んでるだけかもしれませんけどね。

こんなに同人思考をフル回転するのは久しぶりなので(DQはまたちょっと違うのだ。個人的感覚として)なんだか楽しいです。
泡さんたちの漫画とか描きたいもの。かかないけど(そんな暇があったらサイトの更新します・笑)

■この辺でおわっときます。
■暑いですねー。
なんかもう、夏という季節は本当にだめです。
体力なしなので、ろくな目にあいません。
コレまでの人生、でかい病はすべて夏です。
日光にも弱いです。

冒険者たちは大変だなあ、と思います。(唐突な〆)

■バハラタ 2
教えてもらった問屋さんは、宿屋からそんなに遠くないところにあった。けど、結構入り組んだ道の奥にあったから、知らなかったらたどり着けなかったかもしれない。
入り口には大きな看板がつけられていて、知らないスパイスの絵が描かれている。両開きの扉は大きく開け放たれていたけど、そのわりに中は暗い。近づいていっても全然活気が感じられないお店だった。
「ごめんくださーい」
そっと中を覗いてみると、お客らしい冒険者のお兄さんが一人居るだけで、その人も首を振り振りお店から出てこようとしているところだった。
「君もこの店に用事か?」
冒険者のお兄さんは私を見ると気の毒そうな顔をした。
「わたしもはるばるここまでやってきたのだが、店は休みだそうだ」
「いつ再開されるんですか?」
「ソレが未定らしい。全く、参ったよ。毎日通っているのだが」
お兄さんは大きなため息をつくと肩をすくめて見せた。ちょっとオーバーアクションな人だ。
「理由は? ご存知有りませんか?」
リュッセが尋ねると、お兄さんが首をかしげた。
「詳しくは知らない」
「詳しくなくてもいいです、と言えば? 何かご存知ですか?」
「噂ではこの店の誰かが誘拐されたとか。本当かどうか分からないが」
私たちは思わず顔を見合わせた。本当だったらかなり大変な状況だ。
「とはいえ眉唾物だ。大旦那は居るみたいだし」
お兄さんは困った顔で大きくため息をつくと、店から出て行った。

暫くお店で待ってみたけど、やっぱり誰も出てこない。
「コレは本当かどうか確かめてみたほうがいいんじゃないかな」
私が言うと、チッタが頷く。
「胡椒自体はどこでも買えるかもしれないけど、人の代わりはいないもんね。どっかにお店の人いないかな?」
「話を信じてもいいんだろうかね? 本当に誘拐があったんなら、近所の宿屋の親父なら話を知ってそうなもんじゃないか」
「わたしたちが強そうだったから、助っ人にならないかなって思って送り込んだとか!」
「それ、綱渡りですよ。見掛け倒しって言葉も世の中にはあることですし」
リュッセが苦笑する。
「でも、知っちゃった以上、放っておけないよ。ガセだったらソレに越したことないし、お店の人探してみよう」
私の言葉に大きくチッタが頷く。コレで私たちの方針は決まった。
「じゃあ探すか、店のヤツ。こういう店舗は裏手が住居ってのが標準設計だ」
カッツェはそういうと、暗い店内からさっさと出て行く。私たちは慌ててその後を追った。

店の裏手には、すぐのところに「聖なる川」が流れていて、庭なのか公共スペースなのか判然としない広場があった。ずっと東側にもそのスペースが伸びていて、色んなお店や建物の裏手が見える。多分、本来は共有スペースだろう。向こうのほうに石造りの階段と柱のある、石とタイルで装飾された床のような場所が見える。そこで数人の女の人たちが水を汲んでいた。
あたりをぐるりと見渡すと、店に近いところでおじいさんと若い男が言い争っているのに気付いた。おじいさんは若い男を説得しているのか、時折若い男の両肩を押さえて「落ち着け」と言っているように見える。男のほうは興奮しているのか、随分身振り手振りが激しい。
「喧嘩ですかね」
リュッセが眉を寄せる。あまりいい気分じゃないのは間違いない。そういえば、リュッセが怒ったところを見たことが無いな、と気付く。エルフの村でも、オアシスで過去を語った時も、淡々としていてあまり感情に起伏が無い感じ。
「リュッセって怒ることあるの?」
「……そりゃ、ありますけど……何でこのタイミングで?」
不思議そうな顔でリュッセは私を見た。青みがかった黒い髪が風で揺れている。ずっと黒い髪だと思ってたけど、本当は青が物凄く濃くて黒っぽく見えてるのかもしれない。同じ色の瞳が、ちょっと呆れたような色合いを帯びていた。
「なんとなく。怒ってる人みて、そういえば怒ったところ見たことないなあって。……連想?」
リュッセは呆れを通り越して理解不能、というような顔をした。ので、思いっきり足を踏みつけてやった。
「とりあえず、止めようよ。話し合いっていうのは、冷静じゃないととんでもない結末になったりするよ」
チッタが私の腕を引っ張った。
「うん、そうだね」
はっとして、私はチッタと一緒に二人の間に割ってはいる。
「あの、喧嘩は良くないです!」
声をかけると、おじいさんと若い男は私たちを見た。おじいさんはほっとしたような顔で。若い男は胡散臭そうな顔で。

「旅の人、聞いてくだされ!」
おじいさんが一瞬早かった。そしてそのまま、一気にまくし立てる。
「ウチの孫娘のタニアがさらわれたんじゃ! あんたらとても強そうじゃし、何とか助けて貰えんかの!? ここに居るグプタが助けに行くと言うてきかんのじゃが、この上グプタまで居なくなるとなると」
「何を言うんですか! こんな旅人なんて信じられませんよ! ボクが助けに行きます!」
そういうと若い男、たぶんグプタさんはおじいさんを振り払って走っていってしまった。誰も止めることができなかった。
私は呆然とおじいさんをみる。おじいさんはもっと呆然としていた。


■暑くて溶けそうです。

人気投票実施中。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html

いつやめるか明確に決めてあるのですが、その期日は言わないことにします。
ふふふ。
■50回を過ぎてバハラタっていうのは遅いのか早いのか。
それでも予定表を見ると、結構早いスピードで進んでいる気もする。

さて、気のせいじゃないと良いんだが。

■バハラタ 1
鬱蒼とした森は随分長く続きそうだった。空からの光は弱々しく、密集した葉の間を何とか通り抜けてきている、という感じ。今は背中側に洞窟があるけど、数分歩けば多分自分が居る位置は正確に把握できなくなるだろう。足元は落ち葉が何層にも重なって、柔らかい。一番上に落ちた葉だけが、踏むと乾いた音を立てる。緑は深く、木には蔓が絡みついていたりする。カザーブまでの道にあった森や、エルフの隠れ里のあった森とは、また雰囲気が違っている。あちらは葉の細い尖った樹が多かったけど、こちらはなんか、全体的に大きい。葉も幹も、随分雰囲気が違う。
「さて、と」
カッツェが地図とコンパスを見比べて、暫くあたりを見渡した。とはいえ、どっちを見ても緑緑緑で、私には違いが分からない。
「とりあえず、まあ、南はあっちだ」
そういってカッツェは右手側を指差した。見えるのは緑の木々で、目印は何も無い。
「地図で言えば、南東方向に歩いていけば、いつか森を抜けて三角の平野の端っこに出る。正確にどの辺りなのかちょっとわからないが、ともかく平野に出てからも南東を目指しつつ行けば、いつか海岸線にたどり着くだろ」
「ちょっと投げやり」
チッタが肩をすくめる。
とはいえ、誰にも反対意見も、それ以上にいい提案もなく、私たちは森を抜けるべく南東方向に歩き始めた。

森は暫くの間続いた。森の中を歩く人はほとんど居ないのか、細い道すらない。時々獣道を見る程度で、相変わらず目印になりそうなものや、景色の変化は無かった。それでも森の終わりが見えてくると、空を覆っていた葉の重なりも薄くなって、太陽の光がしっかり差し込む明るい森にかわっていく。
「もうそろそろ森を抜けるよ」
あたりを警戒していたカッツェが地図を見る。もう木々の間からは、向こうに広がる草原が見え始めてきていた。
「出たら一回休憩しながら、場所を把握できないかしっかり地図と照らし合わせてみよう」
「遠くにでもいいから、街が見えたらいいねえ」
「街の名前なんでしたっけ? バハラタ?」
「あー、そんな名前だった気がする」
私たちは口々にそんな話をしながら歩く。
程なく森を抜ける。木々に阻まれて狭かった視界が一気に広がる。広がる草原と、照りつける太陽。森から出たばかりの私には、まぶしすぎる景色だった。それに何だか蒸し暑い。
「う、目が痛い」
私は手を目の上で庇のようにして、辺りを見る。草原の草は少し長く伸びていて、あちこちで黄色い小さな花が咲き乱れていた。空の色は淡い青。白い雲が草原に影を落としていた。
「いやあ、絶景ですね」
リュッセは笑うような声で言う。確かにコレまでとはまた違った景色が広がっている。
「さてと」
草原に円に座って、お互い顔を合わせる。
「これからも南東でいいのかな?」
地図を見てみたけど、目印になりそうなものが無いから、いまいち今どの辺りなのかが分からない。
「とりあえずは南東でいいだろう。街が見えてきたら東になるか南になるか、南南東になるか、とかあるかも知れないが、そのときはそのときだ」
「どんなところかな?」
カッツェとチッタが南東のほうを見る。今のところ、まだ街は見えない。
「少なくとも、黒胡椒が安い街ですよ。安くないと困ります」
「リュッセ君、今のは面白くない」
「ソレは失礼しました」

草原を再び南東へ進んでいく。抜け道をとおってからこっち、かなり魔物が強くなったから、結構歩くだけでも大変。それでも、死にそうな目にあわなくなっただけ、強くなったのかもしれない。そんなことを考えながら歩いているうちに、街が東側に見えてきた。思ってたよりは西寄りに歩いていたのかもしれない。私たちは西側から町の中に入った。
街は、草原を流れる川のほとりに細長く広がっていた。街の東西を石造りの大通りが走っている。街の南側に大きな川が東西に流れていて、「聖なる川」として街の人の憩いの場になっているそうだ。町の北側には教会やお店が並んでいて、南側には宿屋や集会所があるみたいだった。緑もあちこちにあって、花壇が作られている。とても綺麗な街だった。
街の人たちは少し変わった服を着ていて、男の人は白い上下にターバンの人が多い。女の人は鮮やかな色に染められたワンピースを着ている人が多かった。やっぱり蒸し暑いから涼しい服を着ているんだろう。
街の入り口にある宿に部屋を取ってからご主人に話を聞いてみると、やっぱりこの街は黒胡椒が沢山とれるので有名らしい。ただ、外国に沢山持っていくなら、街の人に対して胡椒をはじめとしたスパイスを取り扱っている小売店で買うより、問屋で買ったほうが多くを安く手に入れることができるだろう、ということだった。
「そういえば、どのくらいもってこいって聞かされてないよね」
「1粒だけ持って帰っても門前払いだろうけどね」
「まあ、ある程度の量は必要でしょう」
「どのくらいかな?」
「分けてもらえるだけ分けてもらう?」
「買占め?」
そんな話をしていたら、宿のご主人は見かねたのか、一回の料理に使う黒胡椒の量だとか、大体の値段を教えてくれた上、問屋の場所まで教えてくれた。
「家での保存法は分かるけど、輸送のときの注意点とかはわたしじゃ分からないから、問屋できくといいよ」
とまで教えてくれた。何だか申し訳なかった。


■人気投票実施中
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テスが100票超えました。
いつの間に。
奴の何にみんなが惚れているのか正直判らない作者でございます。
■シャドウラン 4th Edition
ISBN:4775305425 単行本 シャドウランナーズ 新紀元社 2007/06 ¥5,000
本書は『シャドウラン』シリーズ最新のルールシステムです。ここにはプレイヤーとゲームマスターが新たな『シャドウラン』の舞台、2070年の第六世界に踏み込むために必要なルールがすべて入っています。最先端はさらに前進し、強化現実、最新装備、そして、新たな魔法の発見が世界に加わりました。

目次

バズキル / ようこそ、影の世界へ / 現実不適応者に送る歴史の授業 / エッジな生活 / ゲーム・コンセプト / シャドウランナーの作成 / サンプル・キャラクター / 技能 / 覚醒した世界 / ワイアレス・ワールド / シャドウランニング / 敵と味方と… / ストリート・ギア


ああ、知らない間に出てたのね、シャドウラン。
どうせ買っても遊べないから買わないだろうけどね。
……世界観とか好きなんだけどね。

昨日は友人たちは集まってアリアンロッドをしていたそうだよ。
オイラ、アリアンロッド知らないんだけど……。
知らない間にどんどん引き離されていく……。
思えばへっぽこも今年読んだんだし……。

で、誰か買わないかなあ。
買っても遊ばないから駄目かなあ。

明日は

2007年6月14日 適当な日々
■15日は「日常日記」も「今日のDQ3」もとりあえずお休みです。

ちょっとばかり日帰りでチェリーハンティングしてきます。
食べるぞさくらんぼー!

あまり更新しないので有名な写真日記で随時更新します。
速報っていうとおこがましいです。

ただ、バスは寝てる可能性大です。

→写真日記
http://www.alfoo.org/diary/syuuann/

かさ

2007年6月14日 適当な日々
■今日は一日雨でした。
まあ、よくこんなに降るなあと思うほどの連続っぷりで、やむことなくずーっと降ってました。

で、そんな日に衝動買いしたものは



日傘。



この文章でなんかおかしいなあというところを指摘しなさい。10点。……みたいな。



■今日はここまで。
筋肉痛です。
■はー、珍しく当日更新です。なんかこの文章微妙に変な感じ(笑)

50回を過ぎようが過ぎまいが、コレまでどおりの更新頻度でうだうだやっていこうと思います。

■バハラタへ
ポルトガから東に向けての旅立ちの朝は、風が強い日になった。宿のご主人の言うことには、バハラタでは「旅立ちに風が強いのは幸運の証」だということで、何故だか随分「良かったねえ」なんてニコニコされてしまった。多分、私たちが頼りなく見えて、そんな私たちの門出が良いものになって、見送るほうとしてもほっとしたのだろう、というのがリュッセの分析だった。何だか複雑な気分だ。
そんな風の強いポルトガを後にして、ルーラでまずはアッサラームにとんだ。海の匂いが急になくなって、代わりに乾いた空気が私たちを出迎える。急激な変化に、思わず何度か咳き込む。ノドが何だか痛い。皆も顔を顰めてノドのあたりをさすったり、咳き込んだりしていた。水を飲んで何とか落ち着いてから、私たちは再びアッサラームの北東にある洞窟を目指す。前来たときは随分対応が悪かったホビットは、今度はどういう対応をしてくれるだろうか。ポルトガの王様の手紙は効き目があるんだろうか。全然交流なさそうに見えるんだけど、絶交中とかじゃないんだろうか。
そんな不安を胸に、再び洞窟に入る。打って変わって湿った空気が満ちたその空間に、皆もげんなりとした様子だった。
「なんか、一気に空気が変わりすぎだよな」
カッツェがため息混じりに呟く。流石に旅慣れたカッツェも、閉口しているようだった。

一本道の洞窟を進んで、一見行き止まりまでやってくる。そこから左手に伸びている細い通路を通っていくと、前と同じようにホビットが椅子に座って不機嫌そうにこちらを見た。
「またお前たちか!」
ポルトガへの旅は結構時間がかかっているし、よく覚えてたなあ、なんて思うけど、考えてみたらこんな洞窟にそうそう人がやってくるわけもないだろうから、つまりはホビットに言わせれば「同じヤツがまた来た」という感覚になるのかもしれない。
「ええと、話を聞いてください」
「うるさい、帰れ!」
「ポルトガの王様から、お手紙を預かってきました」
「何?」
そこで初めてホビットは怒るのをやめて私の顔をまじまじと見た。それから不機嫌そうに私を手招きする。手紙を持って近づくと、彼はその手紙を受け取って内容を読んだ。
「そうか、分かった。他ならぬポルトガの王の頼みじゃ仕方ない。お前さんたちを東への抜け道に案内してやるよ。……他のヤツに言うんじゃないぞ!」
「言いません」
大体、言う相手なんて居ない。
「じゃあ、こっちだ、着いてきな」
ホビットが細い通路を戻っていって、私たちを案内したのは、あの太い一本道の突き当たりだった。今は右手側に、アッサラーム近くからの入り口がある。
「ちょっとここらで待ってろ」
ホビットはそういうと、そのまま向かい側の壁のほうへ歩いていく。足取りは軽いけど、何も無いところだ。それどころか、壁の前には大きな岩まである。
ホビットは軽く息を吐くと、まずは壁の前にあった大きな岩をひょい、とどけた。小柄なその体は、私の背の半分くらいしかないのになんて力だろう。ビックリしている間にも、ホビットの作業は続いていく。気合をこめるような大声を短くあげたあと、ホビットは壁に向かって走り出し、そして体当たりをした。
「!?」
重く響く音に、私は思わず身を硬くして息を短く吸う。なんか、すっごく痛そうな音がするにも拘わらず、ホビットはその作業を何回も繰り返す。そのたびに、私は体をびくりと震わせる。本当に痛そうだし、見てて痛い。リュッセが私の両肩をつかんで、「大丈夫ですか?」と耳のそばで小声で尋ねる。痛そうなのとビックリしたのとで、私はコクコクと頷くしかない。
そうしている間に、ホビットの作業はどんどん進んで、やがて「ドーン!」というコレまでで一番大きな音とともに向かい側の壁は崩れてなくなった。壁があったところの向こうに、通路があるのが見える。
「ほれ、待たせたな。コレが東への抜け道だ」
「あの、体、大丈夫ですか?」
私は東に行く道ができたことより、そっちのほうが気になって、思わずしゃがんでホビットの顔を覗き込む。彼は全く気にした様子の無い表情で暫く私をきょとんと見た後、豪快に笑い声を上げた。
「あんなもん、たいしたことじゃない。心配してくれたのかい? ありがとよ。そんなことより、アレが抜け道だ。さっさと通ってくれ」
ホビットはそういうと、不機嫌そうに元の部屋に消えていった。
「もしかして、いい人? 超絶テレ屋さん?」
チッタが部屋に消えていったホビットを見送りつつ首をかしげた。

教えてもらった、というよりは力技で通れるようにしてもらった抜け道を通る。道は一本道で、かなりの太さがある。多分、そもそもはアッサラームから東に抜けるためのトンネルがあって、ソレを何かの理由でふさいでいたんだろう、というのが正直な感想だった。あのホビットさんは見張りなのかもしれない。
道は随分長い。くねってはいるけど、一本道でよかったとも思う。随分歩いたな、と思った頃に漸く外の光が見えてきた。ソレとともに、光のほうから空気が流れてきているのも感じる。
「もうすぐ外だね」
思わず早くなる足。最後のほうは半ば走るような速さで私たちは洞窟を抜けた。

そこは鬱蒼とした森だった。


■はいはい、まだ人気投票はやってますよ。
http://vote2.ziyu.net/html/zum_sieg.html

なんか、もう、ちょっとこの人気投票に必要性や意味を見出せないで居るのですが(笑)まあ、いいや……。
いつやめようかな。

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